裁判所・部 東京高等裁判所・第六刑事部
事件番号 平成18年(う)第1753号
事件名 A2、A1:詐欺
A3、A4、A5、A6、A7:詐欺、詐欺未遂
被告名 A2、A3、A4、A5、A6、A7、A1
担当判事 池田修(裁判長)、吉井隆平(右陪席)、坂口裕俊(左陪席)
その他 書記官:佐藤明子
検察官:遠藤みどり
日付 2006.12.19 内容 被告人質問

 12月19日午後から、東京高裁(池田修裁判長)でいわゆるオレオレ詐欺の事案で、詐欺などの罪に問われた7被告の控訴審の公判が102号大法廷で行われた。
 被告人が7名ということもあり、戒護の刑務官は13人、弁護人も多くいた。被告人7名はいずれも若い今風の男性で髪を短くしている被告が多い。肌が黒く、アウトドア派といった感じである。
 本件の争点は他の詐欺グループの金額がこのグループの被害額に上乗せされているという点で、警察の捜査に問題があったと被告側は主張している。被告人質問で被告人らは当初オレオレ詐欺→架空請求詐欺へと形態を移行していったことが分かった。

裁判長「それでは開廷します。前回弁護人の請求のあった証人尋問は全て撤回ということでいいですか。また前回検察官から請求のあった書証について弁護人の意見はどうですか」
A1被告弁護人「全部同意します」
A7被告弁護人 「全部同意します」
A6被告弁護人「全部同意します」
A5被告弁護人「全部同意します」
A4被告弁護人「全部同意します」
A3被告弁護人「全部同意します」
A2被告弁護人「全部同意します」
裁判長「それでは全て採用して取り調べることにします。本日は前回に引き続いて事実関係での質問を行いますから、A4被告人は前へ」

−検察官によるA4被告への質問−
検察官「あなたはオレオレ詐欺で横井という偽名を使っていたのですか。控訴趣意書のなかで頻繁に使用していたのは横井とありますが」
被告人「はい」
検察官「あなた以外の仲間で横井と使っていた者はいますか」
被告人「記憶にないです」
検察官「4件についてあなたは争っていますが、捜査段階でもあなたはやっていないと言っていたのですか」
被告人「その時点で4件は関与していません。4件は私のなかで記憶にないです。やっていない事件でも私がやったとされています。それに対して『他の人間も認めているから』ということで半ばあきらめるしかないかと思いました」
検察官「そのことを弁護人には言ったのですか」
被告人「婉曲的にはあきらめるしかないと言われました」
検察官「そうするとなぜ控訴審でそういう主張をするようになったのですか」
被告人「やってないものはやってないと改めて主張したいからです」
検察官「それはなぜですか」
被告人「周りの人間が認めているのに裁判で争っても、情状が悪くなるだけと言われて、右も左も分からない状態だったのであきらめるしかないのかなと思いました」

−A4被告人に対する事実関係での質問−
弁護人「あなたは控訴趣意書を作るとき、いろいろ思い出して完成させましたね。男性被害者でオレオレ詐欺に遭った被害者、aさんとbさんが横井という名前で被害を受けたと証言している。ところがあなたの話では男性の被害者はいないと」
 A4被告によると、男性の被害者がいない3点の理由があるという。
 詐欺の内容の文言マニュアルは女性が対象者で、その内容の詐欺になってから1週間ぐらいしか経っていないから応用を効かすことなく、マニュアルに沿って被害者に連絡していた。
 自分の記憶の合致している部分つまり当該期間中の犯行については現に認めている。
 男性の被害者がいれば思い出しやすい、その2件はしかも同日中に行われている、それなのに被害者が男性であったという思い出がないのは不自然である。
弁護人「お書きになった陳述書で、今の気持ちはそれで変わらないね」
被告人「はい、間違いないです」
左陪席「あなたはグループのなかで、騙しの電話をかけていましたが、他のグループから口座を貸してくれという話が出たことはありますか」
被告人「全くないです」

