裁判所・部 東京高等裁判所・第七刑事部
事件番号 平成16年(う)第676号
事件名 殺人、殺人未遂、逮捕監禁致死、死体損壊、爆発物取締罰則違反
被告名 中川智正
担当判事 植村立郎(裁判長)荒川英明(右陪席)伊東顕(左陪席)
その他 書記官:関口義雄
検察官:濱隆二
日付 2006.9.13 内容 被告人質問

 傍聴券45枚に対し、64人集まりました。同じ日に行われた地裁の板橋両親殺害事件の方が倍率が高かったようです。
 被告人は、細い目にメガネをかけた小太りの男性でした。一連のオウム真理教事件のほぼ全てに関わった凶悪犯には見えませんでした。また、傍聴人が入廷するとき、しきりに後ろを見ていました。

弁護人「中川さんは、精神医学の観点から自分の状態を理解したいと言ってましたが、他には?」
被告人「1つは、2組の先生が意見書を書いてくれましたが、入信から出家までどうしたらこうならなかったのかわかればいいと思います。特にY1先生は私が入信したとき東大で外来をしていたということなので、もし受診したら教団から脱会できたのかなと思うこともあります」
弁護人「それは、今も教団に残っている人の脱会につながることですね?」
被告人「あぁ、そうです」
弁護人「他には?」
被告人「麻原についてなんですが、もう今日明日にでも判決が出ると思います。もう(麻原が)公に話す機会もなくなるでしょうから、麻原が宗教学的に、精神医学的にどうなのか、特にY1先生は今までとは違う見解を持っていました。もし可能であれば、麻原は何なのか、どうしてたくさんの人をとりこめたのかを聞きたいです」

 このようにして、この日の被告人質問は始まりました。この後、具体的な事件について質問がありました。
 その中で、被告人側としては、

1:原判決では、「トリメチルアミンを使うのが難しく、やむなくn,n-ジアチルアミンを使ってサリンを製造した」とされたが、これはトリエチルアミンの間違いで、しかも、被告人のトリエチルアミンを使う製造法では白い粉が浮いてサリンが生成されず、自分の案は採用されなかった。
2:被告人が、地下鉄サリン事件の前にサリンをナイロン袋に注入したのは、大阪支部での強制捜査の影響で、サリンを施設外に持ち出し隠すためだと思っていた。
3:サリンの予防薬とされるメスチロンは、サリン中毒の治療を助ける薬にすぎず、それだけではサリン中毒は軽くならない。松本サリン事件の前に、実行犯にメスチロンだけを渡したのは、単にくれといわれたから渡しただけで、肝心の治療薬であるパムや硫酸アトロピンは渡していないので、それを根拠に松本サリン事件での殺意とされるのはおかしい。
4:松本サリン事件は、「結果的には化学テロにとって最高の気象事件(ある軍事雑誌より)」だったため、悲惨な結果となったが、被告人はそこまで被害が及ぶとは思っておらず、前年の八王子市での創価学会での散布程度だろうと思っていた。
5:松本サリン事件の動機について、麻原は、ものすごく緻密な計画に基づいて犯行を指示したわけではなく、パッと思いついて、実行しただけにしか思えない。結果的には、裁判の妨害が目的だったという風になるのかもしれないが、側近だった自分から見ても、麻原が何を考えているのかよくわからなかった。
6:新宿青酸ガス事件について、20〜30トンの青酸ガスボンベが破裂しても、死亡したのは1人だった事例を知っており、青酸ガスが不特定多数の人を殺傷するものとは認識していなかった。仮に装置が作動しても、ものすごい音と煙が出るから、周りの人は逃げると思っていた。
7:VXガスは、吸入すると致死率は高いが、VXガスは気化しにくく、皮膚に垂らしても死に至る確率は高くない。そもそも、土谷被告の製造したVXガスは、できていなかった。

 大体、弁護人と被告人のやり取りで、こういうことを裁判所に主張したいということがわかりました。

事件概要  中川被告はオウム真理教教祖の命令で、以下の犯罪に関わったとされる。
1:1989年11月3日、神奈川県横浜市で、5名の信者と共に教団による被害者を救済する活動を行っていた弁護士とその妻子を殺害した。
2:1994年1月30日、山梨県上九一色村で、4名の信者と共に信者を逃がそうとした元信者を絞殺した。
3:サリン製造に従事し、そのサリンが1994年6月27日、長野県松本市で散布され、7名が死亡、多数が負傷した。
4:同年12月12日、数人と共に大阪府大阪市でVXガスを使用した殺人事件に関与。
5:1995年3月1日、山梨県上九一色村で、元信者の兄に麻酔薬を与えているうちに死亡させた。
6:サリン製造に従事し、そのサリンが1995年3月20日、東京都内の地下鉄で散布され、12名が死亡、約3千人が負傷した。
 その他、5件の殺人未遂事件に関わっている。
報告者 Doneさん blog


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