裁判所・部 東京高等裁判所・刑事第八部
事件番号 平成17年(う)第1764号
事件名 殺人、銃刀法違反
被告名 A、B
担当判事 阿部文洋(裁判長)
日付 2006.2.21 内容 判決

 この事件の判決公判は、725号法廷で、1時30分から行われた。
 入廷前には荷物預かり、金属探知機によるチェックが行われた。
 傍聴人には、マスコミ関係者らしき人が散見された。暴力団関係者らしき人は居なかったような気がする。
 被告人は、前頭部の禿げ上がったスーツ姿の中年男性と、ジャージ姿の、髪を短く刈って眼鏡をかけた小太りの中年男性。どちらがどちらかは解らなかった。

 被告人両名は、証言台の前に立たされ、裁判長に名前を聞かれる。両名は、それにきびきびとした声で答える。

−主文−
 原判決を破棄する。被告人両名をそれぞれ懲役20年に処する。Bに対しては、未決期間600日を算入する。(Aの算入未決期間も述べていた)

裁判長「戻って座って聞いていて」
被告「はい」
 両名は、礼をして被告人席に戻る。

−理由−
 被告等は、殺人、拳銃発射罪、拳銃所持罪で起訴される。しかし、拳銃発射罪と拳銃所持罪は二重起訴であり、起訴権の乱用である。
 弁護人は、本件のような重大犯罪にこそ積極的に自首減刑を認めるべきであると主張する。自首は認められるが、減刑されるか否かは、判断次第であり、論旨に理由は無い。
 量刑不当の主張については、Aについて検討するに、同人は、Bと共謀の上、殺人、銃刀法違反の罪を犯した。
 Aは、Bと共謀の上、aを殺そうと試みる。二人は、殺意を持って、aめがけて至近距離から四発の銃弾を連続して発射し、同日、aを臓器損傷による出血で殺害し、拳銃を不法に所持した。
 Aは、山口組系列の組の組長、Bは、同じ組の準幹部である。
 7代目の要求を拒否し、その後、ダンプカーが突撃する等の行為が行われ、その報復として被告人等はaを殺害した。反社会的である。
 Bが、Aの運転する車から降車し、aに銃を連射して殺害した。
 Bは、逃げようとしたaに、さらに銃を発射して殺害した。冷酷非情で極悪な犯行である。
 犯行後は、Aが「もういい、戻れ」と言って、車両に乗ったBと共に逃げ去った。
 AとBの責任は等しく、aの命が奪われた結果は重大である。
 aの妻は、瀕死のaの姿を目撃した。
 原判決の時点では、被告人両名に対し死刑を望み、示談して被告人両名からそれぞれ500万円を受け取った後も、両名を許せない、と述べている。
 事件現場の周囲は、団地に囲まれていた。
 Aの刑事責任は重い。しかし、当審になってから斟酌すべき事情もある。
 Aは、対立暴力団と和解した後、警察に自首している。捜査時や原審においては殺意を否認する等、不合理な弁解を行っているが、自首には違いない。
 捜査段階から不合理な弁解を行っているものの、当審においては、確定的殺意があったという原判決に沿う供述をするようになっている。
 賠償金はAではなく暴力団が用意したのではないか、という疑念は払拭できないが、とりあえず被告人両名は合計1000万円を被害者の妻に支払い、民事上の責任は果たしている。
 AとBが出頭した事で、迷宮入りしかねない事件が解決した。
 被害を弁償している事も考慮する必要がある。遅きに失した感はあるが素直に供述している事も考えると、無期懲役は重きに失する。
 Bの量刑については、Aとの共謀による殺人、銃刀法違反、単独での建造物損壊、脅迫である。殺人は役割分担が決められた凶悪な犯行である。
 Bは、Aから求められて拳銃を持ち歩き、Aから命令されて躊躇する事無くaに向けて銃を発射して殺害した。散発の弾丸を受けながら這って逃げようとしたaに対し、さらに発砲して殺害している。
 Bは、対立組織からの攻撃に対して、aへの攻撃に加わった。また、交際女性と付き合った相手に対して銃を突きつけて脅迫した。
 少年時から暴力団に所属し、一時は脱退したが、結局また入っている。
 しかし、Aと共に警察に出頭している。その後、Aを庇っていた。
 また、原審等では、不合理な供述をしていた。しかし、当審では確定的殺意を認めている。
 以上の諸般の事情に照らし、Bの量刑は、Aと共に自首した事により迷宮入りになりかねない事件を解決した事も考慮して決定すべきである。
 Aを懲役20年に処し、Bに対しても、懲役20年に処す。

裁判長「立って」
 被告人両名は立つ。
 裁判長は、二人に上告の説明をする。
 被告人両名は、礼をして退廷する。
 裁判長の声は小声かつ早口で聞こえにくかった。
 スーツ姿の被告は、やや伏し目がちに判決を聞いていた。

 傍聴人は、公判が終わるとすぐに退廷させられた。2時を少し回って終わった。

事件概要  両被告は2003年4月21日、栃木県さくら市の駐車場で、対立組織の幹部を射殺したとされる。
報告者 相馬さん


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