裁判所・部 東京地方裁判所・刑事第18部
事件番号 平成25年合(わ)31号等(裁判員事件)
事件名 建造物侵入、傷害致死、凶器準備集合
被告名 I、J’ことJ
担当判事 鬼澤友直(裁判長)日野浩一郎(右陪席)山田明香(左陪席)
その他 書記官:大川俊治
検察官:上保由樹、久富木大輔
日付 2013.11.11 内容 初公判

 傍聴券33枚配布に対し、約70名が傍聴希望し抽選が実施された。
 426号法廷にて審理。
 開廷前の報道カメラによる法廷撮影は無かった。
 傍聴人は手荷物を預け、入廷、及び再入廷の度に金属探知機によるボディーチェックを受けた。

 弁護側5名、検察側4名が在廷。
 弁護団には弘中淳一郎弁護士が在籍。
 10:01 I、J 両被告人入廷 拘置所職員4名が警護。
 I被告は長髪で痩せ形、J被告は短髪で小柄だが筋肉質な体型。両被告とも黒っぽいスーツに水色のネクタイを締め、革製サンダルを履いている。J被告は入廷・退廷の度に一礼をしていた。

 冒頭で検察より本件被害者氏名を秘匿として審理を進めたいと申請があり、裁判所が了承し本件被害者を法廷では「a」と呼ぶ事となった。

 両被告、裁判長に促され、証言台の前に移動し、人定質問を受ける。
裁判長「被告人、名前は?」
J被告「Jです」
裁判長「生年月日は?」
J被告「昭和53年7月4日です」
裁判長「本籍は?」
J被告「中野区・・・・・・」
裁判長「住所は?」
J被告「杉並区・・・・・・」
裁判長「職業は?」
J被告「無職です」
裁判長「被告人、名前は?」
I被告「Iです」
裁判長「生年月日は?」
I被告「昭和53年5月19日です」
裁判長「本籍は?」
I被告「杉並区・・・・・・」
裁判長「住所は?」
I被告「現在は引き払っています」
裁判長「職業は?」
I被告「無職です」

 両被告は被告人席に戻る。座る位置はI被告が弁護人の机の前の長椅子、J被告が弁護人の机の左斜め後ろに別々に座った。

10:05
○検察官起訴状朗読
・凶器準備集合罪について
平成24年9月2日(時間聞き取れず)、両被告は港区六本木「Z1」に対立する人物がいると誤信し、A等とともに凶器を持ち集合した。
・建造物侵入罪,傷害致死罪について
 平成24年9月2日3:43、「Z1」にて飲食をしていたaに対して、複数名にて暴行を加え、よって同日午前5:02、aを死亡させた。

 裁判長は両被告を証言台に移動させ、黙秘権について説明し、検察起訴状について認否を確認した。
I被告「間違いありません。
申し訳ありません」
弁護人「Iさんは凶器を準備していないしaさんを殴っていない。
殴打現場から少し離れたところにいた」
J被告「間違いありません」
弁護人「Jさんはaさんを殴っていないし、殴打現場から少し離れたところにいた」
弁護人は両被告の事をIさん・Jさんと呼んでいた。

10:10
−検察官冒頭陳述−
 本件は元暴走族グループ「関東連合」の元構成員・及びその後輩友人等が無関係の被害者を金属バットで何度も殴打し死亡させたものである。
 元暴走族グループ「関東連合」は警察から「準暴力団」として指定を受けている。
 事件当日、ロア六本木共同ビル周辺に本件共犯者16名が集合している。
 このうち関東連合元構成員は、A・B・CとI・J両被告であり、その他はCの後輩、及び友人である。
 「Z1」に侵入したのは9名、うち凶器を携帯していたのは6名である。
 元暴走族グループ「関東連合」は、キムラタイチロウ、コウジロウ兄弟のグループと対立関係にあり、キムラコウジロウを標的としていた。
 両被告人は本件被害者aとは事件まで面識が無かった。
 9月2日1:00頃 Aが「Z1」に来店しVIP席にて飲食を開始。
  Cはキムラ兄弟との対立を知っており、Aの来店を知りAに電話で連絡をした。
 同日2:00頃 AからI被告に電話があり「すぐに六本木に来るように」と指示を受ける。
 暴行時にCは全長45cmの大型ライト、Gは割れたビール瓶を携帯していた。
 両被告は暴行には参加していない。
 暴行終了後、待機していた2台のアルファードに分乗して逃走した。

10:23
−弁護側冒頭陳述−
 Iさん・JさんはAからの呼び出しから一時間以上経過後に六本木に到着している。
暴行時も暴行現場から離れた位置で立ち止まっており、手を出していない。
この様な行動を取ったIさん・Jさんの立場を汲み取っていただき審理をしていただきたい。
事件の背景について「関東連合」が起こした事件と言われているが、Iさん・Jさんが所属していた「関東連合」という暴走族は現在存在しない。
 暴走族を引退して真っ当な生活をしている人間もいるがヤクザになった人間もいる。
 ただ昔からの付き合いは続いたが、暴走族時代に総長であったAの個人的な後輩が付き合いに参加するようになった。
 現在の「関東連合」の実態は、Aとその後輩が中心となった集団である。

