裁判所・部 東京高等裁判所・第十一刑事部
事件番号 平成16年(う)第1091号
事件名 強盗殺人、建造物侵入、窃盗、窃盗未遂、死体遺棄
被告名 小野川光紀
担当判事 白木勇(裁判長)傳田喜久(右陪席)忠鉢孝史(左陪席)
その他 書記官:勝又、横田、松村
検察官:鳥本喜章
日付 2006.2.22 内容 被告人質問

 検察官は、白髪交じりの髪を七三分けにした、浅黒い、眼鏡をかけた黒いスーツ姿の初老の男性。
 被告人の両親は、今日も来ていた。被告人の母親は、頭を下げて廷内に入る。父親らしき人は、眼鏡をかけた痩せた老人。
 弁護人は、黒いスーツ姿の2〜30代の男性三名。内二人は、開廷前にコンピューターを使って何かをしていた。また、コンピューターを使っていない弁護人は、被告人の入廷後、書記官と、どの書証を示すか話をしていた。
 被告人は、髪を丸坊主にした、やや顔の赤い、ごく普通の風貌の青年。ノーネクタイの黒いスーツ姿。少し頭を下げて入廷する。弁護人と少し話をした後は、開廷前は概ね俯いていた。両親と目を合わせることは無かった。ぼそぼそした声で、被告人質問に答えた。
 傍聴人は、私と被告人の両親らしき人を除けば8人ぐらいだった。
 裁判長達が入廷し、若い女性職員により、開廷が宣言される。

裁判長「被告人、前に出て」
 被告人は、証言台の前に立つ。
裁判長「その椅子にかけて」
 被告人は、礼をし、証言台の椅子に座る。前回に引き続いて被告人質問を行う旨、裁判長は述べる。

−イワイ弁護人の被告人質問−
弁護人「前回の被告人質問では、ゲームセンターの駐車場に車を止めて、高根沢と話し合った事まででしたね」
被告人「はい」
弁護人「太田のホームセンターで、高根沢は事前に何を買うと言っていましたか?」
被告人「指サックと手足を縛るものとガムテープ」
弁護人「貴方は、指サックは何か知っていましたか?」
被告人「いいえ」
弁護人「高根沢は、何に使うといっていましたか?」
被告人「手足を縛ると」
弁護人「指サックとはどのようなものだと高根沢は説明していましたか?」
被告人「コードを縛るもの。一度引っ張ると元に戻らない」
被告人「切らないと・・・・取れないと聞いていました」
弁護人「長さはどのくらいだと?」
被告人「非常に短いものという感じで・・・・長くても30センチだと」
弁護人「そう理解した」
被告人「はい」
弁護人「首を絞めるものとは理解した?」
被告人「買い物の時にはそういう話自体出てきていませんので、そのようには理解しませんでした」
弁護人「調書では、指サックと出てきていないが」
被告人「事務員が指にはめるものだから出てこないのだと思います」
弁護人「貴方と高根沢が考えていた指サックは見つかりましたか?」
被告人「いいえ」
弁護人「それで、どうしましたか?」
被告人「高根沢さんは『ロープにしよう』と言って、探しました」
弁護人「高根沢が言った」
被告人「はい」
弁護人「何に使うと言っていましたか?」
被告人「aさんを縛ると」
弁護人「首を絞めるとは?」
被告人「説明しませんでした」
弁護人「ガムテープは何のために買った?」
被告人「顔を見られないように、目と口を塞ぐためです」
弁護人「高根沢は、殺すためだとは言いませんでしたか?」
被告人「言いません」
弁護人「では、続きを。車の運転をするのは貴方だったが、aさんは、不審には思わなかった?」
被告人「高根沢さんが昔の話をしていたので」
弁護人「貴方はaさんと会話しなかった」
被告人「はい」
弁護人「高根沢も、貴方の事を紹介しなかった」
被告人「はい」
弁護人「変な雰囲気にはなりませんでしたか?」
被告人「高根沢がaさんに話しかけていたので、なりませんでした」
弁護人「調書には、aさんが、『ずいぶん山の中に住んでいるんだな』と言い、貴方はヒヤッとした、とある」
被告人「はい」
弁護人「aさんは、『ずいぶん山の中に住んでいるんだな』とは言いましたか?」
被告人「言いました」
弁護人「貴方は其の時、ヒヤッとしましたか?」
被告人「いいえ」
弁護人「『ずいぶん山の中に住んでいるんだな』とは、aさんは疑って発言したわけではない」
被告人「はい」
弁護人「高根沢が『こいつは最近引っ越してきたばかりで、道が解らないんだ』とごまかしたとあるが」
被告人「それは別の時です」
弁護人「あなたは、『そうなんすよ』と言って、高根沢と共にaさんをごまかした事もない」
被告人「はい」
弁護人「(調書では)ばらばらの事が一つにされた?」
被告人「はい」
弁護人「途中でビールを買ったお金を出したのは?」
被告人「私です」
 犯行現場に行く途中に見たものでは、看板、コンクリートの土台で作った家などの事を覚えているらしい。
弁護人「赤い鳥居は?」
被告人「刑事さんのほうから聞きました」
弁護人「貴方は覚えていない」
被告人「はい」
弁護人「覚えている、という記載があるが、覚えていない?」
被告人「はい」
 弁護人は、甲58号証の写真を示す。
弁護人「その90を示します。この正門に止まった事は覚えている」
被告人「はい」
弁護人「105の自然公園は覚えている」
被告人「はい」
弁護人「106の赤いドラム缶は覚えている」
被告人「はい」
弁護人「108のコンクリートの土台は覚えている」
被告人「はい」
弁護人「赤い鳥居はかなり目立ちますよね。何故鳥居だけ覚えていない?」
被告人「通り過ぎている感覚だと」
弁護人「覚えているものは、近くで止まっていた」
被告人「はい」
弁護人「赤い鳥居は通り過ぎた」
被告人「はい」
弁護人「暗いので、通り過ぎたものは覚えていないと」
被告人「はい」
弁護人「鳥居の事は、警察官か検察官が書いた」
被告人「はい」
弁護人「貴方から言い出して道順を変えた事は?」
被告人「無いです」
弁護人「貴方の独断で曲がったりした事は?」
被告人「無いです」
弁護人「犯行現場近くで一度降りましたね」
被告人「はい」
弁護人「高根沢と一緒に小便をした」
被告人「はい」
弁護人「どちらから声をかけてきましたか?」
被告人「高根沢さんです」
弁護人「高根沢は何と言いましたか?」
被告人「『みっちゃん、みっちゃん』と言いました」
弁護人「それで?」
被告人「ロープで首を絞める仕草をしながら、『ロープでこれだからね』と言いました」
弁護人「調書では、『首を絞めちゃえ』とまで言ったとあるが、仕草だけだった?」
被告人「はい」
弁護人「其の時(高根沢は)、合図したら、と言った?」
被告人「それは解らない」
弁護人「『合図したらこれだね』と言った」
被告人「はい」
弁護人「合図は言っていない」
被告人「はい」
弁護人「貴方は、車内に戻ってどうしていましたか?」
被告人「ロープを取り出しました」
弁護人「その後、高根沢とaさんが車に戻った」
被告人「はい」
弁護人「どちらが先に車内に戻ってきましたか?」
被告人「一緒だったと思います」