−A3被告人に対する事実関係での被告人質問−
検察官「あなたが担当した役割は被害者に電話をかける役で木村と名乗っていましたね。他にも吉田と名乗っていませんでしたか」
被告人「記憶にないです。使った使わないとか分からない。他の人間が自分のでも使った可能性がある」
検察官「青木はどうですか」
被告人「記憶にないです」
検察官「あなたは7件について違うと言っています」
被告人「はい」
検察官「7件は実行していないと」
被告人「はい」
検察官「7件はやっていないというのは一審の弁護人には話したのですか」
被告人「同じ部屋で(詐欺を)やっているので、違うという話は出なかったです」
検察官「なぜ控訴審でそういう主張をするのですか」
被告人「後々他のグループでやっているのも流れている、金額に誤差があって被っているということを聞きました。聞いたのはA6君から手紙で聞きました」
裁判長「弁護人の方は」
弁護人「とくにありません」
左陪席「あなたは他のグループに口座を貸すという連絡をしたことはありますか」
被告人「ありません」

−A2被告人に対する事実関係での被告人質問−
検察官「あなたは電話をかける役だったのですね」
被告人「携帯を買いに行ったりしました。Y1、Y2を使いました」
検察官「Y3と使ったことはないですか」
被告人「ないです」
検察官「仲間のなかでY3と使った者はいますか」
被告人「ないです」
検察官「あなたは弁護士を名乗って被害者を騙したことがありますね」
被告人「あります」
検察官「あなたは3件は自分はやっていないと話している。自分たちのが被っていると話しましたか」
被告人「その時点で話をしても、弁護士もそういう話はよくあることだと取り合わなかった」
検察官「ではなぜ控訴審で主張するようになったのですか」
被告人「初公判が始まって、接見禁止が解けて、みんなと連絡を取るとやっぱり被っていると。警察は『刑には関係ない』と言っていたし、調書が出来上がっている状態で自分一人が否認するのは難しいと思いました」
検察官「なぜ一審で話さなかったのですか」
被告人「それは(一審の)最後のほうです。弁護士に話しても相手にしてくれませんでした」
左陪席「あなたは口座の貸し借りについて連絡したことはありますか」
被告人「個人的に他のグループと電話したことはないです」

