裁判所・部 | 東京高等裁判所・第六刑事部 | ||
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事件番号 | 平成16年(う)第3310号 | ||
事件名 | 強盗殺人、強盗傷人、銃刀法違反、大麻取締法違反、強盗致傷 | ||
被告名 | A | ||
担当判事 | 池田修(裁判長)山内昭義(右陪席)吉井隆平(左陪席) | ||
その他 | 検察官:遠藤みどり | ||
日付 | 2006.3.14 | 内容 | 被告人質問 |
裁判長は、眼鏡をかけた、痩せた老人。裁判官は、眼鏡をかけた中年男性と、丸顔の、眼鏡をかけた中年男性。 検察官は、髪を後ろで束ねた、眼鏡をかけた、小柄な中年女性。開廷前に、何か書類を見ていた。 弁護人は、眼鏡をかけた初老の男性。開廷前に、何か書類に目を通していた。 傍聴人は、私を除い6人いた。 被告人は、前回と同じくグレーの服を着ている。細身で、髪が短く、色白。証言台に座らされるまで、足を投げ出して被告席に座る。 前にやっていた交通関係の事件の審理が2時30分丁度に終了したため2時30分から始まる予定だったが、2時35分から開始される。 −検察官からの被告人質問− 検察官「今回の事件の折りたたみナイフは、平成13年上旬に買ったのですか?」 被告人「はい」 検察官「何故ナイフを買ったのですか?」 被告人「護身用です」 検察官「強盗に使おうと思ったのではないのですか?」 被告人「違います」 検察官「もっていなければ不安になる?」 被告人「はい」 検察官「常にナイフを持っていた」 被告人「はい」 検察官「どういうときにナイフを使おうと思っていましたか?」 被告人「かつ上げされそうになったら使おうと思っていました」 検察官「自分がされそうになったら?」 被告人「はい」 検察官「自分がしようとは思っていませんでしたか?」 被告人「・・・・・少しは考えていたと思います」 暴力団の元からは、後先考えずに逃げ出した、と述べる。 検察官「Y4さんの事件は、公園のトイレで起こしましたね」 被告人「はい」 検察官「Y4さんがトイレに入ってくるのを見て、考えた」 被告人「はい」 検察官「どういう方法でお金を取ろうと思いましたか?」 被告人「・・・・・普通にかつ上げしようと」 検察官「どういう方法でかつ上げしようと思いましたか?」 被告人「金を出せ、と」 検察官「言うだけ?」 被告人「はい」 検察官「その時、ナイフはどうしていましたか?」 被告人「手で弄っていました」 検察官「どちらの手ですか?」 被告人「覚えていません」 検察官「一審で述べたことは覚えていますか?」 被告人「覚えていません」 検察官「『ナイフは刃を出して、Y4さんに見えるようになっていた』と言っていませんでしたか?」 被告人「覚えていません」 検察官「貴方が述べた覚えの無い事が、何故調書になっているのですか?」 被告人「解りません」 検察官「何故解らないのですか?」 被告人「警察が勝手に作ったので」 検察官「調書を読み聞かされていますね」 被告人「はい」 検察官「その上で、間違いなければ署名して、と言われたのではないのですか?」 被告人「はい」 検察官「署名したという事は、間違いないと思ったのでは?」 被告人「大した違いは無いと思っていました」 検察官「違いが無いとは?」 被告人「ナイフを突きつけていようが違いは無いと思っていました」 検察官「刃を出して突きつけるのと、口で言うのは、違いますね」 被告人「良く解りません」 検察官「良く解らないと」 被告人「はい」 検察官「aさんの事件は、アパートの避難階段のところで起こしていますね」 被告人「はい」 検察官「何故アパートに行ったのですか?」 被告人「覚えていません」 検察官「お金を取ろうと思って行ったのではないですか?」 被告人「・・・・・そうです」 検察官「最初に覚えていないと言ったのは?」 被告人「今言われて思い出しました」 検察官「お金を取る方法はどんな方法を考えていましたか?」 被告人「・・・・・・」 検察官「ナイフを使ってお金を取ろうと思っていましたか?」 