弁護人「その後、コグランプが消えた」
被告人「はい」
弁護人「車内は真っ暗になった」
被告人「はい」
弁護人「それが合図とは思いませんでしたか?」
被告人「思いました」
弁護人「貴方はそれで何かしましたか?」
被告人「私は何もしませんでした」
弁護人「それから?」
被告人「高根沢さんはエンジンを消しました」
弁護人「コグランプが消えたのと同じ頃?」
被告人「いいえ」
弁護人「コグランプが消えてから高根沢がエンジンを消すまで、少し時間があった」
被告人「はい」
弁護人「それで、貴方は何かしましたか?」
被告人「何もしませんでした」
弁護人「コグランプが消えても、エンジンが消えても、aさんの首にロープをかけていない」
被告人「はい」
弁護人「ロープをなぜかけた?」
被告人「高根沢さんの『あれー』という声ですね」
弁護人「どうやってかけた?」
被告人「首に、後ろから」
弁護人「其の時、輪を作ったりは?」
被告人「しません」
弁護人「それで、aさんはどうしましたか?」
被告人「前に動きました」
弁護人「貴方はどうなりましたか?」
被告人「一緒に前に」
弁護人「貴方の力がaさんの力に負けて、一緒に前に行ってしまった」
被告人「はい」
弁護人「高根沢はどうしましたか?」
被告人「私の片手に持っていたロープを手に取り、aさんの首に巻きつけました」
弁護人「どういう風に巻き付けましたか?」
被告人「首に二週、三周になるように」
弁護人「それで、高根沢はどうしましたか?」
被告人「(ロープを)引っ張りました」
弁護人「貴方に何か指示を出しましたか?」
被告人「『みっちゃん、引っ張れ』と言いました」
弁護人「それで、高根沢はどうしましたか?」
被告人「aさんに覆いかぶさるように。後に、(aさんを)殴ったと解りました」
弁護人「貴方はどうしていましたか?」
被告人「光景が怖い状態でしたので、下を向いて目をつぶっていました」
 弁護人は、実況見分調書を示す。
弁護人「写真63を示します。貴方がロープを持って車で待っている。これが待っていた状態ですか?」
被告人「はい」
弁護人「写真65〜を示します。これが、ロープを首にかけた状態ですね?」
被告人「はい」
弁護人「写真75〜を示します。aさんが前のめりになり、紐を引っ張っている。これがさっきの、aさんの力に負けた、という所ですね」
被告人「はい」
弁護人「これを見ると、高根沢がロープをとり、二重三重に巻きつけていますね」
被告人「はい」
弁護人「写真95,96を示します。運転席に居た高根沢が、助手席に居たaさんに覆いかぶさっている。これが、高根沢がaさんを殴っていると、後に解った所ですね」
被告人「はい」
弁護人「写真97が、貴方が後部座席でロープの片方を握っていたところですね」
被告人「はい」
弁護人「ロープを握るのは、何時やめましたか?」
被告人「高根沢さんが、『もう死んでるな』と言ったので、やめました」
弁護人「その前に、貴方が、目を開けて、やめたりはしませんでしたか?」
被告人「いいえ」
弁護人「高根沢の言葉があって、やったりやめたりしたという事ですか?」
被告人「はい」
弁護人「貴方が目を開けた時、高根沢は何処にいましたか?」
被告人「車外に居ました」
弁護人「何をしていましたか?」
被告人「ロープを引っ張っていました」
弁護人「写真101,102を示します。高根沢が車の外に出てロープを引っ張っている。貴方はそれを見ましたか?」
被告人「はい」
弁護人「高根沢は、殴るためにaさんに近付き、車の外に出てロープを引っ張った」
被告人「はい」
弁護人「高根沢は、どのように死亡を確認しましたか?」
被告人「顔を近づけて」
弁護人「再度死亡確認をしたことは?」
被告人「その後にもう一度しました」
弁護人「どのようにしましたか?」
被告人「車から降りて、助手席から」
弁護人「貴方は死亡確認はしましたか?」
被告人「しません」
弁護人「何故ですか?」
被告人「矢張り・・・・・怖いからです」
弁護人「死亡を確認し、死体を車外に出したのは誰ですか?」
被告人「高根沢さんです」
弁護人「貴方は手伝いましたか?」
被告人「手伝っていません」
弁護人「高根沢はどうやって死体を車から出しましたか?」
被告人「引っ張って」
弁護人「死体をトランクに入れたのは誰ですか?」
被告人「高根沢さんです」
弁護人「死体をロープで縛ったのは誰ですか?」
被告人「高根沢さんです」
弁護人「貴方が手伝った事はありませんか?」
被告人「『押さえて』と言われて、押さえました」
弁護人「えびぞりで縛っていますが、高根沢はこのような縛り方を容易に出来るのですか?」
被告人「はい」
弁護人「貴方は出来ますか?」
被告人「出来ません」
弁護人「ロープを切ったのは誰ですか?」
被告人「高根沢さんです」
弁護人「死体の何処を持ちましたか?」
被告人「足です」
弁護人「何故?」
被告人「顔は怖くて・・・・・持てませんでした」
弁護人「鍵を持ち出したのは?」
被告人「高根沢さんが、トランクを探って」
 aの服を探ってとった。
弁護人「缶ビールやロープが残りましたが、貴方はそれをどうしましたか?」
被告人「どうしますか、と高根沢さんに聞きました」
弁護人「貴方は判断できなかった」
被告人「はい」
弁護人「どうしましたか?」
被告人「『ビールはそのままで良い。ロープは林に投げておいてくれ』と言われました」
 被告人は、体が震え、タバコにライターで火をつけることが出来なかった。高根沢から「これを使えば」と言われ、シガーソケットを貸してもらい、それでタバコに火をつけた。
 帰りは、高根沢が車を運転した。
弁護人「帰りに、セイホンによって居ますね」
被告人「はい」
弁護人「そこで、何を買いましたか?」
被告人「手袋を買いました」
弁護人「何故事前に二つ買わなかったのですか?」
被告人「高根沢さんが店に入る予定でしたので」
弁護人「貴方は何をする予定でしたか?」
被告人「aさんを押さえている予定でした」
 殺害後、セイホンの店舗の陰で、被告人は、Y20に電話した。店舗の陰で電話したのは、高根沢に話を聞かれては不味い、という思いがあった。
弁護人「何故電話をしたんですか?」
被告人「aさんをああした直後だったので、私も高根沢さんに殺されるかもしれないと思いました」
弁護人「何を話しましたか?」
被告人「高根沢さんと居る、と言いました」
弁護人「他には?」
被告人「それだけ伝えたかったので、他にはよく覚えていません」
弁護人「高根沢が離してくれない、とは言いませんでしたか?」
被告人「言ったかもしれませんが、覚えていません」
弁護人「それで?」
被告人「高根沢さんに、車内で、『私まで殺したりしないでしょうね』と冗談ぽく言いました」
弁護人「高根沢は何と言いましたか?」
被告人「『みっちゃんこそ』と受け流すように言いました」