 ここで事実関係での被告人質問(控訴審での事実調べ)が終了、開廷表の被告人表記順に情状関係での被告人質問に移る。

−A1被告に対する情状関係での質問−
弁護人「情状の話をするまでに、あなたは情状証人の申請を取り下げた、つまりY4氏を尋問しないということだけども、これはあなたの主張を裏付けるものもあってこっちに有利な面もあるんだけどね」
被告人「Y4さんに1000万こっちに被っていると、だけど利害に関わることは自分の刑に関わることなので、迷っている人に無理矢理法廷立ってもらうのは自分の気持ちとしては嫌です」
弁護人「彼は悩んでいて、本当は4000万じゃないかと問い詰めるのはしたくないと。刑務所にいて返事を書けない、そんな人を無理矢理呼んでくるのは忍びない?」
被告人「そういうことです」
弁護人「証人尋問はできなかったけど、控訴趣意書や言ってきたことに嘘偽りはないですか」
被告人「はい」
弁護人「どんな気持ちで控訴したのですか」
被告人「警察の捜査が杜撰であること、起訴の金額が間違っていることです。刑の重い軽いで控訴したのではない、それだけは分かってほしいです」
弁護人「取り調べの段階で被っていることに対し、刑事が『刑は変わらない』と言うなどデタラメな捜査が行われたと、そういう気持ちが強いのですか」
被告人「はい」
弁護人「他の(詐欺)グループに関しては、すっきり表も出来ている」
被告人「あまりにも綺麗過ぎ、しくんでいるとしか思えません」
弁護人「一つの偽名をみんなで使っているのはありえないと」
被告人「それは合っています」
弁護人「つまりウチのグループに断定できない偽名が被っているというのですか」
被告人「はい」
弁護人「数ヶ月間あなたと接してきて分かったことだけど、あなたは卑怯なこととか嫌う人だよね」
被告人「はい」
弁護人「姑息な方法でお金を取るとか、性格的にそういうの絶対許さないよね」
被告人「はい」
弁護人「あなたの信念と、してきたこととは矛盾すると思うんだけど」
被告人「お金に目がくらんだとしか言いようがないです」
弁護人「次々にお金が入ってくるのに暴走してしまったと」
被告人「はい」
弁護人「被害者についてどう思いますか」
被告人「口で言うのは簡単なんですけど、申し訳ないです。僕が率先して配下の者にやらせていたので、僕が一番悪いです」
 またA1被告は配下のA2被告の求刑が重過ぎるとも証言した。
弁護人「A2被告だけじゃなく、ここにいる後輩についてはどんな思いでいますか」
被告人「配下の者と僕は2年しか求刑が違わない、A2君は僕が誘わなければ、子どものこともあり、こんなことにはならなかった」
弁護人「今日ここに来ている、あなたのことを心配して面会にも来ている両親についてはどうですか」
被告人「僕としては真面目にやって被害弁償とかしていきたいです。ガキの頃捕まって迷惑をかけたときも見捨てないでいてくれました。真面目に働いて姿勢で見せるしかないと思います」
弁護人「いずれにしてもどんな刑になると思いますか」
被告人「どっちに転んでも長い期間刑務所に行くのは間違いないですから」
弁護人「そのあとどんなことをしようと思いますか」
被告人「車の整備士などの資格が(刑務所の)なかで取れると聞きました。普通に働いただけではとても返せる金額でないので、経済の勉強をして投資とかしてみたいです」
弁護人「裏の道とか卑怯なことをせず、正々堂々とお金を稼ぎたいと」
被告人「はい」
弁護人「ここにいる後輩達や仲間とは今後どうしますか」
被告人「僕から配下の者に近寄ることはないので、安心してもらいたいです」
弁護人「自分できっちり力をつけていくと」
被告人「はい」
弁護人「最後に言っておきたいことはありますか」
被告人「警察が杜撰なやり方だったのは間違いないです」
裁判長「検察官、何か」
検察官「ございません」
左陪席「あなたが一連の犯行で受け取った報酬額は1億円近くというご認識でいいですか」
被告人「捜査の段階では(金額の件は)1回もやっていなくて、上納とか余った部分がお前だろと言われて、そこから5〜6000万、5000万前後と言わしてもらいました」
左陪席「騙し取った金額の3割とは?」
被告人「上納とか、割合を出して残りはお前だろと言われました」
左陪席「あなたに3割という認識があるわけではないのですか」
被告人「全くないです」
左陪席「使っていない口座を他のグループから貸してくれと言われたら、どうしていましたか」
被告人「全然取れていなかったら、ペースが悪いので貸しますが、ケースバイケースです」
左陪席「午前中の早い時期だったらというのはありますか」
被告人「そういう取り決めがあるわけではないです」
左陪席「銀行の口座で地方銀行だったら(振込み額が)200万円とかいうのは分かりますか」
被告人「言われれば」
左陪席「信用金庫だったら200万円になるのですか」
被告人「ちょっと分からないです」
 裁判官からも質問が終わり、A1被告は被告人席に戻ってA7被告が証言台に立つ。

