裁判所・部 東京高等裁判所・第七刑事部
事件番号 平成19年(う)第2077号
事件名 恐喝、恐喝未遂
被告名
担当判事 植村立郎(裁判長)村山浩昭(右陪席)伊東顕(左陪席)
その他 書記官:伊藤誠
検察官:飯倉立也
日付 2007.11.28 内容 判決

 被告人は黒縁の眼鏡に痩せ型の体型で若干の白髪が散見される、どこにでもいる漫画家のような風貌だった。

 控訴審判決の前に弁護人が賠償金の一部として50万円を支払ったという証拠が請求され採用された。

裁判長「それでは控訴審で取り調べた証拠も踏まえて、控訴審の判決を言い渡します」
植村裁判長は口語体かつ明朗な声で判決文を読み上げた。

−主文−
 本件控訴を棄却する。当審における未決勾留日数中90日をその刑に算入する。

−理由−
 控訴の趣意は、弁護人の趣意書記載の通りでこれらを引用すると、論旨は憲法違反と量刑不当の主張です。本件は未成年の女子であるかのように装い買春者を募り、そのことに因縁をつけて現金を脅し取ったという事案です。
 被告人は当時31〜32歳の被害者に平成18年6月18日から平成19年1月17日までの間、合計4回にわたり、長野県松本市内などで
(1)「親父だ。娘は16歳だぞ。警察に行きましょう。金はいくら出せるんだ」
(2)「50万円は返します。警察に一緒に行きましょう。弁護士に相談しました。あなたは逮捕されます」
(3)「年収ぐらいはもらったほうがいいと言われました。入院してしまい会社をクビになりました。800万円出してください」
(4)「30年間ローンで苦しんでください」
(注:(1)〜(4)はその時に被告人が言った言葉)などと申し向け、同人の名誉にいかなる危害も加えかねないと畏怖させて、平成18年6月18日に50万円、6月24日に200万円、7月1日に100万円など合計4回にわたり、現金を脅し取ったものです。
 所論は起訴されていない余罪で被告人を重く罰しているのは憲法に違反すると言います。ところが以下に述べるように論旨は理由がありません。
 検察官の論告で余罪に関する部分を原審における裁判官が削除させなかったのは違法と言いますが、原審の判決に余罪に関する部分があるわけでもなく違法を言うのは相当でありません。また検察官の論告でも余罪について日時や場所などを具体的に特定したものでもありません。また審理のなかで常習性について言及されたときも異議が述べられた形跡はありません。
 量刑不当の論旨ですが、被告人を懲役2年の実刑に処した原判決は重過ぎて不当と言います。
 本件は今言った通り援助交際で誘いに乗った買春者に未成年者の父親になりすまし、「警察に行きましょう」などと言って逮捕や社会的信用の失墜を恐れた被害者から350万円を脅し取り、さらに1000万円を脅し取ろうとした事案です。被告人はスナックの飲食代に浪費するなど動機に酌むべきものはありません。「弁護士に相談した」と言ったり、さらに金が取れると知るやさらに金を要求するなど恒常的かつ卑劣な犯行です。被害者の精神的苦痛は相当大きいものだと推察されます。
 交際を申し込んだ被害者にも落ち度があると言いますが、被告人が誘う形を取ったものです。
 他方、被告人は母親の助力監督が見込まれること、100万円については被害弁償として支払ったこと、これまで会社員として真面目に稼動していたこと、当審でも一層反省を深めてさらに50万円の被害弁償をする見込みであることなどをできる限り考慮しても、もとより執行猶予を付ける事案とまでは言い難く、求刑が懲役3年で被告人を懲役2年に処した刑期は誠にやむをえないといわざるをえません。
 被告人分かりましたね。
 なお、未決勾留日数の算入については被告人にとって有利な事情から、普通より多めに算入してあります。

 他にも同種犯行を犯していたことが判決を聞くだけでも分かったが、原審の裁判官もその点を考慮して実刑を選択したのかなと思った。

事件概要  A被告は、2006年6月18日−07年1月17日、長野県松本市内などにおいて、未成年の女子であるかのように装い買春者を募り、そのことに因縁をつけて現金を脅し取ったとされる。
報告者 insectさん


戻る
inserted by FC2 system