 5年前にカネムラという人物が殺害されるという事件が発生した。
キムラ兄弟グループの関係者らしき人物に殺害されており、立件されていないが状況から見てキムラ兄弟はクロである。
 カネムラはAの先輩にあたり、Aの誕生日会の後に殺害されている。
Aはこの事件によりキムラ兄弟を許せないという感情を抱くようになった。

 Iさん・JさんはAと同級生である。
Aは暴走族総長としてグループを統率していた。
 Aは気にいらない事があると、敵・味方を問わず暴力を振るった。
 JさんはAにバイクで轢かれ肋骨骨折を負った事があり、その現場をIさんも目撃している。
 本事件の共犯者、Aの周辺者は、Aに逆らえない状況であった。
 事件当時、Aは六本木の「Z1」にキムラコウジロウがいるとの情報を掴み、後輩を呼び集めた。

 Iさんは18歳で暴走族を引退し、その後は芳しくない生活を送っていたが事件の数年前に「このままではいけない」と感じるようになり、事件数か月前にアパレル関係に仕事を始め、暴走族関係者との付き合いは無くなっていた。
 Jさんは事件の数年前からマッサージ治療院を経営し、弟2人を従業員としていた。
休日は山登りに行ったりしていた。
Iさん・Jさんは自分の職務に忙しく、キムラ兄弟の事は忘れかけていた。

 9月2日、Iさんは六本木で友人と食事していた際、Aから「後輩がトラブルになっているから来てくれ」と携帯電話で呼び出されるが「新宿にいる」と嘘を言いタクシーで目黒に向かったが、再度Aから「てめえ来ねえのか」と連絡があり、六本木に戻った。
 Jさんは9月2日2:00頃、自宅にて就寝しようとしていたところ、IさんとAから電話で呼び出され、少ししてから家を出てタクシーで六本木に向かった。
六本木に着きコンビニエンスストアで時間を潰した後に「Z1」に向かっている。
 IさんとJさんは3:30頃に「Z1」付近路上に到着している。
 Aの呼び出しから1時間以上経過している。
 AはIさん・Jさんに「まずは俺が話をするから手を出さないでくれ」と言ったので、Iさん・Jさんともに「いきなり喧嘩にはならないだろう」思った。
 Iさん・JさんはAとその後輩の集団の後ろに付き、「Z1」に入った。
 Aとその後輩の集団はどんどんと店の奥に入っていき、突然奥からガラスが割れる音が聞こえた。
 Iさん・Jさんの位置からは奥の様子はよく見えず、急いで店を出て、ビルから出た。

 事件後、Aとその後輩達は海外逃亡した。
Iさん・Jさんにも「海外に逃亡しろ」という誘いがあったが拒否した。
Aからは「警察に何か言ったら殺す」と脅迫を受けたが、無関係の人を殺してしまったことを警察に話さなければならないと思い、1か月後に出頭を決め、実際に出頭した
 Jさんには法的に自首が成立する。

 Iさん・JさんはA・C等との実行犯とは責任が違う。
裁判を通じてIさん・Jさんが何をして何をしなかったのか考えていただきたい。

 裁判長「情状が争点という事ですか?」
 弁護人「起訴事実は争わないという事です」
 10:40 休廷

 11:00 審理再開
−検察官請求証拠取り調べ−
(検察・被告側が同意したもの 全12点)
 法廷内の左右上部にあるモニターにて説明。

・1.統合捜査報告書「Z1店内と侵入経路」について
 警察官が犯行現場を確認したのは9月2日4:50〜12:25までの間。
 モニターで店内への侵入経路は2種類あることを図と写真にて説明(店内の詳細写真・階段・ドアの開閉状況)。
 また犯行直後の現場にガラス片や血痕があった。

・2.警察官臨場時の被害者状況について
 本事件の救急隊の覚知は9月2日3:53(犯行後の約10分後)
 救急隊到着は4:01で被害者は仰臥位で、意識はJCS300・脈と呼吸無しであった。
 措置として心肺蘇生・気道確保を実施し、東京都港区三田1-4-17東京都済生会中央病院に搬送し、救急診療科高橋未來医師の診断を受けた。

