裁判所・部 東京高等裁判所・第四刑事部
事件番号 平成20年(う)第1049号
事件名 強盗致傷、覚せい剤取締法違反、窃盗
被告名
担当判事 門野博(裁判長)土屋哲夫(右陪席)鬼澤友直(左陪席)
その他 書記官:建部、渡部
日付 2008.6.17 内容 初公判

 被告人は丸刈りで、痩せていて黒いジャージ姿で職人のような風貌であるが、クスリの影響からか目の付近には隅があった。

裁判長「被告人は前に出てください。名前は何と言いますか」
被告人「Aです」
裁判長「生年月日は」
被告人「昭和57年10月20日です」
裁判長「本籍地は」
被告人「神奈川県大和市です」

 控訴の趣意は弁護人の控訴趣意書のとおりで、量刑不当を訴えている。
裁判長「検察官、ご意見は」
検察官「理由がなく、棄却相当であります」
 弁護人は被告人の妻の証人尋問と被告人質問を申請し、一審判決後の情状に限って質問をすることが決まった。

−弁護人による証人尋問−
 証人席に座っていた被告人も妻(X1さん)が証言台に立つ。長い髪で茶髪のくっきりとした女性だった。
「良心に従って・・」という宣誓を読み上げて証言台に座る。

弁護人「あなたは被告人と平成16年に結婚したのですか」
証人「はい」
弁護人「3歳と2歳の2人の女の子がいるんですね」
証人「はい」
弁護人「今は相模原市のあなたの実家に2人とも住んでいるのですね」
証人「はい」
弁護人「実家に住むようになったのは被告人が逮捕される半年前ぐらいになるのですかね」
証人「はい」
弁護人「なぜ実家に帰ったのですか」
証人「(夫が)仕事が忙しいと言って、たまにしか家に帰ってこなかった」
弁護人「生活費は入れていたのですか」
証人「はい」
弁護人「仕事は何と言っていたのですか」
証人「何も分からなかったです」
弁護人「子どもの生活費はどうやって捻出しているのですか」
証人「自分でアルバイトをして、実家の両親から援助してもらっている」
弁護人「今回Aが拘留されている間、面会に行ったことはありますか」
証人「ないです」
弁護人「一度もない?」
証人「はい」
弁護人「何でですか」
証人「どこにいるか分からなかったです」
弁護人「接見禁止ということは知っていましたか」
証人「それは知っていました」
弁護人「会うこともないし、手紙のやりとりもしていなかったと」
証人「はい」
弁護人「これからは本人に会いますか」
証人「はい」
弁護人「どういう事件をやったか知っていましたか」
証人「知ってます。電話でオマワリさんから教えてもらった」
弁護人「一審の判決では懲役14年になったことは知っていますか」
証人「はい」
弁護人「14年というのは非常に長いことになるんだけど、この間あなたは被告人を待ちますか」
証人「待ちます」
弁護人「被告人はどんな夫であり父親でしたか。性格とか」
証人「真面目で優しくて子どもたちも慕っていた」
弁護人「将来Aが刑を終えて社会に戻るまで待つわけですね」
証人「はい」
弁護人「どういうふうに暮らしていきたいですか」
証人「子どもには父親が必要だし、長い刑になるかもしれないけど、それに従って真面目に暮らしていきたい」
弁護人「裁判所にはできるだけ早く帰ってほしいということを言いたいと」
証人「はい」

−検察官による証人尋問−
検察官「今はアルバイトをしているんですか」
証人「はい」
検察官「どんなアルバイトですか」
証人「飲食店のアルバイトです」
検察官「被告人と一緒に住んでいたアパートはどうしていたんですか」
証人「被告人のご両親の援助で」
検察官「一審の裁判で証人としては出てないですね。なぜですか」
証人「弁護士さんから話はあったんですけど、やはり・・・」
検察官「傍聴にも行かなかった?」
証人「はい」
 裁判官からの尋問はなく、促されて証人は傍聴席に戻り、被告人が証言台に立つ。

−弁護人による被告人質問−
弁護人「あなたは今回の事件で懲役14年という判決を受けましたが、どんな気持ちですか」
被告人「そうですね、被害者や社会、妻子に大変申し訳ないです」
弁護人「今日裁判所にも提出したんですが、上申書を書いている。自分であなたなりの意見を書いたわけですが、正面からね、一審の弁護人の弁論でも強く主張されていないことなのですか」
被告人「前任の弁護士の先生は、私に質問してこないんです。私も正式な裁判は初めてだったので、申し上げる機会がありませんでした」
弁護人「一審のときもこういう考え(上申書)を持っていたことは間違いないと」
被告人「はい」
弁護人「今回あなたがやったことは大変悪いことなんだけど、反省してますね」
被告人「はい」
弁護人「ただ刑はあなたの考えよりも重いと」
被告人「はい。自分の述べたい部分が違った形で表されていたんで・・・」
弁護人「将来社会復帰した暁にはどういう生活をしたいですか」
被告人「親元に帰って、妻子や被害者のために生まれ変わった気持ちで頑張りたいです」
弁護人「さきほど奥さんも出られていましたけど」
被告人「子どもにも妻にも申し訳ないことをしたと思ってます」

−検察官による被告人質問−
検察官「事件は狂言強盗だったり現金輸送車強盗とか仲間もたくさんいるけど、あなたが一番中心的な役割を果たしたということに間違いはないですか」
被告人「ないです」
検察官「被害者の方に一審のときでも被害弁償というか慰謝の措置ができないということだけども、今はどうですか」
被告人「現状ではできないです」
検察官「目途がないと」
被告人「はい」
検察官「終わります」

−裁判官による被告人質問−
右陪席(主任)「上申書のなかで強盗致傷の件で、「車ごと乗り逃げする」という下りがあるけど、乗っている人を外に出すためには引きずり降ろさなければいけないよね」
被告人「ぶつかったら降りてくると思っていました」
右陪席「でも現金を積んでいるんだから、降りてこないかもしれないじゃない」
被告人「はい。その場の実行役の判断に任せると言いました。(現金を)取れなかったら取れなかったでしょうがないと思ってました」
裁判長「共犯者はどういう刑になったか分かっているのですか」
被告人「はい。聞きました」
裁判長「お子さんは2歳と3歳という可愛い盛りで、こういうことをやることに関してどう思っていたのですか」
被告人「追い詰められていたので何も考えなかったです」

 これで控訴審の審理は終了して、判決は7月3日の午後3時からに指定されて閉廷した。

報告者 insectさん


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