−A7被告に対する情状関係での質問−
弁護人「あなたは現場の監督者だったのですか。オレオレ詐欺では最初から」
被告人「事務所にA1さんがいて、自分とA6との間に意識の差はなかったです。名目として番頭としてやっていました」
弁護人「なぜA1さんはあなたに番頭をするようにしたのですか」
被告人「7月のホテルで(詐欺を)やったとき、A6が嘘をついたからです」
弁護人「その嘘とは?」
被告人「擬音で使うCDを持ってきたとか持ってきていないかとかです」
弁護人「そうするとあなたが番頭になったのは、A6さんが外されたからですか」
被告人「自分がやるのは仕事としては雑なんで・・・」
弁護人「A1はあなたを信頼していた。それはどうしてですか」
被告人「よく目をかけてもらいたかったし、裏切るようなことはしたくなかったです。僕は架空請求の文言とか考えるのが楽しくて・・いや得意だったんで」
 またA7被告は吉川の家に行ったときは、自分と吉川との差は大きかったと証言した。
弁護人「現場の監督者として具体的にしていたことは何ですか」
被告人「周りが不正をしないかとか、オレオレ詐欺では被害者の泣きの担当をやっていたので、データの管理とかです」
弁護人「他の人間の不正を監視するとはどういうことですか」
被告人「例えば自分が隠し持っている口座に入れないようにとかです。周りも見ているのだろうが、自分がやってやると」
弁護人「精神的に圧迫を加えていたとかないですか」
被告人「圧力や暴力的な行為はないです。「〜してくれる?」とか頼むのも嫌だったです」
弁護人「怠けている、とかA1に言われたことはないですか」
被告人「寝てるとかしてたら怒られました」
弁護人「具体的に言うと、A1に詐欺をしていなかったら怒られたのですか」
被告人「はい」
弁護人「他の被告人に対してはどう思いますか」
被告人「A5君は高校時代からの親友でした。こういう詐欺をやるための友達ではありません」
弁護人「他の被告人に対して、あなたが怒ったことはありますか」
被告人「酒の場で、『もうちょっとやれよ』とかはあったかもしれないです」
弁護人「現場監督者として報酬の点で有利だったことはありますか」
被告人「自分は(詐欺を)実行しないで貰える、そういうのはありました」
弁護人「実行犯は報酬に応じてということですか」
被告人「はい」
弁護人「報酬はどうでしたか」
被告人「オレオレ詐欺から架空請求詐欺になりましたが、架空請求のときは大きかったです」
弁護人「他の被告人ではできない、あなたにしかできないことはありましたか」
被告人「信用関係ですね」
弁護人「A1が一時期抜けたとき、あなたが責任者になったのですか」
被告人「はい。A1さんは詐欺から完全に退いたと、表の仕事をするからということでした。だけどやり方とか分からないし、金銭面とかでも相談したら、とどまったと」
弁護人「A1はどの程度寄ったのですか」
被告人「そのときはA1さんに借金があるだけです」
弁護人「騙せた金額は違っていたのですか」
被告人「覚えていないです」
弁護人「懲役11年という刑について、軽いのか重いのかどう思いますか」
被告人「比べるものが何なのか?と。1人で考えれば、実行した件数とか分からないです、私は実行していないので」
弁護人「他の被告人はA1を除いてあなたより軽い刑になっている。特に自分の責任が重いとかお考えになるのですか」
被告人「う〜ん・・・」
弁護人「平等だと思うのか、特に重い責任を負うべきなのかということです」
被告人「刑自体はもともと重いと思っているが、周りと比べては分からないです」
裁判長「検察官、何か」
被告人「ございません」
左陪席「使う口座によって振り込める金額の基準を決めていたのですか」
被告人「信用金庫は200万円、都市銀行は500万円(途中でUFJ銀行は200万になった)、郵便貯金は1000万円(通帳があれば無制限で下ろせる)です。架空請求の頃から、銀行の限度額が変わりました」
左陪席「口座が手元にないとき、他のグループから口座を貸してくれとか言われたことはありますか」
被告人「あんまり記憶にないです。(口座は)5個くらいは常に手元にあったんじゃないですか」
左陪席「(口座が)1個しかないという記憶自体ないのですか」
被告人「全くなくなった、次(口座が)入るのがいつか分からないというのはあったことはあったかも」
 ここでA7被告に対する被告人質問が終了、A6被告が証言台に立つ。

