裁判所・部 東京高等裁判所・第8刑事部
事件番号 平成20年(う)第2614号
事件名 強盗殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反
被告名
担当判事 阿部文洋(裁判長)吉村典晃(右陪席)堀田眞哉(左陪席)
その他 書記官:井上
検察官:高橋久志
日付 2009.1.29 内容 判決

 被告人は中肉中背の眼鏡をかけたどこにでもいるような肌がやや黒い青年。主文が言い渡されたときも頭を裁判長に下げて着席していた。傍聴席には中年女性2人が生前の被害者の遺影を掲げていた。

−主文−
 本件控訴を棄却する。当審における未決拘留日数のうち20日をその刑に算入する。

−理由−
 論旨は要するに被告人を懲役刑に処した原判決の刑は重過ぎて不当であるという量刑不当の主張であり、当審における記録無期も調査して検討するに、被告人は歩行中の通行人から金員を強取しようと企て、深夜文化包丁を突きつけて被害者を脅迫したが、大声を上げられたため殺意を覚え胸を刺して死亡させ、倒れた被害者の財布から6000円等を奪い、また正当な理由がないのに刃体の長さ13.5cmの文化包丁を携帯した、強盗殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案である。
 被告人はパチスロにのめり込む一方、同居している父親から毎月10万円の生活費を要求されていた。平成19年10月にアルバイトを止めてから、派遣社員として稼動したが生活費を入れることはなかった。派遣会社から3万6000円の給料を得たがパチスロで2万円使ってしまい、生活費を入れないなら家から出て行くように父親から言われた。また派遣会社から3万5000円の給料を得たときもパチスロ等に使った。
 そして通行人から強盗をしようと本件各犯行に及んだもので動機に酌むべきものはない。深夜人通りのない場所で犯行に及び被害者が声を出すと、金員を強取しようと企て力を込めて刺すなど確定的な殺意を有し、倒れた被害者のポケットから6000円を取り出すなど利欲的で凶悪、悪質な犯行で42歳の被害者が突然命を奪われた無念は察するに余りあり結果は重大である。遺族が厳罰を望んでいるのも当然というほかない。そうすると殺害を意図していたわけでないこと、事実を認めて反省していること、原審で父親が出廷して被告人に対する対応に問題があったと話して今後家族で遺族に対して慰謝の措置を講じていきたいと述べていること、前科がないこと、その年齢など被告人にとって酌むべき事情もあるが、原判決の刑が重過ぎて不当であるとまでは言えない。
 当審における弁護費用を被告人に負担させないこととして主文で述べたとおり判決する。

 裁判長が上告の説明をして閉廷を告げると、被告人は礼儀正しく何回か軽くお辞儀をしていた。

事件概要  被告は金目的で、2007年12月2日、千葉県習志野市において、居酒屋店員に包丁を突きつけて脅したところ、店員が大声をあげたため殺害し、約6千円等を奪ったとされる。
報告者 insectさん


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