裁判所・部	東京地方裁判所・刑事第４部
事件番号	平成31年合(わ)第34号等（裁判員事件）
事件名	強盗致傷、住居侵入、窃盗、暴行
被告名	Ａ
担当判事	��橋康明（裁判長）
その他	書記官：金澤美佳
日付	2021.10.13	内容	判決
被告人はスーツ姿で出廷、一目で邦人ではないことが分かるが真面目そうな風貌である。判決宣告中はうなだれているようにも見えた。通訳なし。 −主文− 　被告人を懲役11年に処する。未決勾留日数中620日をその刑に算入する。 −認定事実の要旨− 　起訴状のうち暴行は暴行幇助罪の事実認定に留まる。 　強盗致傷は被告人はＢ、Ｃ、Ｄ、Ｆ、氏名不詳らと共謀のうえ、平成31年1月5日11時頃路上でａ（当時27歳）の胸付近を足で蹴って転倒させ顔を壁面に打ちつけ「動くな」「刺すぞ」と脅迫し、ｂ（当時29歳）の顔面や頭部を拳で殴打して「刺すぞ」と暴行脅迫したうえその反抗を抑圧して現金8300万やキャリーケースやパソコンを奪った。ａは加療1週間の打撲等、ｂは加療19日間の頚椎捻挫等の傷害を負った。 　被告人は平成26年4月30日横浜地裁で宣告された窃盗の罪で懲役2年8月の言い渡しを受け平成28年8月にその刑を執行を受け終わった累犯前科がある。 −量刑の理由− 　中心となるのは強盗致傷で、被告人は共犯者と共謀のうえ、金品を強奪しようと企て、架空の出張買取に来た被害者2名に時間を仕向けて役割を分担して襲撃チームとして路地に入った被害者に待ち伏せしていて犯行道具を用意していた3名が背後から犯行に及んだもので非常に高度な組織性と計画性を有している。 　路上で白昼堂々大胆に行われた犯行で被告人は3名がかりで被害者2名の胸や顔を蹴って「刺すぞ」と脅して危険かつ悪質。財産的被害も8300万と極めて高額なもので、被害者が負った傷害の程度も軽くない。被告人は報酬目的で加担していて、話し合いで強盗目的であることに積極的に応じて犯行ではマスクその他を用意して背後から真っ先に蹴り倒し頭も蹴っていて、実行部隊として重要な役割を果たしている。 　他方犯行を計画立案する立場になく上位者に伺いを立てるなどしていたこと、結局報酬は受け取っていないことなど単なる手駒に過ぎなかった側面は否定できない。 　だが現金の強奪を確実に知ったうえで積極的かつ意欲的に自らの意思で加担していてその経緯に有利に見るべき事情はない。 　住居侵入、窃盗についても民家を物色したうえの計画的な犯行で家人を不在を狙ってマイナスドライバーを持参してガラスを割って施錠を外すなど組織的で手慣れた手口。無断で家に入られた被害者の感情も無視できない。引き続き行われた2件も時間があったからと安易に実行行為に及んでいて責任は重大。 　暴行についても奪われた金塊を取り戻すとして襲撃して拉致しようと複数で夜道の被害者の顔面にスプレーを掛けるなど結果は重大で組織性が高い。人違いで襲われた被害者の恐怖感は大きく、被告人は運転手役として犯行を容易かつ可能ならしめ貢献の程度は大きい。 　加えて被告人は累犯前科を含む前科3犯を有していて出所後2年半足らずで犯行に及んでいて規範意識の低さは明らか。 　強盗致傷1件で実行行為に関与して被害額が1000万以上で量刑検索システムで検索すると懲役3年〜14年の分布で懲役8年がピークになっている。実行行為かつ共同正犯と同様な事案のなかでもやや重い部類に位置づけられ、その他の事情や前科を加味すると相応に重い部類に位置する。 　一方、暴行は知らなかったと否認したり、強盗致傷は共犯者に従わざるを得ない状況だったと自己の責任を矮小化する供述をするなど事件に向き合っているかやや疑問があるが、犯行を反省していることや妹が監督を誓っていること、出所後鉄骨工として働いて更生に向けて努力していたこと、交友関係に多々影響を受けたことや共犯者が強盗致傷の被害者2名に各50万・暴行の被害者に400万の被害弁償を行ったことを考慮して主文の刑にした。 　訴訟費用は被告人に負担させない。判決に不服の場合は今日を含めて15日以内に控訴申立書を提出すること。 　傍聴席にいた被告人の妹（と一緒にいた2名）もある程度は覚悟した内容だったと話していた。判決では触れられなかったが被害金は未回収。
報告者	insectさん

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