裁判所・部 東京高等裁判所・第四刑事部
事件番号 平成21年(う)第647号
事件名 窃盗、業務上過失傷害
被告名
担当判事 土屋哲夫(裁判長)鬼澤友直(右陪席)村山智英(左陪席)
その他 書記官:坂田、清水
検察官:見越正秋
日付 2009.6.16 内容 判決

 被告人は若作りの痩せ型で陰のある風貌で、相当しかめ面をしていた。控訴審判決でも一応必ず人定質問は行う。

裁判長「Aですね」
被告人「はい」
裁判長「それでは被告人に対する窃盗、業務上過失傷害の事件につき控訴審の判決を言い渡します」

−主文−
 本件控訴を棄却する。当審における未決勾留日数のうち40日をその刑に算入する。

−理由−
 弁護人の控訴の趣意は弁護人作成の控訴趣意書の通りであり、論旨は被告人を懲役4年10月に処した原判決は重過ぎて不当であるという量刑不当の主張である。
 そこで検討すると、被告人は
・第一
 平成13年6月9日、埼玉県蕨市内において原動機付自動車1点を窃取した。また平成14年の8月から平成15年の2月にかけ、埼玉県蕨市内で歩行者の背後から前記原動機付自動車で近づき、追い抜きざまにひったくりをしたという窃盗13件の事案。
・第二
 原動機付自動車を運転中に直進進行する際、運転手には一時停止して左右を確認する義務があるのにこれを怠り一時停止することなく交差点に進行した過失により原動機付自動車と衝突して、運転手に加療1週間を要する打撲や擦過傷を負わせた事案。
 第一のひったくりの犯行はスピードが出て小回りの聞く原動機付自動車を使用し、20歳から60歳の歩行中の女性を物色して人気のないところで犯行に及び、犯行後はスピードを上げて逃走するなど計画的で、服装も変えたりしている。また一歩間違えれば身体への影響もあり得る危険な態様である。
 被告人の供述によると平成9年頃から遊興費欲しさに職業的・常習的にひったくりを繰り返したとされ、本件はその一端であり悪質と言わざるをえず被告人の規範意識の鈍磨が伺われる。
 被害金は180万円、物品被害は時価合計300万円にも上り、物品被害のなかには被害者の手元に還付されているものの現存価値を損なっているものもあり、被害者のなかには本件犯行後にバイクが後ろから近づいてくると恐怖心を感じている者もいる。
 本件は近接地域で継続的に行われており、物色したうえで犯行に及ぶなど悪質であることも無視できないこと、被害品は還付されているものの著しく破損した状態であること、事故はひったくり1件を起こして逃走する際起こしたもので逃走するために安全確認表示に一時停止することなく起こしたもので、被害者の負った傷害は軽いものではなく何ら慰謝の措置を講じておらず被告人に厳重な処罰を求めているのも当然であり、他方被告人は謝罪の心境を綴っていること、前科がないこと、生育歴に不遇な点があること、長期間の身柄拘束を受けていること、今後の支援を父親が証言していることを考慮しても、被告人を懲役4年10月に処した原判決が重過ぎて不当とは言えない。論旨は理由がない。
 よって本件控訴を棄却することとし、主文の通り判決する。

 その後最高裁への上告ができることを説明して閉廷した。

報告者 insectさん


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