 被告人たちは、車で、セイホンからマリーンに行った。マリーンの警備状態は高根沢しか知らなかった。
 身の回りのものを車内に置いて行くよう、被告人は高根沢から言われた。
 見つかったら、別々に逃げる予定だった。
 店員などに侵入を見つかった場合、殺す話は出なかった。
弁護人「途中で、利益分配の話は出ましたか?」
被告人「出ませんでした」
弁護人「貴方は、幾らもらえると考えていましたか?」
被告人「解りませんでした」
弁護人「結局、貴方は、マリーンで何をしましたか?」
被告人「見張りです」
弁護人「貴方は、店の中に入りましたか?」
被告人「一メートルぐらい入りました」
 マリーンでは、エレベーターで金の入った袋を運んでいる。
弁護人「貴方は、金の入った麻袋を出しましたか?」
被告人「いいえ」
弁護人「誰が出しましたか?」
被告人「高根沢さんです」
被告人「店に入る前、高根沢から、『周りを良く見てて』と言われて、見張りをしてました」
弁護人「マリーンの周りは従業員寮がありましたね」
被告人「はい」
弁護人「二階から誰かでてこ無い様に見張っていた」
被告人「はい」
弁護人「マリーンの後の運転は誰がしましたか?」
被告人「高根沢さんです」
弁護人「死体を何処に捨てるか話していましたか?」
被告人「いいえ」
弁護人「何時その話になりましたか?」
被告人「マリーンを出てからです」
弁護人「誰から言い出しましたか?」
被告人「高根沢さんです」
弁護人「どんな話でしたか?」
被告人「高根沢さんの実家の水戸の裏山に死体を捨てよう、という話に」
弁護人「それから、どうしましたか?」
被告人「水戸まで行ったら明るくなるので、Y11さんと行った事のある利根川に捨てよう、と高根沢さんから言い出しました」
弁護人「ガソリンスタンドに寄ったのは誰から言い出したことですか?」
被告人「高根沢さんです」
弁護人「金は誰が払いましたか?」
被告人「私です」
弁護人「取った金を使わない」
被告人「はい」
弁護人「水門で死体のロープを解いたのは誰ですか?」
被告人「高根沢さんです」
弁護人「貴方は何をしていましたか?」
被告人「ネームプレートとガムテープをとってくれ、と言われたので」
弁護人「ネームプレートは解るが、ガムテープまで何故取らなければならないんですか?」
被告人「指紋が残っているかも・・・・・・高根沢さんの考えですから、解らないが」
弁護人「ネームプレートやガムテープをとりましたか?」
被告人「いいえ」
弁護人「ネームプレートとガムテープがついたまま、死体は捨てられたという事ですか」
被告人「はい」
弁護人「何故とらなかったんですか?」
被告人「触りたくありませんでした」
弁護人「その事は、車内で高根沢に言いましたか?」
被告人「報告しました」
弁護人「何と言いましたか?」
被告人「ガムテープをとり忘れた、と」
弁護人「そうしたら、高根沢は何と言いましたか?」
被告人「『水中で自然にとれるだろう』と言いました」
弁護人「ネームプレートについては何と言いましたか?」
被告人「ついていませんでした、と言いました」
弁護人「何故嘘をついたんですか?」
被告人「怒られるからです」
弁護人「(高根沢が)怖かった?」
被告人「はい」
 被告人たちは、途中で、コンビニでパンやジュースを買った。高根沢は何も食べず、酒ばかり飲んでいた。
弁護人「調書では、飲み食いしていた、とありますが、沢山食べましたか?」
被告人「いいえ、殆ど食べず残してしまいました」
弁護人「ホテル代は誰が支払いましたか?」
被告人「私です」
弁護人「(盗んだ金の)両替の話が出ましたね」
被告人「はい」
弁護人「誰から出ましたか?」
被告人「高根沢さんです」
 高根沢は、盗んだ金が、「細かいので使いづらい」と言い出した。
弁護人「どのように両替をしようと話が出ましたか?」
被告人「コンビニを回って千円札を一万円札にかえる」
弁護人「どちらから言い出しましたか?」
被告人「・・・・・・ちょっと覚えていません」
 高根沢は、「国道17線上にコンビニがいっぱいある」と言い、そちらに行った。
弁護人「両替は誰がしましたか?」
被告人「私です」
弁護人「カメラに姿が映るとは?」
被告人「思いました」
弁護人「高根沢がやってくれ、とは言わなかった?」
被告人「言いませんでした」
弁護人「実際に金融機関で貴方の姿がカメラに映っていますが、言えなかった」
被告人「はい」
 後日、高根沢のアイディアで、貯金箱に500円玉を詰めて、銀行に持っていった。500円玉を詰めたのは被告人で、銀行窓口に持っていったのも被告人だった。
弁護人「高根沢が両替した事は、一度でもあったんですか?」
被告人「ありません」
弁護人「犯行に使った、貴方に渡される予定だったセドリックが貴方に渡されたのは何時でしたか?」
被告人「事件後です」
弁護人「何時ですか?」
被告人「高根沢さんがエスティマを買いに行った時です」
弁護人「すぐには引き渡さなかったのですね」
被告人「はい」
弁護人「貴方は、セドリックを請求していませんね」
被告人「はい」
弁護人「高根沢は、乗り回しているセドリックは貴方が注文したものではないと言っていたんですね」
被告人「はい」
弁護人「払った金はどうなりましたか?」
被告人「うまい事を言われ、私も納得しなければいけない状態でした」
弁護人「引き渡されないのはおかしい、と文句も言っていないんですね」
被告人「はい」
弁護人「エスティマの名義は、貴方でしたね」
被告人「はい」
弁護人「何故貴方の名義になったんですか?」
被告人「色々言われて納得しなければいけない状態になりました」
弁護人「名義も貴方のものにされてしまった」
被告人「はい」
弁護人「以上です。弁護人、かわります」

−マチダ弁護人の被告人質問−
弁護人「aさんの事件の後、高根沢からセドリックを渡してもらいましたね」
被告人「はい」
弁護人「事件は何時ごろ起こりましたか?」
被告人「2月の22日から23日」
弁護人「bさんの事件は何時起こりましたか?」
被告人「3月31日から4月1日にかけてです」
弁護人「二番目の事件の話を持ちかけられたのは何時の事でしたか?」
被告人「3月、え〜、24日の夜でした」
弁護人「bさんの事件の話を持ちかけられたのは、aさんの事件から一ヵ月後になりますが、貴方の生活はその間、どういう状態でしたか?」
被告人「仕事もしないで飲み歩いている状態でした」
弁護人「仕事を始める予定や計画は何かありましたか?」
被告人「ありません」
弁護人「高根沢から、仕事の話や金儲けの話を持ちかけられたことがありますね」
被告人「はい」
弁護人「どんな話でしたか?」
被告人「デリバリーヘルスの経営をやらないか、と」
弁護人「デリバリーヘルスとは、どんな仕事ですか?」
被告人「客が女性を呼んで、性的なサービスをしてもらう」
弁護人「その話は、何時ごろでましたか?」
