裁判所・部 東京高等裁判所・第四刑事部
事件番号
事件名 出資の受け入れ等法違反、組織的犯罪等法違反
被告名 松崎敏和、奥野博勝、梶山進
担当判事 仙波厚(裁判長)
日付 2005.9.27 内容 初公判

 公判は、一番広い部類に当たる、102号法廷で行われた。開廷前、テレビ撮影が入った。傍聴席には、泣きじゃくっている男性の傍聴人がいた。事件の関係者かも知れない。
 まずは、梶山被告が入廷する。同被告は、白シャツに黒いスーツ姿。頭を丸坊主にしている。がっしりとした体格で、小太り。
 続いて、奥野被告が入廷する。同被告は、髪を短く刈った、痩せ気味の三、四十代の男。白いシャツに黒いズボン。
 最後に、松崎被告が入廷する。髪を短く刈った、がっしりとした体格の男。ライダーが着る様な黒い服の下に白いシャツを着ている。
 裁判長が、それぞれの被告人に、本人か否かの確認を取る。
 奥野被告は、一審では住所不定となっていたが、練馬に住所があるらしい。早口をたしなめられていた。

裁判長「梶山被告、恐縮ですが立ってください」

 梶山被告は、住所、生年月日、仕事などを話した。
 検察側は、追徴しなかった判決は誤りである、として控訴したらしい。

裁判長「検察からは、甲1−5号証、被害者からの民事訴訟と、報告書でよろしいんですな?」

 甲二号証は、松崎、奥野に対する証拠。
 (松崎の?)弁護人は、調書には同意。もう一人の、(恐らくは奥野の)弁護人は、採用には同意するが、調書は嘘なので証明力は争う、と述べる。
 弁護人たちも証拠請求をする。
 松崎被告には、判決の写しと、五分の被告人質問を請求。
 奥野被告には、父と、本人の、十分間の尋問を請求。
 梶山被告については、民事訴訟の訴状や、答弁書八通と、被告人質問を請求する。
 検察側は、それらのいずれにも同意した。
 まず、証人調べを先に行う。
 証人 O(奥野被告の父親)
 証人は、証言台に立ったとき、息子の方を少し見た。

−証人尋問−
弁護人「貴方は奥野被告のお父さん?」
証人「はい」
弁護人「貨物の運送業を自営している?」
証人「はい」
弁護人「貴方と、今日見えている奥さんは、離婚した後、息子さんとお話しすることはあった?」
証人「はい」
弁護人「息子さんから仕事の相談をうけたことは?」
証人「(息子が)高校を卒業しまして、マンションの不動産会社に勤めることになった時、相談を受けました」
弁護人「闇金の職についていたことは?」
証人「うすうす・・・」
弁護人「それについて意見は?」
証人「金融関係については、やめなさい、と」
証人「本人(奥野被告)は、辞めたいと言っていました」
証人「一年半ぐらい前ですね」
弁護人「面会には行っている?」
 七月と九月に行ったらしい。
弁護人「将来について希望は?」
証人「出てきたら受け皿として、一緒にやっていきたいと」
証人の兄は、飲食店を経営している。
弁護人「仕事については、とりあえず(被告人の)おじさんに世話になろうと?」
証人「はい」
弁護人「貴方は宅建の免許を持っている?」
証人「はい」
弁護人「それに関しアドバイスするつもりは?」
証人「あります」

−松崎被告に対する被告人質問−
弁護人「一審の判決について聞くが、情状証人となった婚約者のNさん、まだ籍は入れてないの?」
松崎「はい」
弁護人「籍を入れることになったのは、婚約者では面会がどうなるかわからないから?」
松崎「はい」
弁護人「(婚約者の)実家は沖縄だけど、話はどうなった?」
松崎「お互い子供ではないのだから、と」
弁護人「貴方の立場を、相手の親はわかっているね?」
松崎「はい」
 出所後は、婚約者の実家を手伝うつもりだったが、現在では、タクシー運転手でも何でもやるつもりらしい。
弁護人「香港に送った十三億円について聞きますが、検察官の控訴趣意書以外で、(十三億が)どうなったか知ってる?」
松崎「いいえ」
弁護人「山根の口座に入れただけで、後はわからない」
松崎「はい」
弁護人「貴方は、山根に対し不信感をもっている」
松崎「はい」
弁護人「この金が自分の下に戻るとは思っていない」
松崎「はい」
 ここで、松崎は涙声になる。
弁護人「このお金はなかったと思ってやり直したいと?」
松崎「はい」
検察官は、質問することは無いと述べ、裁判長が質問をする。
裁判長「一審判決について不満は?」
松崎「これといって・・・・・特にありませんでした」
裁判長「量刑不当ということですが?」
松崎「まあ、あの・・・・懲役刑という部分について」
裁判長「それについてどう思う?」
裁判長「それが少し重いと思っているのね?」
松崎「はい」
裁判長「梶山は民事裁判を起こされたが、貴方は?」
松崎「私については、無いです」

