裁判所・部 | 東京高等裁判所 | ||
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事件番号 | 平成28年(う)第2280号 | ||
事件名 | 強盗殺人 | ||
被告名 | 肥田公明 | ||
担当判事 | 大島隆明(裁判長)菊池則明(右陪席)林欣憲(左陪席) | ||
その他 | 書記官:坂田昭吾 | ||
日付 | 2018.4.20 | 内容 | 証拠整理 |
2018年4月20日、東京高裁の805号法廷で、肥田公明被告の控訴審公判が行われた。 抽選券の交付は9時45分が締め切りだったが、それまでに28枚の傍聴券に対し24人しか来なかったため、無抽選で入廷できた。 入廷前、法廷の前の廊下に並ばされ、録音撮影が禁止されていることが職員より伝えられた。また、録音禁止である旨が書かれた張り紙が、芹澤裁判長の名義で、壁に貼られていた。第三回公判の際に、何かあったのだろうか。 弁護人は、三人であった。一人は、眼鏡を掛け顎髭を生やした、がっしりした体格の中年男性。もう一人は、小太りの短髪の中年男性。また、以前の被告人質問で、たくさんの異議を唱えていた、白髪交じりの老弁護士も居た。 検察官は、第一回、第二回公判から変わっており、二名に増員されていた。一人は、眼鏡をかけ、禿げあがり太った中年男性。二重顎が印象に残った。もう一人は、痩せた鷲鼻の初老の男性であり、白髪交じりの髪をオールバックにしている。ワタミの元会長を思い出させる風貌だった。 以前の検察官は、どことなく余裕がなさそうであり、能力に問題があるようにも思えた。第二回公判の被告人質問でも、不十分な質問を連発して、弁護人に何度も異議を申し立てられていた。訴訟への関与が手に余ると上層部に判断され、交代させられたのかもしれない。 大島裁判長は、痩せた、眼鏡をかけ、禿げあがった初老の男性。この日は、何処か気難し気な表情を浮かべていた。林裁判官は、小太りで短髪の中年男性。菊池裁判官は、白髪交じりの皺の目立つ初老の男性である。 被告人は、この日もノーネクタイの黒いスーツ姿という出で立ちだった。白髪交じりの柔らかそうな髪が、少し伸びた印象である。日に当たっていないためか色白であるが、緊張しているのか頬に少し赤みがさしている。体格はがっしりしていた。入廷時、被告用出入り口のところで、法廷にむけて深々と一礼する。検察官にも会釈し、眼鏡をかけた検察官が会釈を返していた。裁判長の方にも、証言台の椅子の前あたりに差し掛かった時に、深々と一礼した。 法廷内に当事者が揃い、肥田公明被告の控訴審第四回公判は、10時より開廷した。 本日は証人尋問を行う予定だったらしいが、中止となり、証拠関係の整理が行われた。 まずは、検察官請求の証拠について。事件現場の冷蔵庫前のバリケード設置状況について、採用して取り調べられることになる。これは、図面状のものであるらしい。 Y1、Y2の調書である15,16号証は、Y2調書について同意部分について採用される。 弁護人請求の証拠について。弁5〜8号証について、一部を削って請求されていた。弁6以外の証拠を撤回し、弁16〜18の調書の正本を採用して取り調べる。内容は、Z1干物の普段の金銭管理の状況などについてらしい。弁9〜11号証については、検15,16号証に同意することを条件に同意する、と検察官は述べていたらしい。弁護人はそれに同意している。検察官は9について同意し、10について同意するが信用性を争うと述べる。 弁護人請求の証拠について総合すると、検察官は、Y1報告書について同意し、Y2報告書について信用性を争う。防犯カメラ画像について同意するが信用性を争う、と述べる。一審で被告人の弁護人をつとめたY3弁護士の陳述書については同意するが信用性を争う。Y1の電話聴取所については同意。以上の内容は、現場付近や駐車場の車の出入り、一審弁護人に被告人がどのような話をしていたか、ということの陳述書である。 検察官請求の甲23号証について、弁護人は距離の関係について同意し、その他は不同意。検察官は不同意部分について撤回する。 