裁判所・部 東京高等裁判所・第十一刑事部
事件番号 平成13年(う)第1227号
事件名 殺人、死体損壊、死体遺棄
被告名 関根元、風間博子
担当判事 白木勇(裁判長)高橋徹(右陪席)忠鉢孝史(左陪席)
日付 2004.8.16 内容 被告人質問

 まず主任弁護人は、「風間被告は一連の事件は関根被告と志麻が勝手にやったことで、自分は死体を運んだだけと主張しているが、この事件はこういうことだったんですか?」と尋ねる。これに対し関根被告は「全て風間が考え、全員にそれぞれ役割があった。風間は遠藤を毒殺、志麻は他の3人を殺し、私がその死体を解体する、それが役割であります。この事件は風間がいなければやる意味もないし、必要もないです」と答えた。
 関根被告の風間被告より前の2人の妻には刺青がある。まず、最初の妻S子は男勝りで自分から刺青をいれ、次の妻のK美も、S子に負けたくないと自分から刺青を入れた。さらに風間被告も前の2人の妻に負けたくないといい、自分から両腕に竜の刺青を入れた。関根被告は、自分が無理強いしたわけではない、別に刺青をいれるよう言ったこともない。前の2人の妻に対する対抗心からだが、その気持ちはうれしいと思った、と述べた。風間被告との夫婦生活に関して、家庭内では商売の話や世間話もした。けんかもなかったし、2人きりで風間被告がだまっていることはなかったという。
 さらに、EさんとWさんは毒殺でしたね?この事件で使われたのは、犬を安楽死させる薬でした。これはどこで手に入れたんですか?という質問に、獣医のY先生からもらった。もらうとき、Y先生はいやな顔はしていなかった。Y先生からもらった薬は全て使い残さなかったと述べた。自宅の浴槽から毒薬が見つかったことについて、取り調べで警察に知らされるまで知らなかった。EさんとWさんを殺害したときの薬を残した覚えはないし、博子が保管していたとしか考えられない。やがては俺を殺し、志麻さんも殺すつもりだったのだろうと述べた。
 Kさん殺害事件について、2匹目の犬の契約をキャンセルされ、「金を返せ、関根の居所を教えろ」と博子に電話がかかってきたとき、何をされるかわからない、怖いと思ったが、金を返せば済むと思った。しかし、風間が金はないから殺すしかないと言ったので、志麻に殺しを持ちかけた。そして、Kさんが働いているコスモ・クリーンに志麻と一緒に行った。このときは何も用意はせず、殺すつもりもなかった。志麻にあれがKさんだと殺す相手をみせるぐらいの意味しかなかったという。風間もそのことに関しては特に何も言っていなかった。
 Eさん殺害事件に関して、風間被告の弁護人は関根被告と志麻が絞殺したと主張したが、これは間違いである。仮にそうだとしても、Eさんは体重が100kg以上あり、関根被告は当時60kgぐらいしかないので、そんなことはできない。博子と相談したときも絞殺は出てこなかった。また、毒のカプセルをEさんに渡したのは風間で、これはもし自分と志麻だけだったら、「お前が先に飲め」といわれるから、風間が渡すと事前に決めていたという。関根被告はEさんにKさん殺害の弱みを握られ、風間被告の財産を全てよこせと強請られていたと述べた。
 Sさん殺害について、風間被告はこの事件では起訴されていないが、これついてどう思うかという質問に対して、自分はこの事件で誰がどれだけ関わっているかわかっているが、これには納得がいかないし、おかしいと思うと述べた。
 主任弁護士の最後の質問は、風間被告とはかつて夫婦だったが、今はどう思っているかという質問で、これに対し関根被告は「ひでー女です。俺の物は全部自分の名義にして、借金は返さないで。自分は男だから、一番大きく見えるからって、事件は全部なすりつけて・・・」といい、最後に小さく「ひでー女です・・・」と答えた。
 次に風間被告の弁護人の内山弁護士が、Kさん殺害について質問をしました。まず、志麻とコスモ・クリーンに行ったことについて、このときは殺すつもりで行ったのではないというのは、前回の公判で言ったことと違うのではないか、行くときはやるつもりだったんでしょうという質問に関して、やるのではなく、あれがKさんだと志麻に見せるために行った。言い間違いだと反論した。しかし、「やる気では行きました」と前回の公判で言ったじゃないですかと言うと、「今のが正しいです。前回は話し方が下手だった」と述べました。さらに、「同じようなことを上から下から何度も聞かれると、何をしゃべっていいのかわからなくなる。うそをつくつもりはなかった」とも述べました。内山弁護士は「では言葉の使い方がわるかったのと、私が細かいことを聞きすぎたからああいう言い方になったんですか?」と尋ねると、「そうであります」と答えた。
 Kさん殺害の凶器に関して、絞殺に使われたヒモもどういうものだったか、という質問に、太さは親指より少し細いぐらいで、犬の運動に使うヒモですと答えた。Kさんの車の中から発見された細いヒモではない。いわゆる「リード」でもないと答えました。
 さらに、同じく風間被告の弁護人の植松弁護士が、Kさんに代金を返せといわれたのは、2匹分の代金ですかという質問に、「いいえ、2匹目の分だけです。1匹目は逃げたが、それでも義務は果たしていますから」と答えた。Kさんに650万円と車をつけて返すといったかという質問に対して「いや、金額はわらない。車というのも言っていない」と答えた。期日については、よく覚えていないが、恐らく事件の日にしたと思いますと答えた。
 Eさん殺害の際のカプセルを渡したことに関して、関根被告と志麻だけで行けば、「お前が先に飲めと言われる」ということは、Eさんに信用されていなかったのかという質問に対して、「私と志麻さんが行けば普通そう言われると思っただけです。ましてや犬の薬を扱っている私ならなおさらです。」と答え、さらに「今までEさんにカプセルなどを渡したようなことはない」と述べた。
 また、Eさんに強請られたことに関して、「例えばEさんと仲のいい人に風間被告の実家の財産を全部取ることをやめてくれるように言ってもらうことはできなかったのか」という質問に対して、「やっぱり(Eさんは)ヤクザだし、その時は女房(風間被告)の方がかわいかったんです。」と答えた。

