徴兵


 簡単に他国との戦争を口にする人は、自分が絶対に徴兵されないと考えているのだろうか?
 戦争が長期化するようなことになれば、国は自衛官の戦死や負傷によって起こる戦力の低下に対して、質の低下を承知で、徴兵により数をそろえると考えるのは不自然ではないと思う。過去の戦争を見ても、初期の精鋭を損耗したら、質を度外視して兵士をかき集めるのは、よくあったことである。
 第二次世界大戦のドイツでは、国民擲弾兵(1944年7月から編成、14〜50歳までの男子を動員)や国民突撃隊(1944年9月から編成、16歳から60歳の文民を動員)などが編成された。
 共通しているのは、少年兵や老人が含まれており、装備及び訓練が不十分だったことである。
 国民擲弾兵には、健康上の理由から兵士として不適合と判断された者、傷病兵も含まれていたそうである。
 訓練についていえば、最末期には訓練なしのまま前線に投入されていた(国民突撃隊)そうである。また、装備についても、小銃や拳銃すら行き渡っていなかった(国民突撃隊)ようである。
 そんな部隊が戦闘行為に参加すれば多大な被害が出るのは当然で、資料(Rudiger Overmans. Deutsche militarische Verluste im Zweiten Weltkrieg. Oldenbourg 2000. pp. 333-335)によると国民突撃隊の死亡・行方不明者数は231,000(これは編成から降伏までの7ヶ月間での被害)とのことである。
 戦局が悪くなれば、最高権力者としては自分を守るために、質が低かろうが、なりふり構っていられないのである。



inserted by FC2 system