被告人「確か、3月の・・・・・8日とか、7日、8日、その辺りだったと思います」
 マチダ弁護人は、弁34号証を示す。高根沢の通話明細記録である。
弁護人「3月10日を示します。16時13分。002725で始まる電話番号がありますが、解りますか?」
被告人「いいえ」
弁護人「デリバリーヘルスの情報局の電話番号です。デリバリーヘルスの話を高根沢から持ちかけられたのは、これより前ですか?」
被告人「前です」
弁護人「話を持ちかけられて、やりたいと思いましたか?」
被告人「思いませんでした」
弁護人「何故ですか?」
被告人「普段から使われていて、そうなったら余計使われると」
弁護人「高根沢に嫌だと言いましたか?」
被告人「はっきりとは言いませんが、いや〜、とか、曖昧に」
弁護人「誰かにデリバリーヘルスの話をしましたか?」
被告人「Y7、Y6にしました」
弁護人「どのように話しましたか?」
被告人「高根沢さんからこう言われているが、やらないか、と。助けというか、そういう感じでした」
弁護人「どう助けるのですか?」
被告人「私が高根沢さんと一人で一緒にやるのは辛いので、その点で助けて欲しいと」
弁護人「Y6、Y7は、どういう返事をしましたか?」
被告人「曖昧でした」
弁護人「どのような返事でしたか?」
被告人「違法なんじゃない、とか、大変そう、とか、婉曲な断りを」
弁護人「何故そう言ったと思いますか?」
被告人「高根沢さんの経営でしたから」
弁護人「何故?」
被告人「使われると解っていて、辛い思いをすると解っていてやるのは、辛いと思います」
弁護人「貴方は、何時から高根沢と接近していきましたか?」
被告人「セドリックの話の頃でしたので、2月の頭ですね」
弁護人「12年のですね。Y6さんと高根沢が付き合い始めたのは何時ですか?」
被告人「かなり前ですね」
弁護人「どのくらい前ですか?」
被告人「何年かです」
弁護人「Y7さんは、高根沢と何時から付き合い始めましたか?」
被告人「私と同じくらい」
弁護人「つまり、Y7さんは、貴方と同じ位しか、高根沢の事を知らないという事ですね」
被告人「はい」
弁護人「Y6さんは、貴方より高根沢の事を知っていた」
被告人「はい」
弁護人「デリバリーヘルスの営業のY18さんとあったのは何時ですか?」
被告人「3月11日ですね」
弁護人「この日にY18さんと会って、広告料、広告掲載料10万円を払いましたね」
被告人「はい」
弁護人「何故Y18さんと会うことになったんですか?」
被告人「高根沢さんから『広告会社の人と会うから』と言われ、コーヒー館という喫茶店で待ち合わせを」
弁護人「何時Y18さんとは会いましたか?」
被告人「3時ぐらいだと」
弁護人「誰が10万円を払いましたか?」
被告人「高根沢さんが10万円払い、私が高根沢さんに5万円渡しました」
弁護人「5万円渡したのは、高根沢から5万円払えと要求されたんですか?」
被告人「いいえ」
弁護人「どこで払いましたか?」
被告人「コーヒー館の中で」
弁護人「Y18さんがまだ居る時ですか?」
被告人「はい」
弁護人「何故高根沢から言われていないのに5万円払ったんですか?」
被告人「私もやるわけですから・・・・・それに、高根沢さんが怖い」
弁護人「貴方は、デリバリーヘルスをやりたかったんですか?」
被告人「いいえ」
弁護人「やることに決められていたんですか?」
被告人「はい」
弁護人「5万なのは何故ですか?」
被告人「私の何時もの癖なので、特に意味は」
弁護人「どういう癖ですか?」
被告人「食事に行って相手が2000円払ったら、私が1000円渡す」
弁護人「半額払う癖があったということですか?」
被告人「はい」
弁護人「この後、Y18さんと何回会っていますか?」
被告人「3回です」
弁護人「2回目に会ったのは何時ですか?」
被告人「3月13日です」
弁護人「どういうきっかけで?」
被告人「この日は、Y6、Y7と遊んでいまして、そこで高根沢さんから電話があり、『広告の打ち合わせをするからコーヒー館に来てくれ』と言われました」
弁護人「何時ごろ電話がありましたか?」
被告人「昼ごろだと思います」
 マチダ弁護人は、通話明細記録を示す。それによると、被告人へ高根沢から、12時38分に呼び出しの電話がかかっている。
弁護人「Y7さん達と、何処にいましたか?」
被告人「タイガージャンボで、スロットをやっていました」
弁護人「三人でよく行動していたんですか?」
被告人「高根沢さんが居なければ」
弁護人「二人に気は特に使わない?」
被告人「はい」
弁護人「高根沢から電話を受けて、どう思いましたか?」
被告人「・・・・・正直行きたくないなあ、と」
弁護人「そう言いましたか?」
被告人「言いません」
弁護人「遊んでいるから行きたくない、とも」
被告人「言いません」
弁護人「高根沢と二人でY18さんに会ったんですか?」
被告人「Y6、Y7は別の席でした」
弁護人「何故二人はついて来たんですか?」
被告人「私が、一緒に居てくれれば心強いので、誘いました」
弁護人「何が心強いんですか?何が恐ろしいんですか?」
被告人「高根沢さんとあまり一緒に居たくないので。二人が居れば、三対一になるので」
弁護人「高根沢とは、大勢でも一緒に居たくない」
被告人「はい」
弁護人「3月17日にも、Y18さんと会った」
被告人「はい」
弁護人「どういう風に会いましたか?」
被告人「私一人で」
弁護人「何故ですか?」
被告人「高根沢さんが小山に行くというので、頼まれて」
 13日か14日に、高根沢は、小山に行く、と言っていた。
弁護人「Y18さんとは、何処で何時会いましたか?」
被告人「コーヒー館で午後3時に」
弁護人「前の二回と同じですか?」
被告人「はい」
弁護人「何時コーヒー館に着きましたか?」
被告人「3時30分に」
弁護人「何故遅刻をしたんですか?」
被告人「それは・・・・・」
弁護人「事故とか、何か特別な理由があったんですか?」
被告人「いいえ」
弁護人「約束の時間に行かねば、とは思いませんでしたか?」
被告人「高根沢さんから強く言われていましたが」
弁護人「Y18さんがそれでどういう行動をとったか知っていますか?」
被告人「いいえ」
弁護人「貴方が遅れて、高根沢から電話が入りましたね」
被告人「はい」
弁護人「何時かは覚えていますか?」
被告人「3時10分ぐらいと」
 弁護人は、通話明細記録を示す。一度目は、15時31分に電話がかかり、二度目には、19時39分に電話がかかっている。一度目が高根沢からのもの。
弁護人「この電話で、高根沢は何と言いましたか?」
被告人「『何してんの!』と怒られる様でした」
弁護人「それで、貴方は何と言いましたか?」
被告人「『すみません、すぐ行きます』と言いました」
弁護人「何故茨城に居る高根沢が知ったと思いますか?」
被告人「Y18さんが電話したと」