 これで弁護側の質問は終わり、検察や裁判官の質問はなかったので、関根被告に対する被告人質問は終わり。この後は風間被告への被告人質問が行わた。

 風間被告は裁判長に一礼してから証言台の席に座った。
 風間被告の弁護人の植松弁護士の質問に答え、まず風間被告が関根被告と志麻と共謀し、Kさん、Eさん、Wさんを殺害したという一審判決の認定は間違っていると主張した。Kさん殺害事件について、Kさんが殺害された車を車庫に置きに行ったが、事件については知らず、自分はKさん殺害については関わっていないと述べた。また、Eさん殺害事件についても、関根被告人と志麻さんが殺害して、自分はその死体を運んだだけと述べた。よって、一審の認定は間違いであり、少なくとも殺人罪に関しては無罪だと主張した。
 ここで質問が変わり、関根被告と知り合いになった経緯に関する質問となる。
 風間被告は知り合いのAさんの紹介で関根被告と知り合ったという。Aさんは風間被告の前の夫の同級生で、そのとき風間被告は父親を亡くしていたので、その気晴らしに、動物が好きだったこともあって、関根の店に連れて行ったという。そのときはさみしかったので、それから関根被告と付き合うようになり、ついには結婚した。しかし、結婚してからしばらくして、関根被告は風間被告の実家の財産目当てで結婚したことを明かす。
 また風間被告の実家の財産は関根被告が調べたのかという質問に、Aさんが関根被告に話したと答えた。関根被告と会ってから結婚まで短いのはなぜかという質問には、親類から早くするようにと勧められたからと答えた。
 関根被告が多くの財産を持っていることには、ただ「すごいなあ」と思ったという。それについて、「つまりあなたはそのまま信じる性格なんですか?」と尋ねると、「そうですね」と答えた。
 関根被告と結婚したのは、株式会社アフリカ・ケンネルのこともあったが、明るくて力強く、当時4歳の、自分の子供のFくんにも優しかったから、いい父親になってくれると思ったからだという。Fくん本人は父がいなくて寂しいとは思わなかったようだったが、自分がどうしても息子にいい父親をつけたかったと答えた。
 関根被告は刺青を入れていて、小指が欠損しているが、そういう人がいい父親になると思ったのかという質問に対しては、小指がないのは動物に噛まれたから、刺青はただの趣味と言っていたから、そんなに怖い人とは思わなかったと答えた。弁護人は「そういう風にしているだけではないのか」と質問した(風間被告がどう答えたか聞きとれなかった)。風間被告の母の姉が関根被告のことを調べてもらったところ、いろいろとよくない噂が出てきたので母親が結婚を反対していたが、風間被告は昔の話だし、母が大げさに言っているだけと思い、気にしなかったという。
 入籍したとき、関根被告が風間被告の籍に入ったが、そのことを変に思わなかったという質問に対し、特に変とは思わなかったと答えた。風間被告と関根被告の結婚生活は、Fくんも含めて3人暮らしで、最初はごくふつうの結婚生活だったという。しかし、風間被告は関根被告の親族に会っていないとも述べた。関根被告の収入は、株式会社アフリカ・ケンネルの動物販売からと言っていたが、実際はわからないと付け加えた。しかし、生活することはできた。必要なものを買うときは、買い物も一緒に行っていたという。生活費は今月分をまとめて風間被告にわたすなどのことはなく、当初は犬の販売だったが、後に車の事故の仲裁や債権の取立ての報酬などを収入として、風間被告に渡していたという。