被告人「はい」 検察官「aさんの足音が聞こえて、人が来ると解った」 被告人「はい」 検察官「貴方は、ナイフを持っていた」 被告人「はい」 検察官「刃は開いていましたか?」 被告人「・・・・・・はい」 検察官「aさんは、二階の踊り場に降りてきた」 被告人「はい」 検察官「貴方は、aさんに、金を出せと言った」 被告人「言っています」 検察官「ナイフは突きつけていましたか?」 被告人「覚えていません」 検察官「ナイフは持っていた」 被告人「はい」 検察官「どちらの手に持っていましたか?」 被告人「右手に」 検察官「ナイフを右手に持って、どうしていましたか?」 被告人「覚えてないです」 検察官「金を出せと言った時、aさんはどうしましたか?」 被告人「後ずさりしたと思います」 検察官「悲鳴は上げましたか?」 被告人「よく覚えていないですけど、上げたと思います」 検察官「貴方は、悲鳴を聞いてどのように思いましたか?」 被告人「早く金を出せ、と思いました」 検察官「早く金を出させたい、という意味ですか?」 被告人「はい」 検察官「声で、人に聞こえるとは思いませんでしたか?」 被告人「そうは思いませんけど、早くしないと人が来る、と思いました」 検察官「早く金を出させるにはどうしようと考えていましたか?」 被告人「どうしようか・・・・・考えて無かったです」 検察官「貴方は、aさんを二回刺したと言っていますね」 被告人「はい」 検察官「刺したのはどの時点ですか?」 被告人「・・・・・・よく覚えてないです」 検察官「aさんが後ずさりした後ですか?」 被告人「その後です」 検察官「どこを刺したと記憶していますか?」 被告人「背中です」 検察官「それと?」 被告人「あと・・・・首」 検察官「何故、背中と首を刺したのですか?」 被告人「解りません」 検察官「続けて刺しましたか?」 被告人「(aさんが)蹲っている時に刺しました」 検察官「背中を刺して、蹲っている時に、首を刺したのですか?」 被告人「はい」 検察官「刺してどうしようと思っていましたか?」 被告人「刺して・・・・お金を取ろうと思いました」 検察官「刺した場所に理由はありますか?」 被告人「ありません」 検察官「aさんは、刺されてどうなりましたか?」 被告人「蹲っていたと思います」 検察官「暴れまわっていませんでしたか?」 被告人「自分の覚えている中ではありません」 検察官「覚えている事は?」 被告人「自分が刺して、踊り場に蹲っていた」 検察官「後ずさりした後は、どうなりましたか?」 被告人「・・・・・・来た道を戻ろうとしたと思います」 検察官「貴方に背を向けて、階段を戻ろうとしたという事ですか?」 被告人「はい」 検察官「それで、貴方はどうしましたか?」 被告人「刺しました」 検察官「背中を刺した」 被告人「はい」 検察官「それで、aさんはどうしましたか?」 被告人「踊り場の端に行ったと思います」 検察官「それで、貴方はどうしましたか?」 被告人「蹲っていたので、首を刺しました」 検察官「何故首を刺したのですか?」 被告人「解りません」 検察官「死んでしまうとは考えませんでしたか?」 被告人「その時は思わなかったです」 検察官「人を刺して死ぬとは考えませんでしたか?」 被告人「その時は考えません」 検察官「何故ですか?」 被告人「そこまで頭が回らなかったです」 検察官「お金を出させる事しか考えていなかったという事ですか?」 被告人「はい」 検察官「どうしてもお金が欲しかった」 被告人「はい」 検察官「aさんは、どうなっていましたか?」 被告人「蹲っていました」 検察官「身動きしなかったのでは?」 被告人「解りません」 検察官「うつぶせに倒れて、身動きしなくなったのでは?」 被告人「自分の覚えている中では、蹲っていました」 検察官「立ち去る前に、aさんに何をしましたか?」 被告人「服を触りました」 検察官「どの辺りですか?」 被告人「ポケットの辺りです」 検察官「ポケットに手は入れましたか?」 被告人「入れてません」 検察官「ポケットの上から触った」 被告人「はい」 検察官「どうでしたか?」 