裁判所・部 東京高等裁判所
事件番号 平成18年(う)第2293号
事件名 公務執行妨害、傷害、器物損壊、銃砲刀剣類所持取締法違反、住居侵入、強盗殺人(認定、殺人、強盗殺人)
被告名
担当判事 大野市太郎(裁判長)奥山豪(右陪席)中島経太(左陪席)
その他 書記官:建部、渡部
検察官:吉浦邦彦
日付 2007.3.27 内容 被告人質問

 46枚の傍聴券に対し、10時10分の締め切りまでに並んだのは、22人だった。
 一般傍聴人が入廷を許された時、被告人は既に被告席に座り、弁護人と話していた。浅黒く、額が突き出ており、精悍な顔立ち。目付きは鋭い。しかし頬はこけており、ひどく憔悴しているように見えた。背は高く筋肉質そうで、全体的に痩せている。髪型は軍人のような感じ。モスグリーンの上着にジーンズといういでたちだった。
 弁護人は、眼鏡の中年男性。
 検察官は、眼鏡の初老の男性。
 裁判長は、眼鏡の老人。裁判官は、中年男性と、眼鏡の中年男性。
 記者席は二つ設けられており、二つとも埋まる。
 A被告の控訴審第二回公判は、803号法廷にて、10時30分から開始された。

裁判長「では、始めます。えー、前回、弁護人の書証ですけども」
弁護人「あのー、前回、まず、提出されていなかった供述の員面等、提出していただいたんですけど」
裁判長「はい」
弁護人「あの、一遍にですね、・・・・員面と、12番のX1さんの員面ですね。これら、これらの員面に、鉛筆で書いたと思われる通し番号が書いてあるのですが、54番まで繋がっていまして」
裁判長「ええ」
弁護人「それもずーっといって、X4さんが作成した捜査報告書、これナンバー22ですが」
裁判長「ええ」
弁護人「70から始まっているんです。その間、大きく抜けていて、で、かつ、X4さんの員面だけが、供述の員面だけがなくて、その他の員面は供述として作成されているという。あの、そういう事からして、この抜けている部分にですね、X4さんの員面が、あの、あるのではないかという風に思われるし、あるいはまあその他、此処で大きく抜けているのは、あの、供述調書がまだ存在するのではと、いう風に思われるのですが。そうだとすれば、それも、あの、請求していただきたいという風に、あのー、考えておるのですが」
検察官「あのー、そういう事は全くございませんので。あのー、報告書や供述調書の番号が飛んでるのは、あのー、他の調書が」
裁判長「だから、今回答を求められている関係のものではない」
検察官「はい」
裁判長「ものが入っていると」
検察官「そうです、はい」
裁判長「だから、開示をもとめられても、意味が無い」
検察官「はい」
弁護人「あのー、ま、今まで、あのー、検察官の、あのー、この間のご意見と違いますが、一審ではこういうものが存在しないという事できて、その後提出されてきたという風に私の方は理解していまして、これは、あの、ここの部分に入っておるのはですね、別に提出求めるわけではないですけれども、どういうものが入っているのかというのを検事さんはご確認の上で、今ご発言なされたのでしょうか?」
裁判長「確認の上か、という事ですが、どうですか?」
検察官「その点に関しては、記録が原庁にございますので、あのー、これが全てであるという事で、あのー、原庁の検察官は開示しておりまして、これは間違いないという事でございます。一通において開示が遅れておりまして、これは手違いで御座いまして、これが全てです」
裁判長「確認したところ、これが全て」
検察官「はい」
裁判長「はい、はい」
弁護人「あ、あのー、此方としては対応がなんか、あまり信用おけないというか、気持ちを持っておりまして」
裁判長「そうであれば、請求してもらう。それがなければ意見を言えないのですか?」
弁護人「・・・・」
裁判長「それは、あれば、あるのであればね、また改めて出してもらう」
弁護人「はい」
裁判長「ないという事であればね」
弁護人「はい」
裁判長「それはもうない」
弁護人「はい」
裁判長「それがあるなしで、意見を言えないのですか?」
検察官「あのー、ま、あのー、端的に居まして、あのー、此方としては、あのー、出していただきたいというのが、まあ優先していただきたいんですけども」
裁判長「はい」
弁護人「ついでに」
裁判長「それはあれで」
弁護人「はい」
裁判長「そこはまあ何らかの方法で、もう一度やれば」
弁護人「はい」
裁判長「それじゃあそれはまあそれで。今請求されているものについて、意見を陳べて欲しいのですが」
弁護人「信用性については争いますけども、全部同意します」
裁判長「はい。供述経過と」
弁護人「はい」
裁判長「21番まで」
弁護人「はい、捜査報告書も含めて、という事ですから」
裁判長「21番までの供述調書以外の証拠についても、信用性で争うという趣旨ですか?」
弁護人「供述書・・・・」
裁判長「捜査経過についても」
弁護人「ああ」
裁判長「あるのですが検察官請求は41番です」
弁護人「ああ、これも同じです」
裁判長「信用性を争う」
弁護人「はい」
裁判長「では、被告人、前に出てください」
 被告人は、証言台の椅子に座る。質問に答える声は、虚ろで、消え入りそうに小さかった。

