オウム死刑囚の移送について


 2018年3月14日から15日にかけて、オウム事件に関連した死刑囚のうち、7名が東京拘置所から他の施設に移送された。
 移送されたのは、仙台拘置支所に1名(小池泰男)、名古屋拘置所に2名(宮前一明、横山真人)、大阪拘置所に2名(井上嘉浩、新實智光)、広島拘置所に1名(中川智正)、福岡拘置所に1名(早川紀代秀)である。
 東京拘置所に残ったのは6名(松本智津夫、端本悟、豊田亨、廣瀬健一、遠藤誠一、土谷正実)である。
 過去に、共犯死刑囚を同日執行する慣例があるため、移送を計画しているという報道(※1)はあったが、東京拘置所にまだ6名残っているのを見ると、今回どういう基準で移送したか判断が難しい。93年の執行再開以来、1日に一カ所の施設で同日執行したのは最大3名で、それも1例しかない。さらに、共犯死刑囚が3名以上いるケースでは、一部の死刑囚を別施設に移送するケースが複数確認(※2)されているため、近年では1施設での同日執行は最大2名までと、法務当局が決めているようにも見える。その仮定にたてば、東京拘置所に6名残っているのは、全共犯死刑囚を同日執行するという慣例(※3)からすると、説明がつかない。
 以上のことから、オウム事件に関連した死刑囚の執行について、以下のケースが考えられる。

 1.全部で13名もいるので、全員を同日執行せず、段階的に執行する。
 2.今後、同日執行までにもう1回移送する。

 2のケースであれば、全国に死刑執行施設がある拘置施設は7カ所あるため、一度の移送で2名ずつに分散させればよく、移送を分けても警備や経費の観点からデメリットしかないように思える。
 すると、1の段階的執行が考えられるが、残された死刑囚に与える動揺を考えると、執行タイミングの分散回数を増やすのは事故(自殺)の危険が高まるだけのように思えるため、集中して行われる可能性が高いと考える。それは恐らく2回、多くて3回程度ではないか。

 さて、今回の移送を受けて、最初に執行するにあたり、法務当局がなにがしかの基準を設けるのではないかと考える。オウム事件に関連した死刑囚の分散状況を見ると、「坂本弁護士事件に関係した死刑囚」という基準を当てはめると、各施設で1〜2名ずつ該当するため、比較的無理なく執行されることになる。
 すなわち、東京拘置所2名(松本智津夫、端本悟)、名古屋拘置所(宮前一明)、大阪拘置所(新實智光)、広島拘置所(中川智正)、福岡拘置所(早川紀代秀)の各1名、合計6名である。
 この仮定の場合、初回の執行に松本智津夫が含まれている上、最近は、再審請求中の死刑囚も執行されているため、再審請求中の死刑囚が含まれていても、法務当局は問題としないだろう。

 その後には、東京拘置所に4名(豊田亨、廣瀬健一、遠藤誠一、土谷正実)、仙台拘置支所(小池泰男)、名古屋拘置所(横山真人)、大阪拘置所(井上嘉浩)に各1名が残される。いずれも地下鉄サリン事件に関わった死刑囚だが、東京で4名を同日に執行するのは難しい。執行機会を3回に分けるか、もう1度移送を行うか分からないが、これは坂本弁護士事件に関係した死刑囚「だけ」を最初に執行する前提の話なので、その仮定が実現されていない現在、その先の話を仮定しても仕方がないのかもしれない。


※1:JNN 2012年10月6日。
※2:警察庁指定118号事件、連続マニラ保険金殺人等事件、少年集団の連続リンチ殺人事件、大牟田4人連続殺害事件。
※3:慣例であって、絶対ではない。93年以降でも半田保険金殺人等事件でも共犯が別の機会に執行されている。





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