1945.8.15時点の死刑確定者


 日本国民の大部分が、戦争による死の恐怖を免れた日、日本の法律によって死すべき運命を背負った人はどれだけいたか・・・恐らく5名程度と考える。
 この人数には、恩赦か獄死によって執行されなかった死刑確定者は、1名を除いて含まれない。しかし、当時は確定から執行までの期間が半年以内であることが多かったため、それほど人数が増えるとも思えない。
 なぜこの文を書く気になったかというと、村野薫氏の「戦後死刑囚列伝」の中に、「この人生の再出発となる八月十五日を、すでに死刑囚として運命づけられていた男がいた」という一文が昔から気になっていたのと、該当する者のうち大部分を把握したと考えても良い状態になったためである。
 以下、5名の犯罪概要を、確定順に記載する。

1:整体師K。
拘置先:名古屋刑務所
罪名:戦時強盗殺人、死体遺棄
被害数:1
概要:主婦を騙して金を持参させた上、山林に誘い出して殺害し、金を奪った。
備考:一審確定

2:無職T。
拘置先:札幌刑務所
罪名:戦時強盗殺人
被害数:3
概要:住宅に侵入し、現場にあった鉈と玄翁で一家3名を殺害し、金を奪った。
備考:一審確定

3:製罐工S。
拘置先:東京拘置所
罪名:窃盗、同未遂、戦時窃盗、住居侵入、戦時強盗殺人、戦時放火
被害数:4
概要:空腹に耐えかね通りがかった家に窃盗目的で侵入したところ家人に発見されたため、家にあった薪割斧で一家4名を殺害した。

4:無職S。
拘置先:札幌刑務所
罪名:戦時住居侵入、戦時強盗殺人
被害数:1
概要:借金返済のため、知人方に強盗目的で侵入し、知人を殺害し、1060円を奪った。
備考:恩赦減刑

5:人夫I。
拘置先:東京拘置所
罪名:強盗殺人
被害数:1
概要:遊興費欲しさに同僚を殺害し約千円を奪った。
備考:殺人前科

 戦時強盗殺人罪は法定刑が死刑のみであるため、1〜4は死刑を免れない。一方、今の基準で考えると、戦時強盗殺人罪を強盗殺人罪に置き換えて考えてみると、2,3は死刑を免れないが、1,4は無期となる事案であろう。一方5は、前科に殺人があるとは言え、妻を殺害して短期刑に処せられたというものであり、死刑に近いグレーゾーンにあると考えられる。


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