 被告人とY18は、互いに電話番号は知らなかった。高根沢と被告人の通話時間は、11.5秒だった。
弁護人「電話はどちらから切りましたか?」
被告人「高根沢さんの方から」
弁護人「高根沢の口調はどんな口調でしたか?」
被告人「まくし立てる様な、早口になって、どすの効いた声で、怒っている状態でした」
弁護人「高根沢の、こういった、用件を一方的に言って切ってしまうのは、よくありましたか?」
被告人「用件が無くてもかけてくることもあり、私の行動を把握していなければ済まない様で、ちょくちょくかかってきました」
 Y18の方からは、一週間ばかり雑誌が休刊になる、という話があった。
弁護人「デリバリーヘルスの情報を、一週間雑誌に掲載する話だった」
被告人「はい」
弁護人「何日が休みになるんですか?」
被告人「・・・・・30日・・・・」
弁護人「その話を高根沢に報告しましたか?」
被告人「話しませんでした」
弁護人「何故ですか?」
被告人「出版社が休刊という話でしたので、そう問題にする事もない、と思いました」
弁護人「Y18さんと4度目に会ったのは何時ですか?」
被告人「3月29日の夜に会いました」
弁護人「どんな話をしましたか?」
被告人「休刊日の事を高根沢さんに話したら、高根沢さんが怒り出して、『今すぐ来い』とY18さんを呼び出しました」
 高根沢の携帯にY18から電話がかかった時、被告人と高根沢で、大和屋という所で飲み食いしていた。
弁護人「Y18さんとわかりましたか?」
被告人「はい」
弁護人「どういう言葉を高根沢は使っていましたか?」
被告人「話が違うじゃないか、と」
弁護人「それから、すぐに来い、と言ったんですか?」
被告人「言っていました」
弁護人「それが6時ごろで、何処で待ち合わせをしましたか?」
被告人「8時にセガワールドというゲームセンターのローソンの駐車場で」
弁護人「Y18さんは、時間通りに来ましたか?」
被告人「8時ぴったりに私達は来ましたが、Y18さんは居ないので、高根沢さんが電話をいれました」
弁護人「Y18さんは、何時つきましたか?」
被告人「8時10分頃だと」
弁護人「それで?」
被告人「高根沢さんが、Y18さんに、エスティマに乗る様に言いましたので、Y18さんは乗り込んで来ました」
弁護人「高根沢は運転して、何処へ向かいましたか?」
被告人「喫茶店、夢街道に」
弁護人「店内に入って、先ず、何が起こりましたか?」
被告人「店内に入って、高根沢さんがY18さんを掴んで、お腹を殴りました。『ふざけんじゃねえぞ』と言いながら」
弁護人「ふざけんじゃねえぞ、と言っていたんですか?」
被告人「はい。店内なので、押し殺した声で」
弁護人「店の人や客は?」
被告人「その時はまだ見ていません。待合の中です」
弁護人「何発殴りましたか?」
被告人「何発か」
弁護人「どのように殴りましたか?」
被告人「みぞおちを何発か」
 Y18は、座り込むような状態だった。
弁護人「Y18さんは、どうしていましたか?」
被告人「『すみません、すみません』と言っていました」
弁護人「貴方はどうしましたか?」
被告人「止めました」
弁護人「それで、高根沢はやめましたか?」
被告人「私の方が怒られました」
弁護人「席に着いた時の、高根沢とY18さんと貴方の位置関係は?」
被告人「高根沢さんの左にY18さん。高根沢さんの向かいに私です」
弁護人「シートは、どういった椅子ですか?」
被告人「説明・・・・・まあ、その・・・・・囲われているような感じのボックス席でした」
 席は二つあった。
弁護人「何人がけですか?」
被告人「四人がけでした」
 四人がけであり、ボックス席は二つあった。隣には、女性客が二人居た。
弁護人「席について、高根沢は、Y18さんに、どんな話をしましたか?」
被告人「殴ったりして、『話が違うんだよ』と言っていました」
 Y18は、ずっと謝っていた。被告人は、怒られたので黙っていた。隣の席の女性は、高根沢の態度が原因で退店した。
弁護人「どのくらい店に居ましたか?」
被告人「一時間・・・・・くらい」
弁護人「結局、雑誌休刊の話は、如何決着がついたんですか?」
被告人「高根沢さんが、『お前じゃ話になんないから偉い人を出せ』と言って、部長と話したようです」
弁護人「雑誌の料金はどうなりましたか?」
被告人「延長分も無料という事でした」
弁護人「貴方がY18さんや部長との交渉で口を出した事はありますか?」
被告人「ありません」
弁護人「Y18さんと四回会う中で、高根沢に、止めさせて下さい、止めましょう、と貴方は言った事がありますか?」
被告人「ありません」
弁護人「2月18日に貴方がスロットをしている時、高根沢がやって来ましたね」
被告人「はい」
弁護人「理由は?」
被告人「言っていません」
弁護人「それから出かけた」
被告人「はい」
弁護人「目的は?」
被告人「特に・・・・・ぐるぐる回るような状況でした」
弁護人「其の時、デリバリーヘルスについて、貴方に指示したことは?」
被告人「デリバリーヘルスのチラシをとって来てくれ、と言われました」
弁護人「高根沢が運転し、貴方が助手席に居た」
被告人「はい」
 高根沢は、チラシが何時も気になっていたらしい。
弁護人「その他に指示された事は?」
被告人「デリバリーヘルスの店に電話してくれ、と言われました」
弁護人「何故高根沢が自分で電話しないんですか?」
被告人「・・・・・・私には解りません」
 弁護人は、さらに、被告人に問う。
被告人「・・・・・そういう性格ですね」
弁護人「何故、自分で電話をかけてください、と言わなかったんですか?」
被告人「初めて二人っきりになりましたし、高根沢さんの話を色々聞いていたし、怖い人と」
弁護人「具体的には、何が怖かったんですか?」
被告人「(高根沢は)ヤクザで、色々組の抗争で活躍したとか。後輩が何人も高根沢さんにやられてましたし、あの辺りでは有名な人でした」
弁護人「高根沢が元々ヤクザだったとは、誰から聞きましたか?」
被告人「Y6やY11さんから。高根沢さんから極東会の名刺も見せられました」
弁護人「後輩がやられたとは?」
被告人「Y21という私の後輩がいまして、(高根沢から)いきなりパチンコ屋の裏に連れ出されてどつかれた、と」
弁護人「誰から聞きましたか?」
被告人「本人です」
弁護人「何時聞きましたか?」
被告人「今から六年ぐらい前・・・・・・」
弁護人「他には誰から聞きましたか?」
被告人「他の大学に通っているY22から話を聞きましたし、私もゲームセンターやパチンコ屋で働いている時に、話を聞きました」
 弁護人は、Y22という人物の漢字について、被告人に尋ねる。

 3時7分から3時30分まで休廷となる。休廷中、被告人の両親らしき人々は、少し話をしていた。
 被告人は27分ぐらいに、少し頭を下げて入廷する。しかし、公判は40分から再開する事になり、被告人は退廷する。40分近くに、頭を少し下げて、再び入廷する。
