裁判所・部 東京高等裁判所・第十二刑事部
事件番号
事件名 殺人・傷害等
被告名
担当判事 井上弘通(裁判長)
日付 2013.2.28 内容 判決

−主文−
 本件控訴を棄却する。当審における未決拘留日数のうち60日を算入する。

−理由−
 弁護人の控訴趣意の論旨は事実誤認と量刑不当の主張である。

 事実誤認の論旨は被告人に恨みを持っているとしてB証言の信用性を争っているが、B自身実刑判決を受けており、恐れていた被告人を陥れるために不自然な供述をするとは考えがたく、迫真性に富み、供述内容も真摯であり信用でき、これに齟齬する被告人供述は信用できない。他にも被害者が自分の手すりから手足を滑らせた、仮に転落させたとしても地面に縁石があるとは知らず殺人行為ではない、被告人には動機がないなどと主張するが、横たわっていた被害者が理由もなくベランダに行くことはないしエタノール反応も出ていない、被害者の死因は縁石に後頭部を強打したことだが、縁石の有無に関わらず4.5m下にベランダから投げ落とす行為が殺人の実行行為であると認められる、動機は被告人が否認しているため明確ではないが、必ずしも明らかにしなければならないというわけではない。
 殺人は無罪であるという主張はその前提を欠き、傷害の事案も被害者宅においてペティナイフや包丁で、右大腿部に加療1ケ月を要する怪我を2回負わせている。
 自宅に居候させてもらっている被害者に酒に酔っては因縁を付け、傷害・暴行を繰り返したもので酌量の余地はなく、殺害態様は残虐である。平成14年には傷害致死の罪で懲役7年に処せられたにも関わらず、出所後1年8か月あまりで同種事案の犯行に及んでおり反省の態度に欠ける。そうすると仏門に入りたいと言っていることや一応反省の態度を示していることなどを考慮しても原判決が重過ぎて不当であるとは言えない。論旨はいずれも理由がない。

 裁判長は上告ができる旨の説明をしたが、被告人は何も答えなかったが、弁護人には「先生ご苦労さんです」とドスの効いた声で労いの言葉を退廷間際掛けていた。

報告者 insectさん


戻る
inserted by FC2 system