−検察官の被告人質問−
検察官「貴方は平成17年、1月28日、午後5時半過ぎごろに、Y1クリニックに侵入したわけですね」
被告人「はい」
検察官「その時、貴方は、室内に、何人ぐらいの人が、誰が居るという風に思っていましたか?」
被告人「・・・・」
弁護人「あの、検察官、あの、どの時点か、と言うのがですね、侵入する、あの、要するに、例えば、ドアを開けた時点とか、その辺を明確にしていただいた方が誤解がないと思うんですが」
検察官「あの、玄関にいったときに、玄関の鍵が開いていましたね」
被告人「はい」
検察官「その段階で、室内には、誰か人が居るという風に思いましたか」
被告人「人が居るとは思いました」
検察官「何人ぐらい人が居ると思いましたか?」
被告人「・・・・その時見積もったかどうかって事ですか?」
検察官「はい」
被告人「・・・・最低でも、三人」
検察官「根拠は、その三人という根拠は何ですか?」
被告人「外に止まっていた車の数です」
検察官「それは三台あったという事ですか?」
被告人「二台か三台あったと思います」
検察官「具体的に、誰が居るという風に思いましたか?」
被告人「院長は居るだろうと思いました」
弁護人「もうちょっと大きい声で」
裁判長「あの、もうちょっと大きい声で、はい」
被告人「はい」
検察官「院長は居ると思ったと言いましたね」
被告人「・・・・」
弁護人「ん、それから?」
裁判長「それから、他には。貴方としては、二三人居ると思った」
被告人「はい」
裁判長「一人は、院長だって思った」
被告人「はい」
裁判長「後の二人は誰ですか?」
被告人「院長一人居れば関係ないです」
検察官「例えば、院長の奥さんが居ると思いましたか?」
被告人「・・・・考えません」
検察官「玄関を入る段階で、貴方は、その三人を、約、まあ三人ぐらいと思ったという前提ですが、その三人をどうしようという風に思ったんですか?」
被告人「三人を纏めてですか?」
検察官「うん」
被告人「・・・・Y1を殺す。それだけです」
検察官「うん。しかし、その三人と、どういう順番で鉢合わせになるか解らない。ね。Y1を殺すことを諦めるしかないかもしれない」
被告人「はい」
検察官「そのときは、どうしようという風に思っていたんですか?」
被告人「・・・・(上を向き)その時ですかね・・・・」
裁判長「その時、気持ち、如何思ってたか。あとの二人と、その前に他の人と会っちゃったら、どうするつもりだったんですかという事を検察官は聞いています」
被告人「・・・・どうするつもりだったか?」
裁判長「うん、その、入った時に」
被告人「そのまま、押さえ込んだりして・・・・、情報を聞き出す。何処に居るかっていうのを・・・・聞き出す」
検察官「うん、でも、その時に、相手から顔見られますよね」
被告人「はい」
検察官「うん、顔見られて、やはり、貴方が犯人だと、いう風に、ばれないために、殺すしか無かったのではないですか?」
被告人「・・・・意味が解りません」
検察官「ん、いや、情報を聞き出すという事でしたね」
被告人「はい」
検察官「情報を聞き出した後、その相手はどうするつもりだったんですか?」
被告人「ほっときます」
検察官「ほっといても貴方の顔は見られているわけでしょう?」
被告人「関係ないです」
検察官「どうして」
被告人「(聞き取れず)そこでY1を殺せば、俺の、俺の存在目的は無くなるから、そこでもう顔を見られても関係ないんです」
検察官「では、その最初の人に、Y1先生は居ませんと言われたら、どうするつもりだったんですか?」
被告人「そこまで考えていませんでした。居なかった・・・・」
検察官「うん、ところで、貴方は、何本ぐらいのナイフと包丁とかいう、そういう凶器を持っていたんですか?」
被告人「包、丁は・・・・、持ってませんでした」
検察官「うん、では、ナイフという事でもいいですが」
被告人「細かい数」
検察官「うん」
被告人「んー、えーと、記憶がちょっと曖昧で」
検察官「うん」
被告人「大体でいいですか?」
検察官「大体で結構ですよ」
被告人「・・・・最低でも四本」
検察官「最大で?」
被告人「5,6本ー、はあったと思いますけど」