 開廷前に比べて、傍聴人は少し増えていた。
 裁判長は、打ち合わせの為に少し遅れた、と述べた。

−マチダ弁護人の被告人質問−
弁護人「aさんの事件の後、二度目の事件を持ちかけられた3月24日まで、貴方は酒を飲みに行っていましたね」
被告人「はい」
弁護人「主に六本木ガールズに行っていた」
被告人「はい」
弁護人「貴方は、六本木ガールズで、Y23さん・・・Y23’さんを主に指名していますね」
被告人「はい」
弁護人「何時指名しましたか?」
被告人「3月の・・・・・中旬だったと思います」
弁護人「どういうきっかけで指名しましたか?」
被告人「前からやり取りはあったんですが、初めて昼間に電話して、その夜から指名するようになりました」
弁護人「通話明細記録を示します。3月11日の午後2時34分に電話をかけている。このくらいですか?」
被告人「はい」
弁護人「これから事件までの間に、お金をつぎ込み外で会うようになった、という記載がありますが、正しいですか?」
被告人「外でも会ってはいますが・・・・・氏名の2,3日後には付き添っていますので、お金をつぎ込んではいませんでした」
弁護人「この間、店の外で何回会いましたか?」
被告人「・・・・・・」
弁護人「大体で」
被告人「6回ぐらいです」
弁護人「どのくらいお金を使いましたか?」
被告人「10万ぐらいです」
弁護人「aさんの事件直後、貴方の所持金はどのくらいでしたか?」
被告人「30万くらいでした」
弁護人「そして、110万が入ってきましたね」
弁護人「この間、一番大きな買い物は何ですか?」
被告人「バッグだと思います」
弁護人「いくらですか?」
被告人「9万です」
弁護人「(事件の)話を持ちかけられた時、貴方の所持金はどのくらいでしたか?」
被告人「30万ぐらいです」
被告人は所持金を数えており、所持金がいくらか常に把握しているらしい。
弁護人「お金の持ち方について注意している事はありますか?」
被告人「事件前は、9万持ち歩く、という感じでした」
弁護人「事件後のデート中に、高根沢から電話がかかってくる事はありましたか?」
被告人「ありました」
弁護人「何回ぐらいですか?」
被告人「10回ぐらいです」
弁護人「3月26日、貴方は、Y23さんと一緒に出かけている」
被告人「はい」
弁護人「この日、高根沢から電話がかかってきたことは?」
被告人「・・・・・覚えています」
弁護人「どんな用件でしたか?」
被告人「スロットの代押しをしてくれ、と」
弁護人「其の時、貴方は何処にいましたか?」
被告人「大田の交通安全センターに居ました」
弁護人「何をしていましたか?」
被告人「Y23の免許の更新を」
弁護人「それで、(高根沢に)そう言いましたか?」
被告人「はい」
弁護人「高根沢は何と言いましたか?」
被告人「何時もどおり、『いいじゃんいいじゃん』と言い、強引に。電話をしても、切れていました」
弁護人「貴方ははっきり言いましたか?」
被告人「いいえ」
弁護人「高根沢は用事は言いましたか?」
被告人「いいえ」
弁護人「高根沢の調書では、デリヘルの女性とホテルに行っていた様です」
被告人「はい」
弁護人「貴方と同じく女性の事で用件があったわけですが、そう知っていたら、貴方は断りましたか?」
被告人「断れなかったと思います」
弁護人「何故断れないのですか?」
被告人「断れば怒りますので」
弁護人「3月24日、タイガージャンボの駐車場で、貴方は事件を持ちかけられましたね」
被告人「はい」
弁護人「何故タイガージャンボに行ったのですか?」
被告人「高根沢さんから呼び出されました」
 昼に高根沢から電話がかかってきて、夜に呼び出された。その昼、夜は、被告人は、Y23と何処かへ行き、夜はホテルに居た。
弁護人「昼の電話で高根沢は何と言っていましたか?」
被告人「茨城の方から戻る、とか、小山の方から戻る、とか、どちらか覚えていませんが、そう言っていました」
 高根沢は、約十日間、茨城に行っていた。
弁護人「この会わない10日間、どういった生活を送っていましたか?」
被告人「Y7やY6と、開放された状態ですね・・・・・・、気楽に過ごしていたと思います」
弁護人「何から?」
被告人「高根沢さんは、私の生活を把握していなければ気が済まない性格なので、支配から解放されました」
 被告人は、Y20と同棲し、家でごろごろして、ぼーっとしていた。
弁護人「何か考える事はありませんでしたか?」
被告人「一人で居る時は、aさんの事を思い出す事もありました」
弁護人「どのように?」
被告人「私のした事を思い出していましたし、高根沢さんの恐ろしさも感じていました」
弁護人「高根沢の恐ろしさとは?」
被告人「一緒の職場で働いていた同僚ですよね・・・・・その方を手にかけた恐ろしさですね」
弁護人「夜に、タイガージャンボに来いと、電話があった」
被告人「はい」
弁護人「其の時、貴方は誰と居ましたか?」
被告人「Y23と、高森のホテルに居ました」
弁護人「それで?」
被告人「(高根沢には)用事があると断りを入れましたが、結局何時もどおり、『来いよ』『いいじゃんいいじゃん』と呼び出され、Y23を家に送ってから行きました」
弁護人「Y23さんは何と考えていました?」
被告人「私と高根沢さんの関係を、仕方が無い、と考えていました」
弁護人「高根沢は、エスティマで待っていた」
被告人「はい」
弁護人「二番目の事件について、高根沢は、何と話を持ちかけましたか?」
被告人「金が無いから何処かやらないと不味いだろう、という話でした」
弁護人「今は、意味は解りますね」
被告人「はい」
弁護人「聞いた時は如何思いましたか?」
被告人「aさんの事が頭をよぎりました。またパチンコの従業員を殺して金を盗るのかな、と思いました」
弁護人「貴方は何と言いましたか?」
被告人「もう嫌ですよ、と言いました」
弁護人「ちゃんとそう言いましたか?」
被告人「柔らかい感じで言いました」
弁護人「文字で書くと、もう嫌ですよ、と言った?」
被告人「はい」
弁護人「aさんの時は言いましたか?」
被告人「言っていません」
弁護人「ホテルからこさされた時は?」
被告人「言っていません」
弁護人「この時が初めてですね」
被告人「はい」
弁護人「何故この時は言えたのですか?」
被告人「aさんの一度目があったからですね・・・・・はい」
弁護人「高根沢と離れている間、aさんの事も考えていたんですね」
被告人「はい」
弁護人「高根沢に反対する事は思い切った事だったんですね」
被告人「はい」
弁護人「嫌がっていると、高根沢は気付いた?」
被告人「解りませんが・・・・・薄々、嫌がっているのは感じ取っているのではないか、と思います」
弁護人「それで、高根沢は何と?」
被告人「『じゃあどうするんだよ』と。それに、デリヘルの女の子が集まるまでもたない、と」
