裁判所・部 東京地方裁判所・刑事第17部
事件番号 令和元年合(わ)第379号(裁判員事件)
事件名 覚醒剤取締法違反、関税法違反
被告名
担当判事 下津健司(裁判長)秋田志保(右陪席)松下健(左陪席)
その他 書記官:樋口恵子
日付 2021.1.2.19 内容 判決

 被告人はスーツ黒髪の23歳の痩せた女性。入廷後と判決言い渡しのあと極まって号泣していた。

−主文−
 被告人を懲役8年及び罰金350万円に処する。未決勾留日数350日算入。
 その罰金を完納できない場合は金1万円を1日に換算した日数を労役場に留置する。
 覚せい剤は共犯者の判決ですでに没収されている。

−認定事実−
 被告人はC、B及び氏名不詳者と共謀のうえ、Bが営利目的でスーツケース1個に入った1972グラムの覚せい剤をマレーシアのペナン国際空港から新東京国際空港(成田)に密輸した。

(争点)
 本件仕事の内容は関係証拠によると、渡航費用30万、報酬50万、運搬役の紹介50万の合計130万となっていて違法なものと考えるのが常識である。ラインでもBは「危ないことするんじゃないの?」「ぶっちゃけ危ない?(笑)」
 などと送っている。Cとの「薬物〜」のグループ通話もあるが、この部分は被告人は聞いていなかった可能性はある。
 「あの話大丈夫だよね?」とも聞かれていて、Bが被告人との関係で不利な供述をする理由もないから、違法薬物であると認識していたことは明らか。
 被告人の認識はCの説明を聞いて違法なものかもしれないという疑念が生じていたはずである。
 被告人から「99%は大丈夫」「1%は何が危ないの?」「挙動不審になること」ともラインしている。
 運搬が違法行為だったと強く推認できる。
 弁護人はCの説明を年長者であり絶対的に信頼していて疑うことは一度もなかったというが、被告人とCの関係はキャバクラの従業員と客の関係で、親族や交際相手のような説明で納得できて信頼できる深い関係ではない。
 それにCは拳銃を扱ったり服役していたことがあったり刑事事件の被告人であったりむしろ不審な人物であり、それを信頼する根拠は全くなかったと言うべき。
 被告人の認識は当初は金(きん)→金を加工したもの→金箔のある幸福の壺と供述が変わっていてにわかに理解しがたい。
 「Cを疑ったことが一度もない」と弁護人の主張は採用できない。親友のBに頼むはずがない。
 被告人は見つからないだろうと安易に考えて特段の不安も抱いていなかった。
 また先立って友人女性が同じことをして無事帰国したこともきっかけではないが確信を強めた。
 被告人は積極的に関与し、運搬役と同額の報酬を得て、営利目的だった。他に弁護人が主張する点も採用できない。
 訴訟費用は被告人に負担させない。

(量刑の理由)
 被告人はCとBと共謀のうえ覚せい剤1972グラムを密輸した。
 覚せい剤の量は比較的多い。
 被告人は運搬役としてBをCに紹介して、連絡・調整役を担って果たした役割は重要なもの。
 報酬目的の動機に酌むべきところはない。それが違法薬物であると認識していた。
 被告人は不合理な弁解をして反省していないこと、若年であること、前科がないこと、 同種事案の量刑傾向、共犯者の判決内容を考慮して主文の刑にした。

報告者 insectさん


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