−奥野被告に対する被告人質問−
弁護人「Aの調書は読みました?」
奥野「はい」
弁護人「2003年、貴方と会って、資産運用の相談をしたとあるが、会ったの?」
奥野「ありません」
弁護人「香港にいた?」
奥野「いいえ」
弁護人「Aは、貴方と会ったことが無いというが?」
奥野「あります。メシを食ったこともあります」
弁護人「拘置所で何をやってる?」
奥野「教育係を」
 生活上のルールを教えている。今年の三月半ばから。
弁護人「そういう役回りをするのは何人くらい?」
奥野「珍しいです」
弁護人「真面目に拘置所で生活を?」
奥野「はい」
弁護人「どういう生き方や仕事をしたいと?」
奥野「家族ともっとゆっくり話をしたいと思う。不動産関係の仕事につきたい」
弁護人「最初に(不動産関係の会社に)勤めたとき、なぜやめることに?」
奥野「(会社の)業績が悪く、成績が悪いのと、若いのはやめさせられることに」
弁護人「貴方は?」
奥野「若い方です」
弁護人「(出所後)一旦、お母さんのほうに帰る?」
奥野「はい」
弁護人「とりあえずの仕事は?」
奥野「おじさんの所に入って面倒を」
弁護人「この事件には被害者がいるが、(奥野は)リーダーの一人だったが、どう思っている?」
奥野「本を読んでいる中で、経済的弱者に経済的暴力を振るってきたと思うようになり、反省しています」

−奥野被告に対する検察官の被告人質問−
検事「Aと面識があるのと、香港にいないという事だが、Aの資産運用については?」
奥野「まったくわからない状態です」
検事「被害者に対する弁償は、どう考えている?」
奥野「弁償した部分に関してですか?」
検事「弁償に関してです」
検事「・・・・・弁償できたのは少しだけで、ほとんど返せていない。誰にどれだけ貸し付けたかも不明。どう考えている?」
奥野「・・・・・・」
検事「賠償を求めてこないのも、経済的暴力て事かな?自分のやってきた事について考えてほしいという趣旨で聞いているんだが」
奥野「・・・・・・一部の被害者にしか弁償できていない。解らない人には申し訳ない」
検事「それで、どのように申し訳ないと?」
奥野「・・・・・」
検事「それを考えて欲しいんですけどね」

−奥野被告に対する裁判長の被告人質問−
裁判長「一審判決に不満は?」
奥野「ないです」
裁判長「刑の重さだけ?」
奥野「どれだけ重いかは、自分では解らないです」
裁判長「貴方に対して民事訴訟は?」
奥野「ないです」
裁判長「全く無い?」
奥野「はい」

−梶山被告に対する被告人質問−
弁護人「今回、証書で、貴方に対する民事訴訟の訴状を出しているが、貴方は、そんなものについて払う必要は無いのか、払うだけ払うのか、どういうつもりで答弁書を?」
梶山「払っていけるものなら払っていこうと」
弁護人「払える範囲で?」
梶山「そうですね」
弁護人「仮差押は、何について?」
梶山「ラスベガスのホテルに預けた二千万ドルです」
弁護人「異議申し立ては?」
梶山「してません」
弁護人「このお金は被害者に分配してもらってよい?」
梶山「はい」
弁護人「体調は?」
梶山「ポリープをとりまして、普通に生活しています」
弁護人「眠れないとかは?」
梶山「そういう場合もあります」
裁判長による被告人質問
裁判長「一審判決に不満は?」
梶山「裁判所の決めたことなので、ありません」
裁判長「判決などに対しては?」
梶山「私も人間なので、一日も早く帰りたいと思っています。社会復帰したい、と」
裁判長「民事訴訟については争わない?」
梶山「弁護士さんに任せています」
弁護人による被告人質問
弁護人「民事の裁判では、答弁書を出すだけで、反論はしていませんね?」
梶山「はい」
弁護人「(民事裁判の)判決を指定した書面も着ていない?」
梶山「はい」

 これで、控訴審の審理は終了。判決期日は、十一月十七日、午前十時三十分に指定される。

報告者 相馬さん


戻る
inserted by FC2 system