弁護人「当時の貴方の所持金は幾らでしたか?」
被告人「30万です」
弁護人「すぐに使ってしまう金額ですか?」
被告人「一人なら、三ヶ月はもちます」
弁護人「高根沢はデリバリーヘルスを持ち出しましたが、貴方はどうしました?」
被告人「断りました」
弁護人「何と言って?」
被告人「『それでも嫌ですよ』と」
弁護人「それで、高根沢は引き下がりましたか?」
被告人「いいえ」
弁護人「高根沢は何と言いましたか?」
被告人「『一件目は俺が出したんだから、今度はみっちゃんが出せよ』と言いました」
弁護人「それで?」
被告人「私は、パチンコ店内部のことを知らないので」
弁護人「それで、高根沢は?」
被告人「自分の勤めていたパチンコ店の名前を出しました。タイガーエンドレス、パチンコ大学」
 タイガーエンドレスにする事に、高根沢は決めた。
弁護人「それで、高根沢とはどう言って別れましたか?」
被告人「高根沢さんは、『タイガーエンドレスの鍵を誰が持っているか確かめよう』と」
弁護人「それで、貴方はどうしましたか?」
被告人「『いいですよ』と言って断りました」
弁護人「でも、現実には、タイガーエンドレスに行っていますね」
被告人「はい」
弁護人「何故行ったんですか?」
被告人「高根沢さんが、しつこく、『行くだけだから』と言いましたので」
弁護人「何時着いた?」
被告人「5時です」
弁護人「タイガーエンドレスに行く事になったのは?」
被告人「高根沢さんから電話で呼び出されました」
弁護人「タイガーエンドレスで、当日、24日に、鍵を持っている人を探す話だった」
被告人「はい」
弁護人「もっと踏み込みそうになりましたね」
被告人「はい」
弁護人「途中で、鍵を持っている店員を襲って鍵を奪おう、という話も出た」
被告人「はい」
弁護人「高根沢の予想では、鍵を持っている店員は何時退店すると?」
被告人「6時だと」
弁護人「現実にはどうでしたか?」
被告人「出てきませんでした」
弁護人「高根沢の考えは変わりましたか?」
被告人「変わりませんでしたが、知り合いの従業員を探して、(知り合いの店員から)何時も遅いと聞いたので、苛々しだした様子でした」
弁護人「高根沢は、苛々しだすとどういう様子になりますか?」
被告人「段々と・・・・その・・・・・そうですね、喋り方が、声が低くなったり、喋り方が早くなったりします」
弁護人「高根沢は、他に、鍵の確認以外にどうしようという話はしましたか?」
被告人「後をつけて襲おう、という話になりました」
弁護人「貴方は何と言いましたか?」
被告人「『車だから無理ですよ』と言いました」
弁護人「他に高根沢は、(パチンコ店員の)家に押し入る話もした」
被告人「はい」
弁護人「貴方は何と言いましたか?」
被告人「『近所の人にすぐ通報されるから止めた方が良いですよ』と言いました」
弁護人「貴方の真意は如何でしたか?通報されなかったら襲っても良いと考えていたんですか?」
被告人「いいえ。直接嫌といえば怒り出すので、遠回しに言いました」
弁護人「高根沢は何と言いましたか?」
被告人「怒り出して、『じゃあどうするんだよ』と言いました」
弁護人「無理な命令をしませんでしたか?」
被告人「『一人で朝まで見張ってろよ』と言いました」
弁護人「それで、貴方はどうしましたか?」
被告人「断りました。『朝店員と一緒に押し入って金を奪え』とも言われたので断りました」
弁護人「それは、どれもエスティマの中で話した事ですね」
被告人「はい」
弁護人「高根沢は、口で話す以外に何かしましたか?」
被告人「私に近付いてくる感じでした」
弁護人「高根沢がアクションを起こした事はありますか?」
被告人「断り続けていたら、ハンドルを殴りだした事もありました」
弁護人「エスティマのハンドルを殴りだした」
被告人「はい」
弁護人「何回殴りましたか?」
被告人「3回とか4回とか」
弁護人「如何思いましたか?」
被告人「怖いと思いました」
弁護人「ハンドルを殴りながら、口でも何か言っていましたか?」
被告人「『じゃあどうするんだよ』と言っていました」
弁護人「それで、貴方はどうしましたか?」
被告人「何か言って収めなければいけないと思い、『タイガージャンボは如何ですか』と言いました」
弁護人「何故?」
被告人「よく行っている店なので」
弁護人「高根沢は如何反応しましたか?」
被告人「店員が一人で帰ると話した所、怪しんでいるようでした」
弁護人「高根沢は何を疑っていたんですか?」
被告人「話を逸らす為に私がそういうことを話し出したと、疑っていたと思います」
弁護人「貴方は、色々な話をもっていって話をそらす傾向があったんですね」
被告人「はい」
弁護人「高根沢は、話を逸らしていると疑った」
被告人「はい」
 被告人は、タイガージャンボのY19部長が一人で帰ることを、Y12と組んでいる時に聞いていた。
 高根沢は、「タイガージャンボでは三ヶ月ぐらい働いた事があるんだよ」と、乗り気になった。
弁護人「貴方は、高根沢がタイガージャンボで働いていたと知っていましたか?」
被告人「いいえ」
弁護人「保存の方法などは話しましたか?」
被告人「詳しくはないんですが、金庫や金庫の鍵の場所を話しました」
弁護人「高根沢は乗り気になっている」
被告人「はい」
弁護人「如何思いましたか?」
被告人「はっきり言って、不味いなあ、と思いました」
弁護人「否定する発言はしていない?」
被告人「はい。乗り気になっていたので、銀行の人が来ている、bさんとはポイントの事でもめた事があるから不味い、と言いました」
弁護人「bさんの他にももめた人は?」
被告人「Y19部長です」
弁護人「何故そう言った?」
被告人「もめた事があるので私達がやったとすぐ解る、という意味です」
弁護人「否定的な発言について、高根沢は何と言っていましたか?」
被告人「銀行には売り上げの金のみを持って行っていて換金用と両替用の金はあるから大丈夫、と言っていました」
 被告人は、Y6、高根沢と共に、3月17日にドライブに行った。
 また、被告人は、Y12の家を、2月17,8日に出た。
弁護人「どういうきっかけで家を出たのですか?」
被告人「喧嘩して、じゃ、でてけ、と言われて、私が出て行きました」
弁護人「前々回、Y12さんは証人として出廷しましたね」
被告人「はい」
弁護人「家を出てからも、メールのやり取りをしていた?」
被告人「はい」
弁護人「離婚したのは、平成11年ぐらいですね」
被告人「はい」
弁護人「離婚して4〜5年一緒に暮らし、肉体関係もあった」
被告人「はい」
弁護人「この日(3月17,8日)は、Y12さんと何時会う約束がありましたか?」
被告人「私がX2の働いているスナックまで行くという話でした」
弁護人「二時閉店後、という話には?」
被告人「客の出入りによって、11時12時にもなりました」
弁護人「貴方は、Y6さん、高根沢とドライブに行った」
