加害者家族


 私の母の出身の集落出身者が、90年ほど前に、同じ村の中で強盗殺人事件を起こした。
 その直後の集落の様子は分からないが、今でも集落の人は、事件のことを知っている。
 どれくらい知っているかというと、ずっと集落内に住んでいる私の伯父の場合、どの家の人かはもちろん、どんな凶器を使ったとか、強盗目的だったとかいうことも知っている。(ちなみに成人前に集落を出た私の母は、大昔に集落内の人が殺人を犯した人がいたようだ、としか知らなかった)
 ただ幸いにも、現在は、その家の人(加害者の子孫)は、村八分になってはいない。
 しかし40年ほど前、つまり事件から半世紀ほど経った頃、加害者の孫か曾孫にあたる人物が、隣村から嫁をもらおうとしたところ、次のようなことがあった。
 仲人が相手方の親に会いに行って、結婚の可否を伺いに行った。すると相手は、「あの集落には殺人者の家族がいなかったか?」と聞いてきた。仲人も、隠すわけにはいかないので、正直に話をすると、「じゃあ駄目だ」ということになったそうだ。
 結局、その人(加害者の子孫)は、従兄弟と結婚したそうだ。
 加害者の家族は、何十年たっても、過去にたたられてしまう。
 事件後に、加害者家族が引っ越しをするのも、無理もないと思った。



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