−A6被告に対する情状関係での質問−
弁護人「私のほうから質問をします。あなたは上申書や反省文をもう提出して、裁判官も読んでいると思うんだけど、1審判決を受けたときの心情などを簡単に言ってもらえますか」
被告人「本当に申し訳ありません。これだけ重い刑が来ることをしてしまったと思っています」
弁護人「被害者にはどう思いますか」
被告人「誠に申し訳ないです。被害者への償いとしては、お金を返すことで許してもらうしかないです」
弁護人「控訴審に入ってからも弁償を検討しているのですね」
被告人「父親にも電話したのですが、いろいろあって・・・」
弁護人「オレオレ詐欺で受け取ったお金はどうしましたか」
被告人「全部使ってしまいました」
弁護人「分け前はどのくらいあったのですか」
被告人「1500万円くらいと記憶しています。調子に乗って時計とかブランド品を買ってしまいました。残った金額は200万円程度でした」
弁護人「分け前分も返していないし、被害金額にも及んでいないことは明らかですね。それについてはどう思いますか」
被告人「真面目なことをやって、返していきたいです」
弁護人「刑務所を出てから実家に戻って、つつましい生活をしながらお金を貯めると」
被告人「はい」
弁護人「2度と犯罪行為には手を染めないという気持ちを固めているのですね」
被告人「はい」
 ここでA6被告に対する被告人質問が終了、A5被告が証言台に立つ。

−A5被告に対する情状関係での質問−
弁護人「被告人は一審の判決を受けて、これまで詳細に渡って上申書を書きましたね」
被告人「はい」
弁護人「これを必ず実行するということでいいですか」
被告人「はい」
弁護人「お母さんは若年性の病気で不幸な家庭なんだけど、お父さんの監督で更生するということで間違いないですね」
被告人「はい」
弁護人「君には兄弟がいるけど、兄弟はあなたにどう接していますか」
被告人「先日の手紙や面会でも早く帰って来いと言っています」
弁護人「お父さんはどうですか」
被告人「早く帰って来いと。自分も真面目に生活して一日でも早く出たいと思っています」
弁護人「友達が真面目に商売をやっているので、そこで働きたいとかそういう真面目に働くということでいいですか」
被告人「はい」
弁護人「これだけのことをやって今どう思っていますか」
被告人「大変申し訳ないです、言葉では言い表せない。僕のことを心配して友達とかが手紙をくれている、そういう気持ちを利用してしまったと」
弁護人「卑劣と言われてもしょうがないのでは」
被告人「はい」
弁護人「今後犯罪行為は一切やらないということでいいですか」
被告人「はい」
弁護人「裁判官に嘆願したいことの要点は何ですか」
被告人「控訴で事実を明らかにしようと、その点や今まで話したことをしっかり考慮してほしいです」
弁護人「あとは?」
被告人「出所して社会復帰を視野に入れて努力しているので、寛大な処置をお願いします」
 ここでA5被告に対する被告人質問が終了、A4被告が証言台に立つ。

−A4被告に対する情状関係での質問−
弁護人「正面向いて答えてくださいね」
被告人「はい」
弁護人「上申書にあなたは反省のこととかいろいろ書いたね」
被告人「はい」
弁護人「控訴審で母親が監督するということで、証人として出廷してほしかったのですが、あなたの母親はパニック障害という病気を持っているのですか」
被告人「はい」
弁護人「それで出廷はできなかった」
被告人「はい」
弁護人「母親は拘置所に面会には来てくれるのですか」
被告人「数えたらキリがないくらい、週に1回とか頻繁に」
弁護人「母親と離婚した父親も面会に来てくれるのですか」
被告人「はい」
弁護人「社会復帰するということで、どんな相談をしていますか」
被告人「父親の下で働かせてもらうと。甘えるわけではないけど、父親の下で一生懸命やるということです」
弁護人「父親は何をやっているのですか」
被告人「建築現場の監督をやっています」
弁護人「被害者の方にはどんな気持ちですか」
被告人「言っても言い表せない。裁判所に定められた刑に服して、そのなかで務め上げて、金銭面で弁償していきたいです。精神的被害に関しては、許してくれと言って許してもらう事件ではないのでしっかりやっていきたい」
 ここでA4被告に対する被告人質問が終了、A3被告が証言台に立つ。

