自衛力


1.自衛力のメリット

1−1.通常時
 自国に対する領土的野心を持っている国(以下、仮想侵略国)に対して「十分な防衛力」がある場合、仮想侵略国による侵略を防ぐ。これを持たないと、中立を訴えたとしても、第一次世界大戦のベルギーのように、一方的に侵略されて国民が辛酸を嘗めることがある。
 「十分な防衛力」とは、仮想侵略国が自国を攻撃しても勝てないと思わせる程度の軍備が想定される。
 ただし、諸外国に自国軍備が他国への侵略を疑われるほど過大な軍備は持つべきではない(自衛力のデメリットにて後述)

1−2.戦時
 自国が戦争に巻き込まれた時に、外敵からの侵略を防ぐ。これらは、自国軍隊およびその最高命令者(日本では首相)が、第一に守る対象を国民であることを忘れない前提である(自衛力のデメリットにて後述)

2.自衛力のデメリット

2−1.通常時

2−1−1.外交上問題
 自衛力を超え、諸外国に自国軍備が他国への侵略を疑われるほど過大な軍備を持つと、他国との軍備拡張競争を引き起こすことがある(例:第一次大戦前のイギリスとドイツ)。その結果、国家予算に占める軍事費の割合が増大し、経済(インフラ整備等も含む)・教育・外交・福祉・司法等各分野への予算が減る。
 また、自国に対する疑念から複数の国が協力して圧力をかけてくることがある(例:ABCD包囲網や北朝鮮への経済封鎖)

2−1−2.軍隊の暴走
 組織を動かしているのは人間であることは、軍隊でも変わりがないため、文民統制がしっかりしていないと、軍隊上層部の意向で他国との紛争を巻き起こすことがある。また、軍隊内での信賞必罰が正しく機能しないと、軍隊中堅幹部や兵士によって同種の問題が引き起こされることがある。
 例えば、戦前昭和の日本の軍事経済事件は大雑把にいえば、満州事変→盧溝橋事件(日中戦争開始)→アメリカによる経済制裁→北部仏印進駐→ABCD包囲網→太平洋戦争という流れになっているが、満州事変(石原完爾中佐、板垣征四郎大佐)、盧溝橋事件(武藤章大佐、田中新一大佐他)の暴走に対して、陸軍上層部及び政府が断固とした処置をしなかったため、(大局的な影響を考えず)当面の結果が良ければ何をやっても良いと軍隊中堅幹部に思わせた※のも太平洋戦争の大きな原因になっている。

2−1−3.軍隊の恣意的な使用
 これは軍隊に限った話ではなく、治安維持組織(警察等)にもいえることであるが、権力者が軍隊を恣意的に使用する場合がある。戦後日本では、1960年の日米安保条約改定の際に、反対するデモに対して岸信介首相(安部晋三現首相の祖父)が赤城宗徳防衛庁長官に対して自衛隊の治安出動を命令したことがある(ただし赤城に拒否され、実現せず)。つまり首相の命令により、自衛隊員が国民に対して発砲する可能性があった。(小説吉田学校他)

2−2.戦時
 戦況が不利になる、指揮官の統率力に問題があるなどの理由で軍規が乱れた部隊が問題を起こすことがある。自国民に対する例では、1945年の久米島のケースがある。久米島では1945年に守備隊がアメリカ軍に拉致され渡された投降勧告状を持って部隊を訪れた住民を、軍法会議すら開かず、スパイの疑いで処刑したケースがある。(久米島の戦争記)

※満州事変を起こした石原完爾は盧溝橋事件時に北支での戦闘拡大に反対であったが、武藤章に「石原閣下が満州事変当時にされた行動を見習っている」と言われ、暴走(事件収束工作の妨害)を止めることができなかった。また、その武藤も太平洋戦争時には開戦に慎重で、田中新一〜服部卓四郎〜辻政信のラインが進める開戦派の暴走を止めることができなかった。



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