続いて、採用された証拠について、要旨の告知が行われる。 まずは、検察官側請求証拠の要旨の告知。 検6は、実況見分調書。Y4を立会人にして、本件現場のバリケードの設置状況、被害者が閉じ込められていた冷蔵庫の血痕付着状況について、見分を行っている。 検15は、Y1の調書。本件当日午後7時ごろ、干物店から白い車両が、勢いよく国道に出てきた。 検16は、Y2調書。事件当日午後10時ごろ、駐車場に二台の車があった。午後9時ごろに干物店のある場所に明かりがつき、10時ごろに消えていた。 甲23号証は、現場からZ2商高までの距離について。7.7Kmあるとのこと。 続いて、弁護人側請求証拠の要旨の告知が行われる。 弁8,7号証は、Y5の調書。Z1干物の売上金の計算方法、干し網の場所について。 弁9号証は、Y1への捜査報告書。平成24年11月17日の午後7時ごろの出来事。Z1干物の駐車場から勢いよく車が出てきて、ぶつかりそうになった。バン型の普通車で、白っぽい色だった。 弁10号証は、Y2の調書。平成24年11月17日、午後10時ごろ、Z1干物店の前を車で通り、二台車があった。ワンボックスカーとハッチバッグで、車の前に二人の人が立っていた。男女や姿は解らなかったが、中肉だった。 弁11号証は、ドライブレコーダーの画像捜査報告書。平成24年11月17日午後9時10分に、Z1干物店二階に明かりがついていたことが伺われる。また、Z1干物店の駐車場で、何かがライトを点灯していた。 弁12号証は、Y3弁護士の陳述書。一審の公判前整理手続き段階で、肥田は午後7時過ぎに現場に行き、いったん離れ、また戻ってきたと述べていた。当時は一回目の整理手続き前であり、証拠開示も行われていない時期であった。 弁13号証は、Y1の陳述書。私の見た不審車両が事件に関係あるかもしれないと思い、私の方から警察に話しに行った、という内容。 裁判長は、弁15号証の採否を留保し、他の事実取り調べ請求を却下する。そして、「もう長くなってきていますが・・・」と控訴審にかかっている時間に言及し、次回の期日は6月8日午前とする。5月15日までに取り調べ請求が無いようであれば、この日を結審にすると。 閉廷しようとした時、検察官は突然、証拠請求の趣旨を説明しだした。「弁護人の立証趣旨を認めるわけではない」「bさんの血がaさんの血よりも多いという点を排除した趣旨である」などと述べる。法廷では説明されなかったやり取りらしく、聞いていても、何のことかはわからなかった。裁判長は、「特にその点は必要ない」と答え、検察官は説明を撤回する。また、弁護人も、証拠採用の状況について質問をした。 そして、次回期日は6月8日午前10時であると伝えられ、10時15分に閉廷した。 被告人は公判の間、裁判長の側に少し顔を向けて、熱心に耳を傾けている様子だった。閉廷後、被告席で立ち上がった後、裁判長の方に会釈をしていた。刑務官に「行こう」と促されて退廷していったが、裁判長の前に差し掛かった時に深々と礼をし、検察官の方にも会釈をして退廷した。 この日の公判内容は短く、味気ないものであったが、提出された証拠は重要なものばかりのようだ。Y1供述は、事件時に現場の駐車場に、被告以外の、正体不明の車があったということ。Y2供述は、事件後に現場の二階の電灯がついていた時間帯に、正体不明の車が駐車場にあったということを、明らかにしている。また、Y3弁護士の供述は、被告人の「一度現場に戻った」と被告人が一審から述べていたことを、裏付けるものである。弁護士の供述が信用性ある内容ならば、被告人はこの点は嘘はついていないということになる。被告の言葉への不信感を、ある程度払拭するものとはいえる。 控訴審で新たに取り調べられた証拠は大まかに言えば、被告人の新たな被告人質問、検証を行った医師の証言、Y1供述、Y2供述、Y2供述を裏付けるドライブレコーダーの記録、被告人が「一度現場に戻った」と一審時から述べていたことを裏付けるY3供述の、6点のはずだ。いずれも、間接的な証拠ばかりである。 有罪無罪いずれについても決定打が欠ける中、どのように判断するのだろうか。 | |||
報告者 | 相馬さん |