憲法改定草案


 自民党憲法調査会のプロジェクトチームが、「憲法改正草案」なるものを出してきた。
 内容は以下の通り。(ただし、新聞記事から参照しているので、漏れもあり)

○国家体制
1:主権は国民に存する。
2:天皇を元首とする。
3:日本国は道州で構成される。
4:日の丸を国旗、「君が代」を国歌とする。

○国民主権
1:国家統治に関する全ての権力は国民によって行使される。

○天皇
1:天皇は日本国の元首である。
2:天皇は日本国の伝統・文化の象徴である。

○道州制
1:日本国を構成する道州は以下のとおりとする。北海道、東北州、関東州、東京特別州、北陸信越州、東海州、近畿州、中国州、四国州、九州。

○安全保障
1:日本国は正義に基づく国際秩序の形成・維持、発展に主導的な役割を果たすように努めるとともに、確立された国際機構の運営及び活動には戦力の使用を含む責任ある立場で積極的に参画する。(集団安全保障)
2:日本国は自らの独立と安全を守り、急迫不正の侵略に対してはこれに対抗し防衛する権利を有する。(自衛の権利)
3:日本国は国家防衛の目的に即し他国と同盟を組むことができる。(集団自衛権)
4:日本国は陸海空三軍その他の戦力を持つものとする。
5:地球環境を破壊し、地球の安全を脅かすような行為はこれを認めない。(地球安全保障)

○国民の権利及び義務
1:国民は国家を防衛する義務を有する。
2:国民は公共財の保守に資する義務を負う。
3:何人も名誉・信用その他人格を不当に侵害されない権利を保障される。
4:家族は社会を構成する最も基本的な単位である。何人も各自、その属する家族の運営に責任を負う。
5:何人も良好な環境を享受する権利を有するとともに、良好な環境を保持し、且つわれわれに続く世代にそれを引き継いでいく義務を有する。

○国会
1:参議院は道州政府の構成員並びに道州ごとに行われる選挙により選出された議員でこれを構成する。
2:国家非常事態に備えるため、国会に衆参両院合同委員会を置く。

○司法
1:すべて司法権は憲法裁判所、最高裁判所及び法律で定めるところにより設置するその他の裁判所に属する。

○行政
1:内閣は法律に基づいて行政権を行使する。
2:内閣総理大臣は国家の独立と安全保障又は国民の生命、身体もしくは財産に切迫した影響を及ぼす緊急事態が発生した場合において、国家非常事態命令を発動することができる。

○憲法改正
1:衆・参両議院の各々において在席議員の3分の2以上の出席の上で出席議員の3分の2以上の賛成により改正される。
2:衆・参両議院の各々においてその在席議員の3分の2以上の出席の上で出席議員の過半数により改正案を国民に提案して国民の承認を得て改正される。



・「天皇を元首とする」というのは、天皇にどの程度の権限を与えるのか?これも「元首」の法解釈次第ということになるだろうか。
 何にせよ、我々に選ばれた訳でもなく、(制度上とはいえ)税金を払わない人を元首にするというのは、民主主義国家としてどうかと思う。
 ちなみに私は、今の天皇を、一人の人間としては嫌いではない(好きでもないが)。むしろ、好きでなったわけでもない「天皇」という呪縛によって、プライバシーもなく、体調不良でも、みんなの前では笑顔を見せないといけないような状況は、非常に気の毒だと思う。

・「安全保障の1」と「国民の義務の1」と合わせて、解釈次第で、次のようなことができる。
 パレスチナとイスラエルが戦争になった。日本と同盟しているアメリカがイスラエルに肩入れすることになったので、あらかじめ徴兵(国民の義務の1)しておいた日本の軍隊をパレスチナ攻撃に派遣(安全保障の1)する。
 ちなみに、「安全保障の2と3」が縛りになってそんなこと出来なさそうに思われるが、「防衛の目的で同盟出来る」「防衛する権利を有する」とあるだけで、「日本国土防衛の目的でのみ戦闘できる」わけではないところがポイント。
 もうひとつ、「国民の義務の2」(国民は国家を「防衛」する義務を有する)も、徴兵の上での外征防止への縛りになりそうだが、「アメリカとの同盟による戦争は、日本が侵略されたときの事を考えると、「同盟関係を守ることも防衛」と解釈できる」かもしれないし、第一、(徴兵による)日本軍が、日本国土防衛以外の戦争(以下外征)ができないとは、どこにも書いていない。

 結局、解釈次第で、徴兵制も、アメリカにくっついて外征することも可能だということだ。

・「憲法改正の1」は、国民が介在しなくても、憲法改正が可能だということだ。
 すべての法律に優先される憲法が、国民の手の届かないところで改定される可能性があるということだ。

 まあ、徴兵制にせよ、外征にせよ、それらが可能になったところで、多くの国民が国政選挙の投票に行かないで、こういう草案を作る連中を、国政機関内に、のさばらせた結果なのだから、仕方ないかも知れない。


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