裁判所・部 東京高等裁判所・第四刑事部
事件番号 平成17年(う)第1100号:松崎
平成17年(う)第1101号:奥野
平成17年(う)第1102号:梶山
事件名 出資の受け入れ等法違反、組織的犯罪等法違反
被告名 松崎敏和、奥野博勝、梶山進
担当判事 仙波厚(裁判長)嶋原文雄(右陪席)秋山敬(左陪席)
その他 書記:田村嘉之
日付 2005.11.17 内容 判決

 開廷前に、二分間ほどの報道機関による撮影が行われた。記者席は十三席用意されていたが、座ったのは七人ぐらいだった。
 裁判長は、眼鏡をかけた、丸顔の、温厚そうな老人。裁判官は、眼鏡をかけた、四十代ぐらいと、五〜六十代ぐらいの男性がそれぞれ一人ずつ。
 検察官は、眼鏡をかけた細身でスーツ姿の五十代ぐらいの男性。
 弁護人は、全員で五人いた。

 梶山、奥野、松崎の順に入廷する。梶山、奥野は黒いスーツ姿。松崎は、ライダーが着るような黒服を着ている。三人とも頭は丸坊主だった。
 公判は、102号法廷で、10時30分から開始された。

 検察官が追加の証拠を出したため、本日は先ずは再開となった。
 証拠は、梶山に対する民事訴訟の訴状など。弁護人は全てに同意し、証拠採用して取り調べる運びとなる。
 証拠として裁判長が述べた物は、奥野の日本円に対する仮差押に関する報告書、仮差押の担保決定の報告書、仮差押の報告書など。

裁判長「結審し、予定通り判決を言い渡します。」
 先ずは、三被告の罪名を述べる。

主文:被告人らに対する原審判決を破棄する。
被告人松崎を、懲役4年6ヶ月及び罰金2000万に処する。未決期間320日を参入する。罰金を完納できなければ、5万円を一日に換算した期間、労役場に留置する。
被告人奥野を、懲役4年6ヶ月及び罰金500万円に処す。未決期間260日を参入する。罰金を完納できなければ、5万円を一日に換算した期間、労役場に留置する。2900万円を追徴する。
被告人梶山を、懲役6年6ヶ月及び罰金500万円に処す。未決期間270日を参入する。罰金を完納できなければ、5万円を一日に換算した期間、労役場に留置する。
原審破棄なので、当審の未決期間は、刑に参入される。

裁判長「没収はしないが、追徴はする、という事です。」
 ここで、記者席の記者たちは、一人を残して法廷を出て行った。
 奥野の弁護人の主張は失当である。
 違反貸付以前には、被告は財産を持っていない。違反貸付の利益の中に正当な労働の対価があったとしても、無視できるほど小さい。論旨に理由は無い。
 検察官の主張について。まず、三被告の犯情について述べる。検察官は、三被告に対し、さらに追徴を求めていた。しかし、一審においては、これらは追徴禁止に反するとして、没収、追徴をしなかった。しかし、これらは法に反するので、破棄を免れない、というのである。
 組織犯罪の場合、被害が判明するのは一部であり、損害賠償請求を行う被害者もごく一部である。
 犯罪収益の没収が禁止される範囲を狭く解し、裁判所の権限に委ねるのは不合理ではない。組織犯罪の場合、被害者が損害賠償を起こす事は少ない。原判決には賛成できない。
 梶山が主催し、松崎、奥野が幹部となり、違法貸付を展開し、マネーロンダリングを行い、犯罪収益を隠匿したものである。
 松崎は、被害者に対し弁償している。奥野は、五名のうち四名に弁償しているが、一名についてはなされていない。梶山は、本人は弁償していないが、他の二人により、ある程度の弁償は成されている。しかし、十二名に対してはなされていない。
 被害者が被害の回復を行う見込みが無い場合も没収不可能とした原判決は、破棄を免れない。
 三名の犯情を述べる。
 梶山は主犯格であり、金を上部組織に上納させ、利益も得ていた。犯行の件数や額からして、刑事責任は大きい。梶山は、主犯であり、前科も多数ある。
 松崎は、弁償をしており、婚約者も構成を助ける事を誓っている。前科は一つだけである。
 奥野は、指導監督を両親が約束し、罰金以外前科は無い。梶山は、共犯によるものではあるが、被害の弁償はなされている。また、三被告は、それぞれ反省の弁を述べている。
裁判長「裁判所の判断は以上です。没収に関しては解りにくかったかもしれませんが、様々な要素を考慮して、没収はしないが、徴収はする、という事です。未決期間ですが、原審と当審の期間があわせて差し引かれる。詳しくは弁護人から聞いてください。解りました?」
 どの被告かは解らないが、はい、と答えた。
 裁判長は上告について説明し、閉廷する。11時10分ぐらいの事だった。

 弁護人の内、一名は、紙に何かを書きながら、少し不満そうな表情を浮かべていた。
 奥野は、退廷時、弁護人と少し話をしていた。
 梶山は、身じろぎせず判決を聞いていた。退廷の時、傍聴席の、知人らしき男性に会釈していた。

事件概要  梶山被告は違法収益で約46億円の割引金融債を購入・換金し、他の金も含めて約51億円をクレディ・スイス銀行本店の無記名口座に移したとされる。
 松崎、奥野両被告はクレディ・スイス銀行香港支店元行員らとともに、約43億円の割引金融債を購入・換金し、同支店口座に隠したとされる。
報告者 相馬さん


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