−A3被告に対する情状関係での質問−
弁護人「それでは弁護人のシマザキから。控訴審ではとくに情状関係での反省文は書いていないけど、とくに書く必要がないからとかそんなんじゃないよね、高裁では口頭でしっかり話したいと」
被告人「はい」
弁護人「量刑について率直な心境を聞かせてもらえますか」
被告人「求刑→判決ときて、求刑だけでも言葉になんないです」
弁護人「判決に関しては懲役8年という判決を聞いたね」
被告人「自分では判断することはできないが、弁護人に聞いたら『重いんじゃないの』と言っていました。卑劣なことをやったんだなあとは思う」
弁護人「法的評価はどれくらいかということなんだけど、8年という期間をどう考えますか」
被告人「自分が8年前のときとか振り返ることしかできない、それぐらいの期間を刑に勤めるんだなあと思います」
弁護人「控訴してから10ヶ月くらいの期間が過ぎたけど、どんなことを考えましたか」
被告人「事件を振り返ると、被害者に常に監視されているというような気持ちです。こんな(拘置所)生活で、自由に出来るわけじゃないが、今の生活を心がけて塵も積もればじゃなけど、真面目にやっていきたいです」
弁護人「振り込め詐欺が悪いことだとは分かっていましたね」
被告人「はい」
弁護人「途中でやめないといけないとか思ったことはありますか」
被告人「あります」
弁護人「なぜ止められなかったのですか」
被告人「思っていても行動できなかったです」
弁護人「お金が右から左に流れるように入ってきて、自分がやったことの対価をどう思いますか」
被告人「毎日やっていたので、そのときの感覚がおかしかったです」
弁護人「おかしかったのは理解できますか」
被告人「はい」
弁護人「あなたを誘ったA1さんについてはどう思いますか」
被告人「罪を償って真っ当に生きてほしい」
弁護人「自分は(刑は)軽いはずだとかそういう思いはありますか」
被告人「ないです」
弁護人「被害者の方にはどんな気持ちですか」
被告人「この事件に対してどう立ち直るかということで申し訳ないの一言です。出所してから少しずつお金を返していきたいです。直接会って被害者と話すことができないですが、出てから一生懸命勤めて働くということしかできません」
弁護人「被害弁償についてはあなたが拠出したお金は全てと」
被告人「はい」
弁護人「今では弁償できないので、社会復帰後も弁償していくと」
被告人「はい」
弁護人「ある程度の期間服役しても、仕事をしていかなければならないんだけど、どんな仕事をしようと思いますか」
被告人「ずっとスポーツをやっていたので、選手の怪我とか苦しみとかが理解できるので、そういう仕事ですね」
弁護人「私以外に面会に来てくれる方はいますか」
被告人「友達、姉、両親です」
弁護人「そのことをどう思いますか」
被告人「両親には感謝と共に済まなかったという気持ちです」
弁護人「社会復帰後、共犯者とも付き合いはどうしますか」
被告人「けじめとして接してはいけないのかなと思っています」
弁護人「悪いことにもう手を染めないという決意はありますか」
被告人「はい」
弁護人「前々回述べたことに偽りはありませんね」
被告人「はい」
弁護人「裁判官に対して最後の機会ですが、話すことはありますか」
被告人「警察の話は抜きにしても、この場に来ているか分かりませんが、被害者の方=裁判所と思って言います、すみませんでした!」
 A3被告は裁判長に向かって頭を下げて、被告人質問は終了、A2被告が証言台に立つ。