 しかし関根被告が、結婚は財産目的だったということを明かしてから、態度が変わったという。
 「一審の第58回公判で、平成3年ごろに関根被告から自殺を勧められたと供述していますね、これはどういうことですか?」という質問に、関根被告は頭にくると「これだけ言ってもわからないのか。よく生きてられるな。早く母親を殺せ」などと怒鳴ったという。またFくんに対しても、最初は優しかったが、結婚から3年ほどで態度が変わり、昭和61年ごろからはオオカミに噛まれるなどの不審な怪我をよくするようになったという。このとき、Fくんは瀕死の重傷を負ったが、関根被告は「助かったからって、俺には関係ないけど」などと吐き捨てたという(一審第58回公判より)。また、Fくんとは「飯がまずくなる」からと言い、一緒のテーブルで食事を取らせなかったため、風間被告は関根被告が帰る前にFくんに食事を食べさせたという。
 「つまり、結婚する前と後では、関根被告のイメージは変わったということですね。大体どれくらいで変わりましたか?」という質問に、「大体3年くらいです。そのころからFくんへの態度が変わってきたので」と答えた。
 結婚する前は、「お前に楽をさせてやる。お前は何もしなくていい。」と言っていた関根被告だったが、同居し始めた次の日から犬小屋の掃除をやらされる。「全然言っていたことと違うんじゃないですか?」という質問には、「動物が好きだったので、嫌ではありませんでした。」と答えた。
 やがて、風間被告は平成3年ごろから離婚を考え始める。理由としては、関根被告の女性関係やFくんに対する態度、風間被告の母親に対する暴言などがあった。特に母に対する暴言の中には、「早く自殺しろ。お前の母親はいつでも殺れる。」などと言っていたという。このようなことから、風間被告は「なんとかしなきゃ」と思うようになる。しかし、関根被告には直前まで、離婚の話しをしなかったという。また母親にも、刺青のことや、反対を押し切っての結婚であったこともあって、愚痴をこぼすことや相談することもできなかったと述べた。
 風間被告は税務調査のときに、知人から弁護士を紹介され、離婚を勧められる。その話がでたときはそこまで考えなかったが、Fくんが金をとったとして、関根被告から玄関に全裸で座らされ、木刀で殴る、コンクリートのブロックをひざに乗せられるなどのひどい暴行を受け、包丁で腕を切り落とそうとしたことをきっかけに「このままでは(Fくんが)殺される。なんとかしなきゃ」と思い、離婚に踏み切ったという。このとき、風間被告も止めに入ると関根被告に蹴られたが、志麻が止めに入ったので風間被告は怪我を負わなかったと述べた。
 風間被告は、離婚を切り出すときは命がけだったと述べた。切り出すときは暴行を受けうかもしれない。しかし、ここで切り出さなければと思い、離婚届にハンを押してもらうことだけを考え、「別れてください。子供の親権は私にください。」と言った。
 また、税務調査のときに財産は関根被告にほとんど取られたとわかったと述べた。ローンの残っていた物件は「ローン付きのはいらいないから」といっていたのでもらい、逮捕されるまでローンを支払っていたという(引き落としになったが、最終的には競売にかけられることとなった)。
 このような経緯で離婚したのであるから、国税調査のための偽装離婚だとした一審の認定は間違いだと主張した。