被告人「金が無いと思いました」 検察官「貴方がお金を探している間、aさんはどうしていましたか?」 被告人「蹲っていたと思います」 検察官「倒れているのではなく、蹲っていた」 被告人「はい」 検察官「それで、貴方はどうしましたか?」 被告人「道に出て行きました」 検察官「貴方が逃げた時、aさんはどうしていましたか?」 被告人「覚えてないです」 検察官「逃げた時、確認はしていない?」 被告人「はい」 検察官「公園で、手やナイフについた血を洗った」 被告人「はい」 検察官「救急車がアパートに入ったのを、その時見ましたね」 被告人「入ったのは見えませんでしたが、行くのは見えました」 検察官「それで、どう思いましたか?」 被告人「自分のした事と関係があるかと思いました」 検察官「その後、本屋に行って立ち読みをしていますね」 被告人「はい」 検察官「どういうつもりで立ち読みをしていたんですか?」 被告人「・・・・・・職務質問されないためです」 検察官「付近をうろうろしていると職務質問されるかも知れないから立ち読みをしていたという事ですか?」 被告人「はい」 検察官「立ち読みした後、アパートにまた行っていますね」 被告人「はい」 検察官「何故アパートに行ったのですか?」 被告人「さっきの救急車が、自分のやった事と関係があるかな、と思いました」 検察官「アパートのどの辺りまで行きましたか?」 被告人「アパートの踊り場の辺りまでです」 検察官「どういう状態でしたか?」 被告人「カメラのフラッシュを焚いていました」 検察官「警察は来ていると思った」 被告人「はい」 検察官「刺した女性は死んだかも知れない、と思いませんでしたか?」 被告人「はい」 検察官「死んでも良いと思い刺したのではないですか?」 被告人「違います」 検察官「取調べの時、二回しか刺していないと供述しましたか?」 被告人「覚えてないです」 検察官「何故覚えていないのですか?」 被告人「5年も前の事なので」 検察官「調書には、何回も刺したと記載されていますが、貴方の述べたことに間違いはないですね?」 被告人「たぶんそうだと思います」 検察官「前回、警察官二名が犯行を再現したと言っていましたね」 被告人「はい」 検察官「何時の事ですか?」 被告人「・・・・・」 検察官「何時頃ですか?」 被告人「現場再現の前の夜だと思います」 検察官「現場再現の前の日の夜に、犯行を再現した」 被告人「夜かは解りませんが、前の日です」 検察官「どこで再現をしましたか?」 被告人「取調室です」 検察官「再現時に、ナイフ様の物は使用しましたか?」 被告人「ライターを使ったと思います」 検察官「何故再現する事になったのですか?」 被告人「被害者の体に覚えのない傷があるので、こうしたんじゃないかとか・・・・・・」 検察官「どう再現しましたか?」 検察官「ライターをナイフに見立て、刺す真似をしたのですか?」 被告人「真似までは解りません」 検察官「どうやって、何時傷が付いたか解りましたか?」 被告人「何となく」 検察官「24箇所の刺切創、全部再現したんですか?」 被告人「全部ではないと思います」 検察官「それを全て記憶したんですか?」 被告人「はい」 検察官「何故ですか?」 被告人「説明できなければ困ると思いました」 検察官「覚えている事を説明すれば良いのでは?」 被告人「今はそう思います」 検察官「何故そうしなかったのですか?」 被告人「取り調べの刑事がお菓子やタバコを持ってきてくれるので、そういうこともあったと思います」 検察官「処罰がどうなるかより、お菓子やタバコの方が大事なんですか?」 被告人「その時は、処罰とか考えていませんでした」 検察官「bさんの事件では、貴方は、土手の下でナイフを出して脅したという事でしたね」 被告人「はい」 検察官「土手の上でナイフを出したのではないのですか?」 検察官「bさんに対して、『平井で人を刺し殺した』とも言っていないのですね?」 被告人「はい」 検察官「刺し殺した、と供述もしていない」 被告人「はい」 検察官「では、何故こういう調書があるのですか?」 