報道の関心


 報道の方向として、1つメインになる事件があると、それ以外の事件については、あまり関心を示さない傾向があると感じる。
 1995年の報道の例を取ってみる。(ただし、私の受けた感じによる主観もあると、お断りしておく)
 関東圏の話になるが、年の初めは、前年から引き続き、「埼玉愛犬家連続殺人事件」が主な事件報道だったと記憶している。
 1月17日、「阪神淡路大震災」が発生。死者6千人を超す大災害となり、「埼玉愛犬家連続殺人事件」どころではなくなった。これは20世紀を代表する大地震の一つであり、「埼玉愛犬家連続殺人事件」が忘れられてしまうのも仕方のないことであると考えられる。
 3月20日、「地下鉄サリン事件」が発生。オウム真理教による犯行であることが発覚し、代表逮捕、余罪追及などで、「阪神淡路大震災」の報道は恐ろしくトーンダウンした。実際に震災で被害を受けた人達以外の視線は、恐らくオウム真理教による一連の犯罪に向けられたことだろう。そして、この年はオウム真理教に関する報道で暮れていった。
 大きく報道すればいいというものでもないが、「阪神淡路大震災」の報道は、被害の大きさの割に、オウム真理教関連報道に比べ、不当に小さく扱われているイメージがある。復興の状況などを、もっと報道してもよかったのではないかと思ったものだ。

 さて、これも発生は前年ながら、発生した時期と場所の関係からか、事件の規模に対して、やはり報道が小さかったと思われる事件がある。それは「少年による連続リンチ殺人事件」だ。
 これは3人の少年を中心とするグループが、1994年9月−10月に、大阪、岐阜、愛知で4人を連続してリンチの上、殺害したという事件で、普通であれば、連日報道されてもおかしくない事件であった。
 しかし関東圏内では「埼玉愛犬家連続殺人事件」を大きく取り扱っている時期であり、発生が近畿中部であったためか、関東圏内では、当時その存在を知ることができなかった。(当時の私は、今のように全主要紙を細かくチェックできる環境にもなかった)
 私がこの事件を初めて知ったのは、2000年6月、少年の一人が文芸春秋に損害賠償を求めた訴訟の判決が出た記事による。この時点で、3少年の公判がどうなっているか調べてみたものの、95年に初公判があったことしか分からなかった。
 初動における報道の扱いの小ささが影響したのか、2000年12月の論告求刑公判で3人に死刑が求刑されたときも、そんなに大きく報道されなかった。

 一つの事件にウェイトをおくのではなく、もう少しバランスよく報道してもらいたいと思う。



inserted by FC2 system