被告人「はい」
弁護人「X2さんとの約束には遅れますね」
被告人「はい」
弁護人「X2さんからメールは?」
被告人「来ました」
弁護人「それに返事を打っていますね」
被告人「はい」
 弁護人は、明細記録を示す。11時45分から0時1分まで、ずらずらっと並んでいる。
弁護人「約束はどうなっている、早く帰ってきなさい、と」
被告人「はい」
弁護人「早く帰りたいと思いましたか?」
被告人「高根沢さんに無理やり言われました」
弁護人「Y6さんはドライブに喜んで行っていましたか?」
被告人「いいえ、無理やり」
弁護人「Y6さんは、普段から、高根沢に言わない?」
被告人「言えませんね」
弁護人「貴方の友人の中に、高根沢を拒否できる人は居ますか?」
被告人「居ません」
弁護人「明けて3月18日に、代打ちするように高根沢から電話があり、貴方は代打ちに行きましたね」
被告人「はい」
弁護人「Y18さんと会った日に、ホームセンターに行きましたね」
被告人「はい」
弁護人「どういう順で行きましたか?」
被告人「フレンドに行って、代打ちに行って、みさと屋で食事をして、コメディに行って、Y18さんと会いました」
弁護人「コメディに行こうと言い出したのは?」
被告人「高根沢さんです」
弁護人「何と言いましたか?」
被告人「『道具を買いに行こう』『ロープを買いに行こう』と」
弁護人「何と思いましたか?」
被告人「aさんと同じですね」
弁護人「ロープやガムテープを買いに行っている」
被告人「はい」
弁護人「aさんの時は如何思っていましたか?」
被告人「縛ると」
弁護人「コメディに行って、何を買いましたか?」
被告人「ロープと手袋」
弁護人「ロープは誰が選びましたか?」
被告人「(高根沢が)『この間より太いのが良いな』と言っていました」
弁護人「理由は?」
被告人「覚えてないです」
弁護人「手袋は?」
被告人「二艘買いました」
弁護人「手袋を選ぶ理由は何だと高根沢は言っていましたか?」
被告人「aさんの時は手が痛かった、と言って、皮製の物を買っていました」
弁護人「Y18さんと別れて何処へ行きましたか?」
被告人「フレンドへセドリックを取りに行きました」
弁護人「それから何処へ行きましたか?」
被告人「プラスに行きました」
弁護人「そのパチンコ店は何処にありますか?」
被告人「フレンドの近くです」
弁護人「何故行ったんですか?」
被告人「プラスと言うパチンコ店は駐車場を閉めないので」
弁護人「プラスに着いて、セドリックの鍵を閉じこんだ」
被告人「はい」
弁護人「それで、どうやって開けましたか?」
被告人「高根沢さんがスペアキーを持っていたので、それで開けました」
弁護人「セドリックを受け取ったのは?」
被告人「2月27日です」
弁護人「セドリックの代金40万円は既に支払っていますね」
被告人「はい」
弁護人「何故高根沢が貴方の車のスペアキーを持っているんですか?それを偶然知ったんですか?」
被告人「はい」
弁護人「質問はしましたか?」
被告人「しませんでした」
弁護人「スペアキーを返してください、と要求しましたか?」
被告人「しませんでした」
弁護人「おかしいとは思いませんでしたか?」
被告人「思いました」
弁護人「何故言わないのですか?」
被告人「矢張り、怖いからです」
弁護人「タイガージャンボで、Y19部長を見張っていましたね」
被告人「はい」
弁護人「何時出てきましたか?」
弁護人「それでどうしましたか?」
被告人「南に止めてあった車に乗って帰って行きました」
弁護人「予想していましたか?」
被告人「いいえ」
弁護人「高根沢は、(Y19部長が)ワゴンRに乗って帰るのを見て、どう言いましたか?」
被告人「『あれでは早すぎる』と言いました」
弁護人「何に対して早すぎると言ったのですか?」
被告人「車に乗ってとっとと帰っていく事だと思います」
弁護人「Y19部長と一緒に出てきた人が居ますね」
被告人「はい」
弁護人「誰でしたか?」
被告人「bさんです」
弁護人「高根沢は何か言いましたか?」
被告人「『あれ、何で二人なの』と言いました」
弁護人「bさんは出てきてから如何しましたか?」
被告人「私達から見て左に歩いていきました」
弁護人「左側には何がありますか?」
被告人「換金所などがあります」
弁護人「それで?」
被告人「高根沢さんが『何処行くの』と聞いてきたので、自転車置き場がある、と言いました」
弁護人「貴方は、bさんが自転車に乗って帰ることを知っていた」
被告人「はい」
弁護人「何故知っていたのですか?」
被告人「見た事がありますので」

−別の弁護人の被告人質問−
弁護人「aさんの首にロープをかけたとき、aさんは言葉を発していましたか?」
被告人「はい」
弁護人「何と言っていましたか?」
被告人「『殺すつもりだったのか』と言っていたと思います」
 被告人は、小声になっていた。
弁護人「声を出していた」
被告人「はい」
弁護人「ロープに指がかかっていた事は?」
被告人「高根沢さんから聞きました」
弁護人「高根沢は何と言っていましたか?」
被告人「『指が挟まっていたんだよ』と。それと、暴れたので殴った、と聞きました」
弁護人「貴方は、指が挟まっていたとは知らなかった」
被告人「はい」

 これでこの日の被告人質問は終わった。
 弁護人から、前回の公判から、被告人の手紙が17通証拠請求された。情状として請求され、検察官は全て同意する。それらは、全て採用された。
 事実取調べ請求もなされる。
 被告人は、Y2やX2に折々手紙を送っているが、X2への手紙の中で「高根沢さんが嘘をついているが仕方が無い。対等な関係である筈が無いでしょう。調書では俺に少しでも押し付けようとしている。」「高根沢さんの嘘があまりにもひどいので、大変な事になってしまうかもしれない」と書いていた。
 次回は3月22日1時30分からに指定され、被告人質問を続行する事になる。
 公判は、4時48分ぐらいに終了した。

 閉廷後、被告人は、弁護人に囲まれて何か話していた。
 休憩後の被告人質問では、傍聴人が小声で話していた。bさんの遺族かも知れない。
 廊下では、bさんの遺族と思われる初老の女性が泣き崩れており、被告人の母が頭を下げていた。
 bさんの遺族と思われる初老の男女は、エレベーターのある廊下で、職員から何か説明されていた。被告人質問に不満を述べているような感じだった。

事件概要  小野川被告は高根沢死刑囚と共に、強盗目的で以下の犯罪を犯したとされる。
1:2003年2月23日、群馬県宮城村でパチンコ店員を殺害し、遺体を川に遺棄したた。
2:同年4月1日、群馬県太田市でパチンコ店員を殺害し、遺体を川に遺棄した。
 小野川被告は7月20日に逮捕された。
報告者 相馬さん


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