裁判所・部 東京高等裁判所・第十二刑事部
事件番号 平成20年(う)第1791号
事件名 道路交通法違反、業務上過失致死、覚せい剤取締法違反、器物損壊、強盗未遂
被告名
担当判事 長岡哲次(裁判長)片山隆夫(右陪席)松井芳明(左陪席)
その他 書記官:増田孝一
検察官:廣瀬公治
日付 2008.11.18 内容 判決

−主文−
 本件控訴を棄却する。当審における未決拘留日数のうち70日をその刑に算入する。

−理由−
1.事実誤認の主張
 被告人は業務上過失致死、器物損壊について無罪を主張したが、判決は目撃者の証言、事故の鑑定内容、本件車両の状況、捜査段階の供述は十分信用できるとして全て退けた。なお器物損壊の態様は無免許運転だったところガソリンスタンドで警察車両が近くに止まり、逃走しようとして掃除機を倒して損壊させて29万9000円の被害額を生じさせたというもの。

2.量刑不当の主張
 論旨は被告人を懲役10年に処した原判決の刑が重過ぎて不当というのである。原審の記録を調査してみるに被告人には
@平成17年10月ぐらいより覚せい剤を使用
A平成18年12月26日水戸市内のコンビニエンスストアで拳銃状のものを突きつけて経営者に「金を出せ」と反抗を抑圧したものの未遂に終わった強盗未遂の事案
B水戸市内を無免許運転中に先に述べた車両とバイクを接触させる事故を起こし、被害者を救護する義務があるのに警察官に報告することもなく逃走した事案
C平成19年1月29日先の述べたように掃除機を損壊させた器物損壊の事案
D普通自動車を無免許で運転した事案
E水戸市内のゲームハウスで覚せい剤を使用した事案
F茨城県内の資材置き場で覚せい剤を所持していた事案
がある。
 被告人は以下3回の処罰歴があり、執行猶予が取り消されて服役したものも含む前科があり、仮出獄後わずか3ヶ月で覚せい剤の使用に及んでおり、覚せい剤への依存性・親和性は顕著である。
 強盗未遂の件も手袋等を用意して経営者に拳銃状のものを突きつけるなど計画性の高い粗暴な犯行で相当な恐怖心を与えている。
 また業務上過失致死の件も運転免許を取得したこともないのに合図を送るという基本的な注意義務を怠り、発生した結果も重大でわずか19歳でこの世を去った被害者や遺族の無念は察するに余りあるところ、被告人は自己の故意を否認することに終始しているのであり(被告人は被害者のバイクを改造車と主張)、慰謝の措置も講じておらず峻烈な処罰感情は当然である。
 いずれも自己中心的で粗暴な犯行で被害額も多額であり、累犯関係にある詐欺の前科など3犯があり規範意識は鈍磨していて、犯情は悪く責任は重大である。
 そうすると強盗は未遂に終わっていること、被害者にも制限速度を超過していた事実があることを考慮しても被告人の懲役10年に処した原判決の刑は相当でこれが重過ぎて不当とは言えない。論旨は理由がない。

 裁判長は被告人に呼びかけるように早口で上告の説明をして閉廷した。

報告者 insectさん


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