被告人「解りません」 検察官「読み聞かされて、間違いないとサインした」 被告人「はい」 検察官「言った事と違う事が書かれている調書がありましたか?」 被告人「覚えてないです」 検察官「今回の事件は重大な事件だと思いますね?」 被告人「はい」 検察官「どういう反省をしているのですか?」 被告人「高校生も、爺さんも、お婆さんも、申し訳ないと思います」 検察官「事件のそもそもの原因については、どういう考えを持っていますか?」 被告人「・・・・・お金を持っていなかったからです」 検察官「一審判決のどの点に不満がありましたか?」 被告人「・・・・・・説明できません」 検察官「不満はある」 被告人「不満は・・・・・はい」 −弁護人の被告人質問− 弁護人「一審の裁判の時、大阪大学の先生と話をしましたね?」 被告人「はい」 弁護人「貴方の心を明らかにしたいという話でしたが、知っていますか?」 被告人「はい」 弁護人「鑑定が認めてもらえなかった事について、どう思っていますか?」 被告人「自分は、人に質問されるのが好きではないので」 弁護人「小さい頃から、説明が嫌だったんでしたよね」 被告人「はい」 弁護人「私と話した事で、調書がどうなるか関心は無かった?」 被告人「関心は・・・・・はい、無いですね」 弁護人「弁護士が、二回接見に行っていますね」 被告人「はい」 弁護人「二度とも、弁護士はいらないと断っていますね」 被告人「はい」 弁護人「何故ですか?」 被告人「どうでも良いと思いました」 弁護人「警察の調書も、どうでもいいと思った」 被告人「違う事が書いてあっても、どうでも良いと思ってました」 弁護人「上申書はどのように書かれましたか?」 被告人「Y2刑事が、これを写せ、と言って、見せました」 被告人「煙草とかくれて、良くしてくれたので、揉め事は起こそうと思いませんでした」 弁護人「刺し傷の指示で、違っている部分があった」 被告人「はい」 弁護人「違うと言おうとは思いませんでしたか?」 被告人「思いませんでした」 弁護人「それが不可解ですが、貴方はそうなんですね。原審では、被害者に対し申し訳ないと思っていなかった」 被告人「はい」 弁護人「今は思っていますね」 被告人「はい」 弁護人「裁判官から聞かれて、説明が出来ない」 被告人「はい」 弁護人「いい言葉が出てこない」 被告人「はい」 弁護人「息詰まって、上手く説明できない」 被告人「はい」 弁護人「説明できないことを説明しろと言われると、貴方はどうなりますか?がんばろうとは思わない?頷くだけでは解りません。それは思いませんでしたか?」 被告人「はい」 −裁判長の被告人質問− 裁判長「人から聞かれるのが嫌ということですが、ちょっとだけ教えて。調書と違う内容の事を、今は言っていますね」 被告人「はい」 裁判長「どうでも良いと思わなくなったのですか?」 被告人「弁護人と話して、ぜんぜん違う事だと・・・・・・」 裁判長「説明を聞いたからですか?取調べの時にも、こういう犯罪が成立する、という話はあった?」 被告人「調書を読まれた時に、罪名は聞きました」 裁判長「大変な事になったとは思わなかった?」 被告人「はい」 裁判長「弁護人の説明を聞いたら、大変な事になったと思ったんですか?」 被告人「はい」 裁判長「取調べの時と弁護人の説明と、説明が違ったんですか?」 被告人「土手の上か下かでナイフを出したかが違うとは思わなかった」 裁判長「今でもそう思っている?取調べの人からも、こういう犯罪と教えられた?」 被告人「はい」 裁判長「aさんは、踊り場で刺した」 被告人「はい」 足音がして、被告人は、二階から踊り場へ上がっていった 裁判長「面会、差し入れ、手紙は、誰から来ますか?」 被告人「無いです」 裁判長「一審後も無い」 被告人「はい」 裁判長「来る人は誰か居ますか?」 被告人「弁護士さんだけです」 一審の時は大阪大学の先生が来たが、今は弁護士しか被告人に会いに来ないらしい。 次回期日が指定され、3時18分に、公判は終わった。 被告人には相変わらず熱意が見られず、どこか疲れたような感じだった。 | |||
報告者 | 相馬さん |