検察官「何故そんなにたくさん持っていったんですか?」
被告人「一審でそれは答えたと思います」
検察官「もう一度言ってもらえませんか?」
被告人「答えたと思います」
検察官「うん、では私のほうから聞きますが」
被告人「はい」
検察官「よく、アクション映画等にあるようにね」
被告人「はい」
検察官「敵地に乗り込んでたくさんの敵を倒す時に、たくさんの武器が必要だから、それでたくさん持って行ったという事ではなかったんですか?」
被告人「・・・・違います」
検察官「Y1・・・・、目的であるY1先生に着く為に、邪魔になる敵は全部倒さなくてはならないから、それでたくさんの武器をもって行ったという事ではなかったんですか!?」
被告人「目的はY1・・・・切り裂くためには一本のナイフでは足りないから持って行っただけです」
検察官「前日行った時は何本ぐらい持っていったんですか!?」
被告人「それより若干少なかったと思います」
検察官「うん。前日は本数が足りなかったから、他の患者もいたし、実行できないと思ったんじゃないですか!?」
被告人「他の患者は関係ないです」
検察官「それで、相手の数が多かったら、倒さなければならないので、武器の本数を増やして、たくさん持って、それで翌日乗り込んだという事ではなかったんですか!?」
被告人「関係ありません」
検察官「それから、殺害方法についても、Y1先生は、ま、なぶり殺しにするにしても、それ以外の人はあっさり倒して早くY1先生の下に行き着くと、いう風な殺害方法を、殺害方法を分けて考えていたんではないんですか!」
被告人「最初から、Y1以外は考えていません」
検察官「ですから、Y1先生に行き着く前に、他の人が居たらどうするつもりだったんですか!?」
被告人「さっき言った通り、情報を聞き出せばそれでいい。あとは放って置くつもりでした」
検察官「しかし貴方は、凶器のナイフを、隠していますよね!捕まりたくなかったんですよね!」
被告人「・・・・意味が解りません」
検察官「いえ、貴方は、実際に、被害者両名を、殺した、ナイフを、隠してしまったでしょう!?」
被告人「・・・・二人を殺したナイフですか」
検察官「うん!」
被告人「隠したというか・・・・」
検察官「罪障隠滅をしたんじゃないですか!?」
被告人「確かに、現場では洗ったし、家に帰ってから、ナイフ二本を捨てた」
検察官「貴方は捕まりたくなかったから、やはり相手を、顔を見られた相手を殺すしかなかったんじゃないんですか!?」
被告人「・・・・(首をかしげる)」
検察官「えー、答えはありますか」
被告人「よく解りません」
検察官「じゃあ、次の質問に行きます。貴方は、結果的にY1先生がおらず、被害者の女性二名を取り押さえた時に、この二人を殺してお金を奪おうという風に思ったんじゃないですか!?」
被告人「捕まえたときにですか?」
検察官「うん」
被告人「・・・・捕まえたときは考えていません。盗ろうとか考える状況じゃありません。・・・・盗ろうかとか、全然考えてないです。精一杯です」
検察官「うん。ところで貴方は、平成17年の1月初め頃の段階で、殆ど所持金がなかったんじゃないんですか?」
被告人「銀行にですか?」
検察官「うん、全てあわせて。使えるお金」
被告人「そんな事はありません」
検察官「家賃を払えない状態だったんじゃないんですか?」
被告人「前の月までは払ってました」
検察官「うん、其の月は何で払わなかったの?」
被告人「もうすぐ死ぬから如何でも良かった」
検察官「いや、その事とね、大家に対する家賃を払うっていう事は違うんじゃないですか?」
被告人「死んだ後の事だから、心配しなくても良いと思った」
検察官「貴方は、結局、ま、えー、Y1クリニックの中から、何のお金かは別にして、幾らぐらいお金を盗ったんですか?」
被告人「・・・・数えた額ってことですか?」
検察官「うん、まあ、はい」
被告人「いや、数えなかったので、解りません」
検察官「だって貴方は、その後、500円玉を洗って取っておいたり、けっこう、金額とかに執着していたんではないんですか!?」
被告人「洗いはしたけども、いくらあるか、とりあえず換算はしませんでした」
