裁判所・部 横浜地方裁判所・第三刑事部
事件番号 平成14年(わ)第2336号
事件名 監禁、住居侵入、殺人、監禁致傷
被告名 古澤友幸
担当判事 小倉正三(裁判長)安藤祥一郎(右陪席)榊原敬(左陪席)
日付 2004.3.30 内容 判決

 2分間のビデオ撮影が許可され、裁判官が入廷した後しばらくの沈黙、カメラと残りの(映りたくない)傍聴人が入れ替わったあと、裁判長がゆっくりと、特に罪名をひとつひとつ
 「被告人に対する、監禁、住居侵入、殺人、監禁致傷事件について、当裁判所は、次のように判断する。理由・・」
 と、主文の言い渡しを後回しにして、「理由」から読み始めた。

 古澤被告はスナックのホステスをしていたM子と2度目の結婚をし、M子の前夫との子供と養子縁組をした。しかし、古澤被告は浮気、M子も深夜まで飲みに行くなどするため家計のやりくりがうまくなく、夫婦仲はぎくしゃくしていく。
 M子は実家に帰った後、古澤被告はM子が前につきあっていた男と会っていたことを知り腹を立て、うそをついたからこうなるんだと思い知らせてやると、M子を車に押し込め両手を縛り車を走らせ、後に暴行。M子は古澤の家に戻ると約束したが、M子は弁護士を雇い、離婚調停をしようとする。これで古澤被告は、M子に男がいて、自分はだまされたと思い込み、自分も弁護士に相談するが、離婚は免れないといわれる。古澤被告は探偵を雇い、調査の結果M子がさらに別の男Dと会っていることを知る。古澤被告も自らM子を尾行し、Dを初めて見る。M子とDがラブホテルに行っていると思い込む古沢被告は、ポニーテールだったM子が、後に尾行したときは髪を束ねていなかったことから、浮気を確信し、自分をばかにした絶対に殺してやると強い殺意を抱く。
 M子を拉致するために、スタンガン、ロープ、手錠、アッタクナイフを購入。夜、寝静まっているときにM子を拉致しようと計画。ところが、試しに使っているうちにスタンガンが壊れ、家族に騒がれたら殺害もやむを得ないと思う。しかし実家に侵入すると、M子に「お父さん、お母さん警察呼んで!」と騒がれ、M子の子供Yと、父M氏と母F子が起きてしまったので、まずYの胸部、腹部を数回刺し、次にF子、M氏を同様に殺害し、出血死させた。M子の両手両足に手錠をかけて拉致し、車に乗せて逃亡。M子に、「想定していた計画の中で最悪の結果となった。3人殺すのも4人殺すのも同じだ。お前を殺して俺も死ぬ」など言った。
 弁護人は、殺意がなかったと主張するが、捜査段階で殺意を自供しているし、凶器のアタックナイフは戦闘用のナイフで、刺したのはいずれも身体の枢要部であり、Yは4箇所、F子は8箇所、Mは13箇所を刺され、傷は最高でYが15cm、F子が5cm、M氏が8cmに達しており、古澤被告は3人を放置してM子を拉致して逃走したのだから、古澤被告の殺意は明らかであるから、弁護人の主張は失当である。
 犯行の原因は夫婦間のトラブルであるが、夫婦間の問題は夫婦間で解決するべきであるし、M子は話し合いで解決しようとしていたのに、もめごとに何の関係のない、老齢・幼年の被害者を何のためらいもなくメッタ刺しにして殺害したのであって、用意周到で動機は自己中心的、犯行は冷酷残忍なものである。
 Yは死ぬ間際に「何でだよ〜、どうしてだよ〜」と言い、突然理不尽にも命を奪われ、M氏とF子は娘と孫を守ることができず殺害され、その無念さは察するにあまりある。M子は殺害は免れたものの、心的外傷により、精神科に通い睡眠薬を服用するなど、M子が本件犯行により受けた肉体的・精神的苦痛は大きい(このあたりから遺族席からすすり泣きが聞こえはじめる)。遺族の処罰感情は極めて峻烈なものである。
 そして、古澤被告が証言台に立つようにいわれる。

 判決主文
 被告人を死刑に処する
 押収してあるアタックナイフと手錠を没収する

 遺族は閉廷後、裁判長に向かって頭を下げ、法廷の外に出て、検事に「どうもありがとうございました」と目に涙を浮かべながら頭を下げていた。
 裁判長は、判決文を淡々と読み上げ、古澤被告も見かけ上は特に動揺している様子はなかったし、ましてや騒ぎ立てるようなこともなかった。

報告者 Doneさん


戻る
inserted by FC2 system