最大死刑確定者数に関する報道


 2007年2月20日に上告棄却された被告の死刑が確定すれば、死刑確定者の数は100人となる。2年半ほど前に「あと数年で80人を超える」などと言ったのが、遠い昔に思える。
 ところで、この件に関して、各紙の報道を見ると、以下のような感じだ。

毎日:戦後の混乱期を除くと初めて100人に達する。
読売:少なくとも1958年以降、未執行の死刑囚が100人を突破するのは初めて。
朝日:年末時点でみると死刑囚が3けたに上った年は1946年以降、例がない。
産経:死刑確定囚は戦後初めて100人の大台に乗る。

 毎日、読売、朝日は、統計上の観点から実に慎重な報道をしている。三紙の記事は、形は違えど、いずれも正確であるが、産経の報道には問題がありそうだ。実は戦後、過去に死刑確定者の数が100人になったことは、あるのだ。
 それは1952年の講和条約恩赦時点だ。
 行刑統計年報によると、51年末の確定者は81名。統計上、52年は7月までの執行数4で、うち2名は少なくとも6月に執行されている。つまり年が始まってから恩赦時点までに執行された可能性があるのは、最大2名となる(この年は恩赦まで、執行は行われなかったという話もある)。
 確定は、元旦から同日までに上告棄却された者が15名、取下で確定した者6名。さらに前年年末に上告棄却されたものの、現行刑訴法による判決訂正申立期間を経ない者が最低6名(例:免田栄氏)。
 現行刑訴法で上告棄却された者のうち判決訂正をしているのは1名で、それも恩赦までには決定が出ているし、判決訂正期間を恩赦時点で持ち越した者もいないので、恩赦時の確定者総数は108名(年初から恩赦までに執行があったとしても106名)というところだろう。
 情報提供をする立場としては、注意深い情報発信が必要になるだろう。


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