検察官「検察官が起訴してる金額とね、当時貴方が持っていたっていう3万円と合わせてもね、結果として貴方が犯行後に使ったり、持っていた金額、10数万円なんだけれども、計算合わないんですよ。ですから、貴方は6万6千円より、少なくとも沢山とったと、いうことではなかったんですか!?」
被告人「・・・・金額は、わかりません」
検察官「うーん、貴方の主張によると、二人目の被害者を殺した後、強盗に見せかけるためにお金を取ったということなんですか」
被告人「はい」
検察官「うーん、強盗に見せかけるためだったら、物色だけして、1円も取らなくてもよかったんではないですか!何故盗ったんですか!?」
被告人「ま、えっと、ある程度盗らないと強盗だと思われないからです」
検察官「だって、二人とも亡くなるわけだから、いくら盗られたかなんて解らないんじゃないですか!?」
被告人「あの時そこまで細かく考えながら、動いて無かったです」
検察官「単純にね、お金が欲しかったから盗ったって事だけじゃなかったんですか!?」
被告人「違います」
検察官「だったらね、殺人のね、犯行後に、何で堰を切ったようにいろんなものを買ったり、あるいは、その後、Y1殺害に使う道具を買ったりしたんですか!」
被告人「あちこちに顔を出しとかないと、ビデオに自分の姿を映しておくために、買いました」
検察官「しかし、手袋やガムテープ、その後の犯行に使うための手袋やガムテープを買ったんでしょ!」
被告人「はい」
検察官「そういうお金が欲しかったんじゃないんですか!」
被告人「・・・・」
検察官「強盗に見せかけるとかいうことじゃなくて、そういうお金が欲しかったんじゃないんですか!」
被告人「ガムテープは、それまで、次っていうのを予測していなかったので、買う必要があっただけです。・・・・手袋もそうです。(聞き取れず)新しいのを買う必要があったんです。そういうお金が欲しかった云々というのは関係ありません」
検察官「ちょっと話し変わりますけども、今回はY1先生はいなかったと。次に押し込むまでの生活費はどうするつもりだったんですか?」
被告人「え?」
検察官「いや、必ずY1先生を襲うわけでしょ?それまで貴方の生活をつながなければならないでしょ?」
被告人「28日の時点で、もう次ってのは考えていなかったんですけど。そこで殺して終わりと、それで良いと思っていた」
検察官「Y1先生殺害計画はどうなったんですか!?」
被告人「居なかった後の事ですか?」
検察官「はい」
被告人「あまり考えが回ってませんでした」
検察官「いえいえ、絶対もう一度襲おうと思ったんじゃないんですか」
被告人「それはありません」
検察官「うん、それまでどうやって生活をつなぐつもりだったの?」
被告人「特に考えてません。いなかった時点でもはや予想外で。28日の時点で殺せなかった段階で、もう計画からずれて、いたので。計画が追いつけなくなった」
検察官「それは、結局失敗してしまったから、後からそんなこと言ってるんじゃないの!?そのときはだから、二日続けて襲いに行ったわけでしょ!?」
被告人「そうですね」
検察官「ナイフの本数も増やして、翌日、必ずY1先生を殺そうと襲いにいったわけでしょ!?」
被告人「はい」
検察官「だから、結局、計画がずれたっていうのは後からの弁解じゃないの!?」
被告人「その時点で、どのようにするか、如何するかっていうのは、殺すっていう基本的な方針は決まっているけど、具体的にどうしようっていうのは、場当たり的にしか決めてませんでした」
検察官「最後にもう一回だけ聞くけれども、二人の被害者を取り押さえた時に、強盗に見せかけるっていうのも一部にあったかもしれないけども、お金を取って生活をつなごうと思って、お金が必要だと思って、お金を取ってやろうと思って、二人を殺そうとしたのではなかったんですか!?」
被告人「金が欲しいからやったかどうかって事ですか?」
検察官「うん、その意味もあって。勿論口封じという意味もあってですが、お金が欲しかったという事ではなかったんですか、という質問です」
被告人「割に合わないと思います。金が欲しかったら、最初から店やめないで、大人しく普通に働いています」
検察官「以上です」
裁判長「この機会に聞いておきたいことは」

