裁判所・部 | 東京高等裁判所・第六刑事部 | ||
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事件番号 | 平成19年(う)第2503号 | ||
事件名 | 詐欺、詐欺未遂 | ||
被告名 | A1 | ||
担当判事 | 永井敏雄(裁判長)吉井隆平(右陪席)兒島光夫(左陪席) | ||
日付 | 2008.2.21 | 内容 | 判決 |
開廷前、マリオのような中年弁護人が検察官に「示談ダメでしたわ!半分でもダメでした!」と被告人を飛び越えて話しかけていた。 裁判長「それでは開廷します。被告人は証言台の前に立ってください。A1被告人に対する詐欺等の控訴審の判決を言い渡します」 −主文− 本件控訴を棄却する。当審における未決勾留日数のうち70日をその刑に算入する。 −理由− 本件控訴の趣意は控訴趣意書記載のとおりであるので、これらを援用すると、論旨は量刑不当の主張と重要な事実の誤りがあるという。 本件は被告人が共犯者と共謀のうえ、示談金名目に、3棟の被害者宅に電話をして、娘やその夫が職場である学校で体罰を加えて生徒に怪我させたなどと虚偽の事実を告げ、示談金名下に計600万円を騙し取り、そのうちの1名からさらに金を騙し取ろうとしたが未遂に終わった事案である。 学校関係者である娘またはその夫が体罰により生徒を負傷させたなどと言って、泣き出して十分に話のできない被害者役、生徒の親役、弁護士役と役割分担して、このままでは教員の職を失ってしまうと、冷静な判断のできない状態なことにつけ込んだ、巧妙かつ卑劣な犯行である。 被告人は楽して金を稼げると、共犯者を誘っている。身勝手かつ利欲的な動機に酌むべきものはないし、態様も常習的かつ職業的で、その損害も高額である。 被告人は複数人の共犯者を犯行に誘い、プリペイド式携帯電話を用意したり、詐取した金員を分配するなどして、他の共犯者に比べて重要な役割を果たして最も多くの取り分を得ている。 A2をはじめとする共犯者は一貫して、被告人の用意した口座を使って、また被告人から報酬を得ていたと証言しているのであって、グループのリーダー的存在であって詐取した金員を分配するなど主導的役割を果たしたという原判決の判断に誤りはない。 太田の暴力団から振り込め詐欺のノウハウを教わっていたこと、共犯者のうちA2が対等に近い立場であったことは認められるが、具体的な関与の状況に照らすと、上記判断は正当である。 以上に照らすと被告人の刑責は重く、事実を認め反省していること、詐欺の被害者に5万円を送付していること、罰金前科の他に前科はないこと、知人が監督を誓っていることなど酌むべき事情も認められるが、原判決の刑が重過ぎて不当とはいえない。よって刑訴法396条により本件控訴を棄却することとし、未決勾留日数のうち70日をその刑に算入することにする。 裁判長は、通常なら「被告人を懲役○年に処した原判決の量刑は誠にやむをえない」などと言うところを、原審で言い渡された刑を判決で読み上げなかった。 被告人は無表情で法廷をあとにした。 | |||
報告者 | insectさん |