−A2被告に対する情状関係での質問−
弁護人「この上申書の内容は率直に書かれたものですね。求刑が懲役10年、判決が懲役8年というのは率直にどう思いましたか」
被告人「判決を聞いて自分のやったことはデカいと、被害者も多い。しかし求刑がA1さんが懲役13年、A7君が懲役12年、以下が懲役10年と以下にまとめられたことに関しては厳し過ぎると思いました」
弁護人「被害総額が2億8000万で、被っている分もあるんだろうけど、いくらぐらい返還したかというと、全員分合わせて2115万と、一割にも満たない金額ですね。1審で150万円払ったんだけど、どうやって捻出したのですか」
被告人「親が借りました、できる限りで用意しました」
弁護人「この金額はA3君に続いて弁償割合はあるけど、今の段階ではどうしようもないと、そう言わざるをえない」
被告人「はい」
弁護人「お金を返せば済む問題ですか」
被告人「いいえ」
弁護人「被害者にしてみればお金は取られるわ、家族に合わせる顔がないわ、ダブルパンチだよね。罪悪感はあったのですか」
被告人「麻痺していました、当時は。やっているうちに罪悪感が強まりましたが、なかなか踏ん切りがつかなかったです」
弁護人「あなたは事件が発覚する前に(詐欺を)やめてるよね」
被告人「はい。子どもの出産費用を稼ぎたいというのがあり、1/17に長男が帝王切開で産まれた、やめるきっかけはそれです」
弁護人「子どもの出産というきっかけによってやめたと」
被告人「はい」
弁護人「逮捕から20ヶ月、1審判決から9ヶ月が過ぎたんだけど、どういう気持ちですか」
被告人「言葉では言い表せない、申し訳ないです。自分の家族が被害者と同じ立場だったら、許せないです」
弁護人「あなたはいろいろな人から嘆願書が出されていますね」
被告人「被害者にも大きな迷惑をかけただけじゃなく、家族や友達にも本当に迷惑をかけている、申し訳ないです。被害者だけじゃなく、関係している人間全てに申し訳ないと言いたいです」
弁護人「友達やみんなは『なんであなたが』『信じられない』と言っている。そういう見捨てない気持ちを大切にしていくと」
被告人「はい」
弁護人「裁判にも来ているお母さんがいますね」
被告人「はい」
弁護人「(共犯者は)みんな独身で、あなただけ妻帯者で子どももいましたね」
被告人「自業自得だと思っています。目先の金に目がくらんで、真っ当にお金を稼ぐことを忘れていました」
弁護人「あなたは働くことが嫌なわけではないよね」
被告人「仕事が嫌なわけではないです」
弁護人「出産費用は分かるけど、お金に対してどういう感じだったのですか」
被告人「遊ぶ金欲しさがありました。自分に対して甘えている気持ちでした」
弁護人「言いにくいかもしれないけど、このグループとの今後の付き合いはどうしますか」
被告人「普通に考えれば断ち切るというのが出るだろうけど、協力し合える部分は協力していきたい。真っ当な部分は協力すると」
弁護人「この真っ当なって言うのは大前提だよね」
被告人「1/13にA1君にやめるという話をして、A1君も車関係の仕事をするからやめると言っていました」
弁護人「8年も、ある程度の期間があると思うんだけどどうですか」
被告人「大丈夫です」
弁護人「そうすることによって別れた奥さんも認めてくれると」
被告人「はい。子どもを失ったというのはデカいです」
弁護人「最後に言いたいことはありますか」
被告人「申し訳ないと思っています。全員に関して寛大な処置をお願いします」

 これで控訴審での事実調べが全て終了し、池田裁判長は控訴審判決を1月23日午前11時から言い渡すことを決めた。
 被告人7名は順次法廷から去っていった。

 閉廷後、シマザキ弁護人は被告関係者に
「左陪席の人は関心を持って質問をしていたが、裁判長からの質問がなかった。裁判長としては公訴を打ち切る意向だ」(※池田裁判長は検事出身で東京高裁でも被告人に厳しい判断を下す傾向がある。市原ファミレス射殺事件、豊島母娘強殺事件などを過去に担当)
「他のグループはきれいに表が出来上がっている。警察は余った金額をこっち(のグループ)に投げている」
「その理由はこのグループは7人と他のグループに比べて人数が多い。証拠もない」
「他のグループのが流れているのは間違いない、無実を晴らす証拠は全部すぐにシュレッダーにかけてしまっている」
などと話していた。

事件概要  各被告は共犯と共に、2004年5月から12月にかけて、振り込め詐欺によって110人から延べ115回、総額2億7650万円を詐取したとされる。
報告者 insectさん


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