−裁判官の被告人質問 −
裁判官「ではあの、一点だけ聞きたいことがあるんですけども、あのー、現場に、ナイフが、あー、残されて、いたわけですけどね、それは、あー、貴方がY1医師に当てたメッセージとしてあえて残したというものと、という事でいいですか」
被告人「はい」
裁判官「どんなメッセージが伝わると考えて置いた訳ですか?」
被告人「(聞き取れず)その時頭に血が上ってたってのもあるんで、なんていうのか、(聞き取れず)ゲリラっぽく、次は本当に殺すっていう(聞き取れず)」
裁判官「あの、そういう目的でナイフ残すという事と、その、流しの強盗に装おうというのはどういう関係にあるのかちょっと解らないんだけど」
被告人「(聞き取れず)自分にも冷静に判断できていなかったので」
裁判長の被告人質問
裁判長「貴方からすると、Y1医師がいないことがわかって、顔を見られてしまったから二人を殺した、そういうことになるんですか」
被告人「はい」
裁判長「それで、その後、やっぱりY1医師を殺害したいから、解ると困ると」
被告人「はい」
裁判長「それ以外にありませんか?」
被告人「そのとき、居ないって言われて、立てこもるか、あるいは二人を脅して金を盗むか、二つに一つ。色々考えたけど、(聞き取れず)、もう顔見られちゃってる、殺すしかない。最初から、戻ることを考えていなかったので、顔とかもぜんぜん隠してなかったし」
 裁判長、何かいうが聞き取れず。
被告人「はい」
裁判長「確実にY1医師がいると思ってた」
被告人「はい」
裁判長「それだったら、ナイフ見せてなければ帰れる事もあるわけだよね」
被告人「そうですね」
裁判長「決めていって、ナイフ持って入った」
被告人「はい」
裁判長「えっと、じゃ、いいです、終わりました」
 被告人は、のっそりとした動作で立ち上がり、傍聴席のほうを見渡して、被告席に座った。

裁判長「弁護人の方は、他に何かありますか?検察官の方は以上で」
検察官「はい、ありません」
裁判長「弁護人は」
弁護人「情状鑑定を行っていただきたい」
裁判長「他に何か、弁護人の方で」
弁護人「情状立証は考えておりません」
 その後、4月24日に弁論の期日を指定し、11時5分に公判は終わった。

 被告人は、まるで抜け殻のように見えた。退廷時、遺族らしき人々のほうに、かすかに頭を下げていた。
 検察官は、異様なまでに余裕をなくしていた。

 4月24日に弁論は行われた。そして、6月4日に、一審判決を破棄したうえで無期懲役の判決が改めて下された。しかし、検察は無期懲役を不服として上告した。被告人は死を覚悟しているように思えたが、上告をどのように受け止めたのだろうか。

事件概要  A被告は、2005年1月28日、静岡県静岡市の健康用品販売店に、復讐心から店の経営者の夫を殺害しようと侵入して、店にいた女性店員2名を殺害したとされる。
報告者 相馬さん


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