裁判所・部 東京高等裁判所・第五刑事部
事件番号 平成18年(う)第2号
事件名 住居侵入、強盗致傷、強制わいせつ、強盗強姦、強盗、窃盗、詐欺、窃盗未遂
被告名
担当判事 高橋省吾(裁判長)服部悟(右陪席)中島真一郎(左陪席)
その他 書記官:橋本、古林
日付 2006.9.25 内容 初公判

 9月25日2時30分から連続強盗強姦事件のA被告の控訴審初公判が東京高裁(高橋省吾裁判長)であった。
 刑務官2人に連れられて入廷したA被告は色白でやや小太り、ノーネクタイに黒のスーツ姿だった。礼儀正しい所作だった。

廷吏「A(こまつしろ・ひろふみ)被告人に対する強盗致傷等被告事件につき開廷します」
裁判長「それでは被告は前に立って。名前は何と言いますか」
被告人「Aと申します」
裁判長「生年月日は」
被告人「昭和52年6月30日です」
裁判長「本籍地は」
被告人「埼玉県川口市です」
裁判長「住居は」
被告人「不定です」
裁判長「控訴の趣意は控訴趣意書の通りということでいいですか」
弁護人「はい」
裁判長「検察官の意見は」
検察官「棄却すべきものと思料します」
 弁護人は書証の提出と被告人質問の実施を裁判所に求めた。検察官はいずれも同意した。
裁判長「それでは採用しますので、原本の写しを提出してください。被告人質問は控訴審では判決後の情状に限って質問してください。被告はそこの席に腰掛けて」
被告人「はい、失礼します」

−弁護人による被告人質問−
弁護人「昨年の11月14日にこの事件の一審判決があり、無期懲役ということで宣告を受けたんだけど、その判決を聞いてどう思いましたか」
被告人「はい、正直落胆しました。私がやった事件でコトの重大性を深く知り、深く傷つけた人には大変申し訳ないと思いました」
弁護人「控訴を申し立てた理由は何ですか」
被告人「兄さん(=共犯者の鈴木勝宏被告。一審懲役20年判決、控訴中)についての上下関係について詳しく調べていただきたいと思いました」
弁護人「赤羽事件のaさんに弁護人の添え状と合意書、誓約書の写しを送ったわけですが、この被害者の方とあなたはどんな約束をしたのですか」
被告人「まずは謝罪です、一生私がしたことを忘れずに刑に服するということです」
弁護人「被害弁償についてはどうですか」
被告人「今後もしていこうと思います」
弁護人「誓約書に書いた被害者の方との約束とは何ですか」
被告人「今後一切つきまとったり、事件について他言しないということです」
弁護人「これを知らせるために被害者に手紙を送ったのですか」
被告人「はい」
弁護人「弁7、13号証を示します。ここに検察官の印鑑があるけど、こういう手紙を送る場合、被害者のそういう気持ちを考えて検察官に連絡を取ったということですか」
被告人「はい」
弁護人「被害者のなかには受領を拒否した人もいますね」
被告人「はい」
弁護人「それが南青山事件、我孫子事件、武蔵野事件の3名の被害者の方?」
被告人「はい」
弁護人「それ以外の被害者の方とは手紙を送ったら、一応受領はされたということですか」
被告人「はい」
弁護人「回答がなかった方も多いですけどね」
被告人「はい」
弁護人「弁6号証を示します。これは50万円の被害弁償についての振込みですね」
被告人「はい、そうです」
弁護人「これは南青山事件の被害者ですね。受け取ってもらえたと」
被告人「はい」
弁護人「次にこれは合意書ですけど、韮山事件(毛呂山事件?)の被害者の方と合意ができたということですか。この方については手紙を受け取ってもらって、そういう話で合意したいと」
被告人「はい」
弁護人「さきほどの一切つきまとわない等の誓約書はそれぞれの被害者に送ったわけですね」
被告人「はい」
弁護人「Y1さんの上申書がありますが、この方とあなたはどんな関係だったのですか」
被告人「以前勤めていた会社の社長です」
弁護人「この方は拘留中のあなたに面会に来てくれたのですか」
被告人「来てくれました」
弁護人「この事件で長期間になるけど、いずれあなたが社会に復帰したとき、更生に力になると言ってくれたのですか」
被告人「はい」
弁護人「就職の世話もすると」
被告人「はい」
弁護人「Y1さんに対してはどういう気持ちですか」
被告人「上申書を書くことに応じてくれたことに対して、大変申し訳ない気持ちと感謝の気持ちでいっぱいです」
弁護人「一審で情状証人として立ってくれたお母さんですが、現在もいろいろ差し入れとかしてくれているのですか」
被告人「してくれています」
弁護人「お母さんと手紙のやりとりはしているのですか」
被告人「はい」
弁護人「どういう内容ですか」
被告人「私が辛い事件を起こしたと話したところ、母親も同じだから、気持ちは分かると言われました」
弁護人「弁16号証ですが、この上申書はあなたが作成したものですか」
被告人「はい」
弁護人「控訴をしたあとに書いた上申書になるのですか」
被告人「はい」
弁護人「これはどういう気持ちで書いたのですか」
被告人「一審のときに言い尽くせなかったことや兄さんとの関係で詳しく調べていただきたいことを書きました」
弁護人「一生犯した罪を忘れないという、この気持ちは変わりませんか」
被告人「はい」
弁護人「共犯者とは手紙のやりとりや連絡はしているのですか」
被告人「一切ありません」
弁護人「共犯者との付き合いはどうするつもりですか」
被告人「今まで通り断ち切っていきます」
弁護人「絶対交際しないと、連絡も自分からしないし、向こうから来ても断ると」
被告人「はい」
弁護人「今まであなたは犯罪というものをやったことがありますか」
被告人「一切ありません」
弁護人「今回の事件は検挙数も複数回で継続して行われている。初めてにしては凶悪で取り返しのつかないことなんですが、また繰り返す心配があるんじゃないですか」
被告人「いえ、今後一切このような事件は起こしません」

裁判長「検察官何かありますか」
検察官「いえ」

−裁判官による被告人質問−
左陪席「さきほどの韮山(毛呂山?)事件というのは千葉の事件じゃないですか」
被告人「はい」
左陪席「原判決では主従関係についてどちらが上ということはなかったとなっていますが、それ自体に不満があるのですか」
被告人「兄さん側から指示を受けたことについて、もう一度詳しく調べていただきたいです」
左陪席「原審の公判では『立場は五分五分だった』と言っていますが、違うのですか」
被告人「被害者に申し訳ないという気持ちから、兄さんにも負い目を感じていました。兄さんの指示でなされたことが多かったです」
裁判長「それでは原本をお返しします」

 これで控訴審は終結し、次回は判決で10月11日午後2時からと指定された。

事件概要  A被告は2003年8〜11月、東京、埼玉、千葉、栃木の1都3県で、共犯と共に5人の女性に暴行、4人の女性に猥褻行為を行い、現金を奪った。
 2被告は暴行後も、キャッシュカードやクレジットカードの暗証番号を言わせて根こそぎ巻き上げていたとされる。
報告者 insectさん


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