一審死刑判決数から見えること


 私は死刑に関する情報を、色々な角度からまとめている。その中に一審から確定(現在未決の者も含む)までの審理の早さをまとめた一覧がある。これは一審判決順になっており、上訴の結果減刑されたり、死亡した場合は、削除して管理している。
 以上のような条件で、一審判決を年代別に分けると、以下のようになる。

1950年代 232名(全員確定)
1960年代 96名(全員確定)
1970年代 40名(全員確定)
1980年代 55名(確定53名)
1990年代 39名(確定17名)
2000年代 49名(確定3名:03.6末まで)

 これを見ると、2000年代は、まだ4年目の半ばなのに、49名(この他、減刑及び公訴棄却になった者が3名いる)となっており、その数は60年代に迫る勢いである。もちろん、この49名の中には、将来減刑されたり、確定前に死亡したりして減る者もいるだろうが、それでも10年間で90〜100人くらいは行きそうな感じである。
 たしかに今は、一時期より刑が厳しくなっているが、70〜80年代より軽いとは思えず、60年代と比べると、1人殺に滅多に死刑が出ない分、大分軽いはずである。それでも死刑判決数が同じくなるというのは、やはり治安が悪化しているのだろう。
 一審の無期懲役数にしても、85〜98年には1年を除いて10〜40人台だったのが、99年72人、00年69人、01年88人。まだ統計は出ていないが、確認できただけで02年89人、今年は既に54人(6月末現在)となっている。
 死刑事件や無期懲役事件の多くは強盗殺人や保険金殺人などの利欲犯であり、長引く不況の影響が出ているのだろう。
 職を探すのに疲れて、強盗に入ったが、そのまま疲れて動けなくなり、黙って警察に捕まった男の話や、食えずに刑務所志願で捕まった男の話などを聞くと、いくら彼らを罰しても、社会の状況が変わっていなければ、また再犯するだけだろう。

 一方で死刑の威嚇力の視点で見てみると、2000年代に死刑を言い渡された者のうち、4名を除いて、93年の死刑執行再開以後に犯罪を犯している。これは、死刑執行についての報道が殆どされなかった70〜80年代の死刑・無期判決数と合わせて、死刑の威嚇力についての疑問的なデータと言えるだろう。




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