 休憩後になると、ほぼ満員だった傍聴人も半分ぐらいに減りました。

 風間被告人は「あなたは一審の第59回公判において関根被告人のことを『自分だけの世界で自分を常に正当化させている』と言っていましたね。これはどういうことですか?」という質問に答え、気分で理由がなくても人のせいにし、自分がやっても自分のせいにせず、自分の行動に責任をとる前に責任を人に転嫁する関根被告の基準は「自分だけがよければいい」という自分の世界だけのもので、世間一般のものでなく、人間的誠意は期待できない人で、自分の持っていた倫理観は全く役に立たたなかった、と述べた(ここでいう誠意、倫理観とは、誠意をもって接すれば相手も誠意を持って返してくれるとか、親を大切にしなさい、協調性を重んじなさいなど学校の道徳の時間に出てくるようなこと)。例えば、人が間違ったことを指摘してもありがたいと思わず、徹底的に排除し、毛嫌いしたという。短気で感情の起伏が激しかったとも述べた。
 その後、関根被告の女性関係についての質問となる。
 関根被告は3人の女性と浮気をしていたという。3人とも隠そうとはせず、昼でも夜でも出入りしていたため、風間被告もこの浮気のことは知っていて、3人のうち2人に関しては名前も知っていた。浮気相手の女性から、(店に来たときに)従業員かと聞かれたこともあったという。
 しかし、このとき関根被告との関係がギクシャクしていたこともあって、風間被告は文句を言わなかった。自分やFくんへの関心がなくなればいいと思ったという。さらに、関根被告はソープにも通っていたが、これには「知りませんでした」と答えた。これらの女性関係も離婚の原因に多少はなったが、重くはないと述べた。
 次に風間被告は結婚から犬の売買に関与するようになったと述べた。
 最初は犬の売買の話はできなかったが、次第にできるようになったという。
 原判決19ページによると、関根・風間両被告は詐欺的商法を展開したとあるが、これについてどう思うかという質問に、「今考えるとそう言われても仕方ないが、(当時は)そうとは思っていなかった」と答えた。
 また、一審判決の中には、「関根被告が日頃から途方もない虚言を言っているのを熟知していた」とあるが、これについて、自分(関根被告)はヘリコプターを持っているなどのホラ話をしたが、話し方がうまので引き込まれていき、その中で犬の話が出てくるとショーケースの前に連れられて、客は犬を買ってしまうのだという。
 関根被告は犬舎と店を分けたが、関根被告の商売方法に疑問を抱いた風間被告と、女性関係から自分のいる店から風間被告が犬の世話をする犬舎を分けたい関根被告との利害が一致したため、店と犬舎を分けることになった。
 店の売り上げは上下があるが、大体200万円で、店員は1人か2人。経費は収入でまかなっていたという。
 関根被告は犬を売って稼いだ金は風間被告に渡していたかという質問に、「これはうそです。」と答え、自分の分を差し引いて渡していた、と述べた。また、「関根被告は犬が好きで商売をやっていたのかという質問には、「金になるからやっていたんだと思います」とこたえ、機嫌が悪いと犬にあたっていたことを明かした。
 「関根被告はどんな犬が好きなんですか」という質問に、「あたっても次の日には明るく懐いてくる犬が好きでした。しかし、少しでも怯える犬には本当に怖いことをしてやるといって、いじめてました・・・」と答えた。
 一審判決の6ページによると、風間被告がいれずみをいれていることについて、「(風間被告は)関根被告の2人の前妻も(いれずみを)いれていたと聞き、関根被告との一体感を強めたいなどと考え始め、自分もいれずみをいれようと思った」とされている。さらに、いれずみをいれた後、知人にも見せていたともされているが、これに対し風間被告は「関根被告以外は人にいれずみを見せたことはないと答えた。
 いれずみをいれるとき、怖くは無かったのはという質問には、「そうは思わなかったが、親にもらった肌を傷つけることには抵抗を感じた。」と答えた。また、その当時(まだ関根被告が好きだった頃)は関根被告が好むことをやってみたいと思っていたと付け加えた。当時は一生一緒にいられると思っていたし、離婚なんて全く考えていなかったという。
 いれずみの図柄は彫り師が得意のもので、自分で選んだわけではない。
 いれずみをいれたことで、関根被告は満足そうだったし、一体感が強くなったと思ったと述べた。
 いれずみは、知人に見られたかもしれないが、自分から見せたことはないという。また、いれずみを入れたことで、犬の詐欺的商法をうまくやれるとは思わなかったと述べた。
 風間被告の母親は「自分の皮を全部使ってもいいから元に戻して欲しい」といったという。このときは、自分は親不孝だと思った。最も、今は後悔しているし、消せるなら消したいと述べた。
 このあとは、土地の売買や金の借り入れに関する質問がつづく。その中で、関根被告が風間被告の不動産を勝手に売ったり、風間被告名義で金を借り、風間被告を通しさえもせず直接金が関根被告のところに入ったなどということが明かされる。この中で、またも「つまりあなたは疑問に思ったり追及しようという傾向がない。そのまま受け入れる性格ですね?」、「はい、そうです」というやり取りがあった。
 また、志麻と知り合ったのは平成4年11月ごろ、ドックショーで関根被告の紹介で、知り合ったという。その後、志麻はしだいに店に来るようになったという。最初は大体週一回程度で、しだいに頻度が増えてきたという。風間被告と関根被告が離婚したあとは回数が減ったものの、1ヶ月経ってからは平日はほとんど店に来るようになったという。
 関根被告と志麻は女のことや仕事のことや夢みたいなこと(若い女をナンパしたとか、高い車を買って乗り回したなど)という話をしていて、気があいそうなかんじだったという。
 志麻が証人尋問のとき、「博子さんが(死刑判決を受けて)ここにいるのはおかしい」という証言をしたことについて、「自分の関与が言えないのでこういう言い回しになったが、いってくれてうれしかった」と答えた。これで、今日の質問はおわった。
 このあと、証拠整理が行われ、次回期日が確認されたあと、この日の公判は閉廷した。

報告者 Doneさん


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