裁判所・部 東京高等裁判所・第一刑事部
事件番号 令和2年(う)第1248号
事件名 強盗殺人
被告名
担当判事 若園敦雄(裁判長)小森田恵樹(右陪席)丹羽芳徳(左陪席)
その他 弁護人:水野智幸
書記官:渡辺真美
日付 2021.1.29 内容 初公判

 被告人は黒と白のジャージで短く刈った髪で大人しそうな中年男性。

裁判長「それで開廷します。被告人の名前は何と言いますか」
被告人「Aです」
裁判長「生年月日は」
被告人「昭和58年〜」
裁判長「本籍地は」
被告人「長野県飯田市〜」
裁判長「東京拘置所で受刑している?」
被告人「はい。今も」
裁判長「仕事は」
被告人「無職です」
裁判長「7/20付で長野地裁松本支部で強盗殺人で有罪の判決があり、控訴の申立があったので、控訴審の審理を始めます」

 弁護人の控訴趣意は10/20付けの控訴趣意書、1/21付けの控訴趣意補充書の通りで、控訴趣意書の6ページは「債権→債務」に訂正。
 控訴趣意は訴訟手続きの法令違反、事実誤認、量刑不当の主張。検察官の主張は12/24の答弁書の通りで控訴棄却が相当。
 弁護人が請求した証拠調べのうち、被疑者ノートの採用は必要性なしとして却下、反省状況の立証については原判決後の情状に限って採用されて被告人質問。

−被告人質問−
弁護人「今被害者の方に対してどう思っていますか」
被告人「本当に尊い命はどういう理由があったにせよ奪ってしまって本当に申し訳ありません。本来なら自分の命をもって償うべきだがそれもできずに本当に申し訳ない」
弁護人「そういうことを考えるようになったきっかけは」
被告人「今まで本当に本とか読んでこなかったが、小説を読んで命の大切や尊さを知りました」
弁護人「例えばどんな本」
被告人「『手紙』とか『永遠の0』とか『コーヒーが冷めないうちに』です」
「手紙」は東野圭吾の小説で強盗殺人で服役している兄とその弟のやりとりで罪名が一緒だったことに興味をもって読んだ、遺族の気持ちや家族の気持ちについて考えさせられた。「永遠の0」は娘に会いたい気持ちや命の大切さを知った、被告人は息子と娘がおり、会えなくて辛いかと問われると「そうですね」と。
弁護人「本件で足りなかったところは」
被告人「いっぱいありますが、親とも10年以上会っていなくて周りに相談できなかった」
弁護人「他にヤクザとの関係もあるね」
被告人「飯田は右向けばヤクザという感じに多くて、仲良くしたりしたのが本当にまずかった。オーナーもヤクザで強くなった感じがして、組長と仲良くなると強くいられた」
弁護人「家族とは面会や手紙のやりとりはありますか」
被告人「手紙は家族や兄や友人とやりとりしています。面会はX1さんも」
 家族の面会は、親はコロナの影響で来れず、姉と兄がいるが、兄が来てくれた。兄は一審のとき奥さんを癌で亡くし「命の大切さを分かれ」と言われた。手紙は毎月5通しか出せない。被告人は仏教なので、宮沢さんの命を奪ってしまって申し訳ないという思いを込めて南無阿弥陀仏を毎朝と寝る前やっている。
被告人「X1さんは職を変えて看護学校に通い始めた。まだ応援し続けていることを伝えてくれています。「命の大切さを分かれ」「応援しているから立ち直ってほしい」と。家族やX1さんなど大罪人であるのに応援している人がいて申し訳ない気持ちでいっぱいです」
 いつ出られるか分からないが、これまでやってこなかった法律のことや看護の教材を取り寄せて勉強しはじめたとのこと。
 被告人質問の最後に「自分のしてしまったことにまっすぐ向き合って反省してしっかり償っていきたいと思います」と述べた。
裁判長「検察官は」
検察官「ありません」
右陪席裁判官「一審の判決を受ける前と後では違ったことはありますか」
被告人「命の大切さを軽く考えていた。タイムマシンでいつでも戻ってこれるかの軽い考えだったが、命の大切さ、尊さを知った。人の命を奪ってしまったのは事実」
裁判長「それではこれで終わって結審します」

 判決の言い渡しは3/3 15:00-に指定して閉廷して被告人は頭を軽く何度か法曹三者に下げながら退廷していった。


報告者 insectさん


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