何しに来た?


 今回の話は、昨年「怖くて」CM打ち切りになり、話題になったPS2用ゲームソフト、siren(サイレン)の話である。
 サイレンは、午前0時に突然鳴り響くサイレンの音と共に、羽生蛇(はにゅうだ)村にいる人々が、異変に巻き込まれ、そのうちの10人を操って、各人そのときのミッションを達成していくというホラーゲームである。
 異変後の羽生蛇村には、屍人(しびと)と呼ばれる、目などから赤い水を流し、青い体をしたゾンビ様の「生き物」が徘徊しており、まだ屍人になっていない人間を、ステキな屍人の世界にご招待(注1)しようと、鎌や包丁や拳銃や猟銃で歓待してくれる。何しろ、最初のステージで、警官が拳銃で襲ってくるのだから、今後の村での歓待は、ある程度想像出来ようものだ。
 そんな屍人達が活躍する羽生蛇村の各地域は、廃村になりかけの、日本の山村が舞台なので、日本の山村を知っている人には馴染みがあって、いい感じだ。特に、たんぼの脇の道に廃車が放置してあったり、山道の途中に火災注意の看板があったりして、そういう芸の細かさがたまらない。
 しかし、難易度ははっきり言って高すぎ。敵は堂々と武器をもってうろついているのに、こっちは武器がなく、攻撃できないステージも結構あるし、例え武器を持っていて屍人を倒しても、数十秒後には復活して、また村中を徘徊し始める。
 また夜の視界は最悪で、一応懐中電灯は持っているものの、つければ屍人に発見されやすくなり、発見されれば倒すか走って逃げることになるが、走れば大きな音がして、別の屍人に気付かれやすくなる・・
 と、前置きが長くなりすぎたが、とにかくサイレンとはこういうゲームだという事を頭に入れてもらった上で、本文に入る。

 今回話題にのぼる人・時・場所は、なぜか拳銃を持っている大学教授の竹内多聞氏の初日22時の蛭ノ塚である。
 状況を説明すると、拳銃を持った目つきの険しい男が、メガネをかけた、やかましい女子大生(教え子)と、夜、山中にある神社の周辺にいるといったところだ。
 ミッションは、屍人が進化した一形態である頭脳屍人の撃退というもので、今回牧野氏らを歓待してくれるのは、いずれも屍人が進化(注2)した連中で、四つんばいで移動し、赤い触角のはえた犬屍人、顎のあたりに複眼が、背中に羽が生え、飛来しながら拳銃を撃ってくる羽根屍人である。
 このゲーム固有の視界ジャック(注3)を使い、屍人達の視界と物音を感知してみると、一人だけ違う音を出している者がいる。どうやらコイツが標的のようだ。以前、違うキャラクターでこのステージを見たことがあるので、コイツがいる場所が、神社脇の崖の上にある祠であると、当たりをつけた。
 神社に向かって移動し、神社の扉を開けて調べてみると、犬屍人に発見された。早速襲ってくる犬屍人だが、間抜けなことに、神社の扉に引っかかって中に入れない。竹内氏は、落ち着いて拳銃を構えて、犬屍人を撃ち倒した。
 少し余裕が出来たようなので、扉の外に出て、その周りを調べていると、いつのまにやら、横に帽子をかぶった人がどこからか現れて、どけと言わんばかりに、竹内氏にすり寄ってくる。どうやら扉の中に入りたいらしい。
 女子大生かな?と思って、ちょっとどいてやると、そそくさと扉の中に入っていく。見ると、服に血のような赤い水を所々につけている。

 屍人だ!

 咄嗟に拳銃を構えて何発か撃つと、うめき声を上げて倒れた。
 そしたら何とステージクリア!ヤツが頭脳屍人だったらしい。アホみたいな幕切れだった・・
 それにしても、ヤツは何をしに、わざわざ敵をどかしてまで、逃げ道のない神社の中に入ったんだ?


注1:

異変後の村では、何らかの理由で死んだ人間は、数時間後に屍人となる。他に、村中の水が変化した、赤い水を飲んだり、赤い水に浸ったりしても、屍人となる。なお屍人は、あくまでも生物と定義されている。

注2:

屍人は最初、目などから赤い水を流した色の悪い人間といった感じで、いずれも(がに股でゆっくりと)二足歩行をし、道具を使ったり、扉の開け閉めもできる。屍人化が進むと、多くの男は蜘蛛屍人、女は犬屍人、一部の男は羽根屍人になり、性別に関係なく一部の者は蜘蛛屍人や犬屍人を操る頭脳屍人(ブレイン)になる。頭脳屍人以外は、扉の開け閉めをできない。

注3:

常に降り続ける赤い雨を体に受けているキャラクター達も、徐々に屍人化が進んでおり、屍人固有の能力である視界ジャックを使えるようになっている。これは、他の屍人や人間の視点で物を見て音を聴くことが出来る能力である。




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