裁判所・部 東京高等裁判所・第三刑事部
事件番号 平成20年(う)第2668号
事件名 強盗殺人、有印私文書偽造、同行使、詐欺
被告名
担当判事 金谷暁(裁判長)松本圭史(右陪席)古玉正紀(左陪席)
その他 書記官:青柳元康
検察官:小林健司
日付 2009.3.12 内容 判決

 被告人は背のとても低い腰の曲がった老婆であった。今にも泣き出しそうな表情で下を向いていた。
 裁判長が千葉地裁時代に検察の論告を丸写しにするような判決を出す地獄部判事だったので嫌な予感がしたが的中した。

裁判長「Bですね。あなたに対する強盗殺人、有印私文書偽造、同行使、詐欺の事件につき控訴審の判決を言い渡します」

−主文−
 原判決を破棄する。被告人を懲役30年に処する。

裁判長「あっすいません、弁論再開の申請が出ている事件でした」
 弁論を形だけ再開して終結し、理由の読み上げに戻る。

−理由−
 控訴の趣意は、検察官は有利な情状を考慮しても懲役25年は著しく軽きに失する、弁護人は高齢の被告人にとって懲役25年というのは無期懲役に等しく重過ぎて不当というものであるので以下検討する。
 原判決によると本件はAと共謀のうえ夫であるaから金銭を強取しようと、殺意をもって頸部をロープで絞めて、鼻孔部を手やタオルで塞ぐなどして殺害し、現金12万1000円や預金通帳を奪い、後日三井住友銀行のaの口座から預金解約の名目で払い戻しをして現金13万5000円を騙し取った強盗殺人、有印私文書偽造、同行使、詐欺の事案である。
 本件犯行の動機として被告人は平成5年からAと不倫関係にあり、Aの会社が倒産して、連帯保証人だった被告人は400万円の借金ができたが、それをサラ金からの借入金で返済した。そこでかつて多額の預金通帳がある夫のaに目をつけ、頑固で金銭に厳しいaよりも、連帯保証金を返せることができて自分もパートの仕事を辞めてのんびり老後を過ごせるのでないかと考えた。そうした経緯に照らすとAと不倫関係にあり、多額の債務を背負わされたというのは背信行為であり酌量の余地はない。頑固で金銭に厳しいというのは殺害に結びつくものではない。
 被告人は長女が留守のときを狙って強盗殺人に及びことにして、Aがロープを巻きつけてベッドに倒し、手で鼻や口を塞ぐなどして窒息により死亡させたものであるが、被告人もaの両足を抑えるなどしている。犯行によりaの遺体には肋骨骨折などが生じていて、6万8000円の紙幣を全部抜き取り、金庫から5万2100円を奪取したことが認められる。強固な殺意に基づく残忍な犯行で、必死の抵抗も虚しく生命を奪われた。預金の払い戻しをしたことも軽視できないもので犯行は誠に重大である。被告人は死体をより早く切断できるように電動ノコギリを用意したり、血液を拭き取るのに掃除機を持ち出したり、aの通帳を使って2ヶ所で34万円の払い戻しを受けるなど、強盗殺人後も重大犯罪を起こした後悔や衝撃が伺えない。
 被告人の果たした役割は大きく、道具を買ったり、長女が留守であることを話すなど妻ならではの重要な役割を果たし、払い戻しも被告人が行っている。Aとの間に犯情の軽重は認め難い。被告人は相当重要な役割を果たしていて刑責は重大である。
 他方、遺族である長女と長男がともに寛大な刑を求めていること、6月1日には自ら警察に出頭していること、69歳と高齢であり前科前歴がないことなど被告人にとって酌むべき事情も認められる。なおaが頑固で心無い言葉をかけるなど夫として配慮の欠く言動があったことは推認でき幾分か同情の余地があるが、殺害は理解し難く、配慮にやや欠ける面があったことを一定の落ち度として酌むべき事情として評価するのは相当ではない。aとは二世帯住宅で、海外旅行にも行ったりしている。被告人は平成5年からAと不倫関係にあり、サラ金からも借り入れて関係を継続させた。この点において酌むべき事情はないし、長女や長男にもその責任の一端はあるとしているところ、刑事責任に影響するものではない。

 被告人は読み上げの途中から下を向いて嗚咽を漏らしていて、退廷するとき鼻水を地面に落とすなどしてしまい、それを見た書記官が嫌そうな顔をしていた。
 中年の刑務官が無作法に肩を揺するなどしていた。

報告者 insectさん


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