裁判所・部 東京高等裁判所・第六刑事部
事件番号 平成20年(う)第977号
事件名 恐喝、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反
被告名
担当判事 永井敏雄(裁判長)矢数昌雄(右陪席)兒島光夫(左陪席)
その他 書記官:西尾明美
検察官:服部敏夫
弁護人:栗田
日付 2008.9.16 内容 被告人質問、証人尋問

 被告人は白いノーネクタイのスーツで、背が低く色白で、目が細い研究者風の風貌の男性であった。

裁判長「それでは前回に引き続いて審理を行います」
 弁護人は事実取り調べ請求その2を請求して検察官も同意して証人が取り調べられることになった。
弁護人「前回に引き続いて最後の被告人質問をやるけどね、3回目の平成18年の恐喝で得た金額は1000万円じゃなくてあくまで500万という認識でいいですか」
被告人「はい」
弁護人「500万円は全部自分のために使ったのですか」
被告人「Bさんの会社の運転資金に回しました」
弁護人「というと」
被告人「彼のりそな銀行の個人口座に振り込みました」
弁護人「自分の利益には使っていないということですか」
被告人「300万円を振り込んだ記憶があります」
弁護人「今回の事件は大きく分けて3つの恐喝があるんだけど、分配の金額を決めたのは誰ですか」
被告人「Bさんです」
弁護人「Bさんからは何等分にすると言われたのですか」
被告人「3人で分けると言われました」
弁護人「あなたを含めて3人で?」
被告人「はい」
弁護人「実際の共犯は誰だったのですか」
被告人「見えているのはBさんで、Cさんという人がもう1人いると聞いた」
弁護人「3分の1が自分の取り分だということで説明されていたのですか」
被告人「はい」
弁護人「ところが2人しか共犯はいなかったと」
被告人「はい。だが私は彼から要求することはなかったです。この件は争いもなく終わっています」
弁護人「Bさんに(共犯の)人数を多く騙されていたわけですね」
被告人「却って良かったと思います」
弁護人「あなたは具体的な分配金の要求をしたのですか」
被告人「一切ありません。お金は全て口座に振り込んでいて、それを引き出せるのはBさんだけです」
弁護人「前回の、また今回の被告人質問でも調書の記載と違っていますね」
被告人「警察の取調官に今回の事実を話すと「本当に反省しているんだったらドロドロとしている言葉で表現しなさい」と言われました」
弁護人「取調官から言葉をチョイスしてと言われたのですか」
被告人「ニュアンスというか表現を悪いほうへ悪いほうへと記載していく、そうじゃないと裁判官の心証が悪くなる、自分を悪く言うことが反省だと裁判官は分かってくれると言われました。法廷で覆したらもっと印象が悪いと言われ、何も言わず私の心にあったのは謝罪の言葉だけ・・・」
被告人は途中から涙声になった。
弁護人「そうすると一審で言いたいことはあったけど今思い出して表現しているのですか」
被告人「真実のことしか言ってません」
弁護人「あなたの刑が決まったあとお仕事はどのように考えているのですか」
被告人「義理のお兄さんが病院を経営しているのでそこで勤務しようかと」
弁護人「ご家族も傍聴に来られていますが言いたいことはありますか」
被告人「一番大切にしようとしていたがどん底に落としてしまい申し訳ない。一生償って生活を取り戻していきたいです」
弁護人「終わります」
検察官「事実が違っていたらどうして一審で言わなかったのですか」
被告人「法廷で覆したら印象が悪いと言われました」
検察官「Bさんがこの事件を起こしたのは何故だと思いますか」
被告人「私が昔話で話したことが原因だと思います」
検察官「要は1つめは借金で自己破産したこと、2つめは住民税の督促が来たこと、3つめはDさんがあなたの作った偽造の印鑑を使って悪いことに使ったからでしょ。あなたはBさんとDさんにこう言われてというのは了解得ているわけでしょ。脅し取る金は全部ビエラの口座に入るわけでしょ」
被告人「事実はそうです」
裁判官「Bさんが役員にしてくれたその会社に出資したのですか」
被告人「手伝ってもいいかなと」
裁判官「ビエラの口座の1930万円を引き出すときにキャッシュカードはあなたのほうからBさんに渡したのではないのですか」
被告人「そこは警察の供述と違っています」
裁判長「それでは情状証人の方、証言台のほうへ」
 情状証人はデザイナーのような派手な格好をした眼鏡をかけた若い男性だった。

−証人尋問−
裁判長「お名前は」
証人「X1です」
弁護人「あなたと被告人との関係ですが、長男ということでいいですか」
証人「はい」
弁護人「去年の9月に事件が発覚するまで被告人はどういう性格だったのですか」
証人「穏やかな性格でした」
弁護人「いざこざとか警察沙汰とかは」
証人「知っている範囲ではないです」
弁護人「どういうお父さんだったのですか」
証人「普通のお父さんだと思っています」
弁護人「どうして今回こんな事件を起こしたのですかね」
証人「魔が射したとしか言いようがないです」
弁護人「ご家族にも借金してるよとか感づかれていたのですか」
証人「いえ知りません」
弁護人「家族としても発覚して初めて知ってびっくりしたと」
証人「はい」
弁護人「一審判決のあと手紙のやりとりはしたのですか」
証人「していません」
弁護人「被告人から手紙はあったんじゃないですか」
証人「ありました」
弁護人「その手紙は受け取りましたか」
証人「中身は読んでいません。事前に家族のほうから聞いていました」

報告者 insectさん


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