死刑と無期のボーダーライン


 「死刑になる犯罪」を書いたのが2年前。あれから判決は厳しくなってきたようだ。というか、昔に戻ってきたというべきだろうか。90年代はあの内容で、大体正しかったのだが、あの定義では死刑にならなかったケースでも死刑判決が出てきている。主なのは死者2名での殺人罪事件だ。裁判所も謀殺か、止めを執拗にさしているか(殺意の強固さの度合い)など、一時期よりも多くの判断材料を吟味して判決を決めているようだ。
 その結果、不況による犯罪の増加と相まって、一審死刑判決数も2000年から3年連続で二桁になっている。これは1964−66年以来である。ただし、死刑求刑数に対する死刑判決の比率は1958−60の38%(総数171)に比べると、67%(総数52)と高率なのが特徴である。これは昔と比べると、検察の死刑求刑の条件が厳しいことが原因だろう。なぜなら、58−60年の死刑判決数は65で00−02年3月の同数は52と、求刑の数の差と比べると大して差がないからである。
 判決が厳しくなる傾向は二審でも見られる。量刑が軽かった90年代後半にでた無期懲役判決が高裁段階で死刑になるケースが増えた。1999−2001の3年間で6件。短い期間にこんなにひっくり返るのは70年代以降では初めてである。まあ逆転した事例を見てみると、保険金殺人だとか、殺人前科持ちの逆恨み殺人だとか、強盗殺人に準じるような利欲殺人とかで、よく一審で死刑にならなかったなと思う事例ばかりである。(ただし逆恨み殺人は標準的な判例では無期の事例)

 まあなんにせよ、近い内に「死刑になる犯罪」を修正する必要がありそうだ・・


(C)笑月


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