裁判所・部 東京高等裁判所
事件番号 平成18年(う)第835号
事件名 殺人、詐欺未遂
被告名
担当判事 安廣文夫(裁判長)山田敏彦(右陪席)前澤久美子(左陪席)
その他 書記官:熊井孝徳
検察官:齋藤博志
日付 2006.8.22 内容 初公判

 A被告の第一回控訴審公判は、720号法廷で行われた。
 この公判の前に行われた死者1名を出した交通事故の判決公判がやや遅れて開廷したため、A被告の公判は、1時30分から予定されていたものの、実際には1時35分から始まった。
 傍聴人はそれなりに集まっており、マスコミ関係者らしき人も散見された。
 弁護人は、頭をスキンヘッドにした、スーツ姿の中年男性。
 検察官は、眼鏡をかけた中年男性。
 被告人は、ジャージ姿でサンダル履きの、小柄で丸顔の初老の女性。ややくすんだ肌の持ち主であり、髪を後ろで纏めている。被告人席の前には机が置かれていた。開廷前、瞬きをしながらおおむね前を向いていたが、下を向いている時もあった。
 裁判長たちが入廷する。裁判長は、眼鏡をかけた、太り気味で、白髪交じりの初老の男性。裁判官は、髪を後ろで纏めた2〜30代の痩せた女性と、眼鏡をかけた痩せた中年男性だった。

職員「起立願います!」
 全員立ち上がり、裁判長たちに礼をする。
職員「A被告人に対する、殺人事件等被告事件について開廷いたします!」
 刑務官によって、被告人の縄が外される。
裁判長「それでは、前に来て。被告人、前に来てください」
 被告人は、立ち上がった後、刑務官に何か尋ねて、証言台に立つ。
裁判長「はい、えー、そこに立ってくださいね。名前は何と言いますか?」
被告人「Aです」
裁判長「生年月日は?」
被告人「昭和24年3月3日」
裁判長「本籍地は、足利市で、前と変わっていませんね」
被告人「変わりません」
裁判長「住所も同じ所ですね」
被告人「そう、12丁目あたりです」
裁判長「現在職業は?」
被告人「無職です」
裁判長「それでは元の席に戻ってください」
 被告人は、被告席に戻る。
裁判長「それでは、弁護人に伺いますが、本件の控訴趣意は、弁護人が提出した控訴趣意書記載のとおり、冒頭手続きの通り、事実誤認の主張と伺って良いですか?」
弁護人「はい、そういう事です」
裁判長「では、検察官の意見を」
検察官「控訴は、理由は無く、棄却されるべき物と思量します」
裁判長「それでは、ま、あのー、控訴趣意書自体は受け取りますが、原審の記録に基づいて、という事になりますけど、特に事実の取調べは求めない、という事で宜しいですか?」
弁護人「ええ」
裁判長「それでは、あー、記録を前提とした上で裁判所のほうで判断します。それで、(記録のページを捲る)、弁護人、判決の日程、3週間先の9月12日でどうでしょうか」
 弁護人、不可能であると伝える。
裁判長「では、14日午前。何時ごろが?」
弁護人「できるだけ早いほうが」
裁判長「午前と午後と、どちらが、ご都合が宜しいですか?」
弁護人「午前」
裁判長「では、午前10時ちょうどという事にします」
弁護人「はい」
裁判長「それでは、被告人も聞いていたと思いますが」
被告人「はい」
裁判長「あのー、裁判所としてももう少し検討する時間を頂いて」
被告人「はい」
裁判長「判決の言い渡しは、9月14日」
被告人「はい」
裁判長「の、おー、午前10時ちょうど」
被告人「はい」
裁判長「で、法廷は今日と同じです」
被告人「はい」
裁判長「それでは、退廷お願いします」

 1時38分に、公判は終わった。
 被告人は、傍聴席に目をやる事なく退廷した。審理中は、下を向いている事もあった。表情は、終始無表情だった。声は、はっきりとしていた。
 閉廷後、マスコミは、そそくさとエレベーターに乗る弁護人を小走りで追いかけ、話を聞いていた。被告人が犯行を否認していた事件の割には、あまりにもあっさり結審したので、マスコミ関係者も驚いていたのかも知れない。

事件概要  A被告は保険金目的で、2001年6月1日、金で雇ったフィリピン人にフィリピンのマニラ市で郵便局員を殺害させたとされる。
報告者 相馬さん


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