・3.フラワーに遺留されたマグライトについて
 ライト部が31.3cm、取手部が13.5cmでSW部に血痕があり、また取手部が欠けていた。

・4.現場に遺留されていたガラス瓶片について
 長さ8.5cm、幅4.7cmでラベル部に血痕が付いていた。

・5、及び6.前記3,4の証拠品現物を被告人が確認、認否
 両被告は証言台前へ移動し、検察官より証拠品を提示される。
 I被告はマグライトについて「見覚えは無いです」、ガラス瓶片について「(見覚えは)無いです」と答えた。
 J被告はマグライトについて「「はっきりと断定出来ませんがCが持っていたと思います」、ガラス瓶片について「ありません(見覚えがありませんという意味)」と答えた。

・7.「Z1」への侵入状況について
 防犯カメラの分析結果より9月2日3:43:22〜3:43:37の間に「Z1」へ侵入している。
 ロア六本木共同ビル付近路上防犯カメラ、及び「Z1」店内防犯カメラの分析による被告人等の凶器携帯状況について
A ・・・凶器携帯無し
C ・・・ライト状の物を携帯
I ・・・凶器携帯無し
D ・・・バット状の物を携帯
E ・・・バット状の物を携帯
F ・・・バット状の物を携帯
G ・・・ビル付近路上では凶器携帯は無いが店内では割れた瓶状の物を携帯している
J ・・・凶器携帯無し
H ・・・バット状の物を携帯
(ここで法廷内モニターは消灯される)

・8.ロア六本木共同ビル付近への集合状況、及び同ビルからの逃走状況について
 9月1日、六本木にて飲食していた共犯者(共犯者名聞き取れず)は、元暴走族グループ「関東連合」が標的にしているキムラコウジロウと思われる人物を偵察にロア六本木共同ビルへ向かっている様子が防犯カメラに記録されている。
 9月2日1:56〜2:17、凶器準備集合罪共犯者のO・Mがドンキホーテ六本木店に行き、Mがジャージ上下・運動靴・Tシャツを持ちレジへ向かう様子、及びジャージ上下6着・運動靴6足・Tシャツを持ちレジにて会計する様子が防犯カメラに記録されている。
 AはKが運転するキャデラックに乗車し、ロア六本木共同ビル付近にて待機していた。
 3:15〜3:16頃、Bがタクシーでロア六本木共同ビル付近に到着し、待機している黒色アルファードに乗車し、その後Aが乗車しているキャデラックに左後ろドアより乗車した。
 I被告はキャデラック助手席に乗車し、その後降車しトランクから迷彩柄パーカーを取り出し着用し、再びキャデラックに乗車した。
 J被告は3:28ロア六本木共同ビル付近にて待機していた黒色アルファードに左後ろドアから乗車した。
 Aはキャデラックを降車した後、凶器準備集合罪共犯者Pと会話し、A・C・G・H・F・E・DとI・J両被告の9名が「Z1」に侵入した。
 3:43「Z1」店内にてaさんに暴行を加えた後、前記侵入者9名はロア六本木共同ビル付近路上に待機させていた黒色アルファード・灰色アルファードの計2台に分乗して逃走した。
 3:44のロア六本木共同ビル付近路上防犯カメラ映像に、前記侵入者9名は同ビルより走って出てきて黒色アルファード・灰色アルファードの計2台に分乗し逃走する様子が記録されている。この時点でキャデラックは既にロア六本木共同ビル付近より立ち去っていた。

・9.「Z1」店内にて暴行を加えた後の、店内での逃走経路について
裁判官、及び裁判員用のモニターにDVD映像を上映(傍聴人は映像を見られず)
12:05頃 休廷

13:30 審理再開
 傍聴人は午前中の約半数に減少した。
 検察官請求証拠取り調べの続き
・10.「Z1」店内への侵入状況について
 裁判官、及び裁判員用のモニターにDVD映像を上映(傍聴人は映像を見られず)

・11.被害者aさんが居た「Z1」店内VIP席(BOX席の形状)の照度取り纏め
 9月5日19:05〜19:55の間、「Z1」店長が立会い、犯行当時の照明を再現して警察官が照度を測定した。
 VIP席の北側・南側の2か所で測定を実施。なお参考として前記2か所において新聞紙を50cm離して読んだところ、文字が確認出来る状況であった。
 VIP席南側に警察官を座らせて顔付き近を測定したところ、33.6ルクス、VIP席北側にて前記同条件にて測定したところ54.4ルクスであった。
 なお、参考として晴れた日に警察署屋上の日蔭にて照度測定したところ1956ルクスであった。
 VIP席南側と北側は11m離れており、北側から南側を見た場合、南側座席者が背もたれに寄りかかっていると照明が顔に当たり顔が確認出来るが、背もたれに寄りかかっていない場合は顔が確認出来なかった。

−弁護側証拠申請−
(2点)
・1.照度単位「ルクス」について
WEBサイトより引用した資料を基に、「検察側は店内照度が33.6〜54.4ルクスとしているが状況により見え方が異なる」と説明した。
・2.「Z1」侵入者9名の侵入経路・逃走経路の位置関係について(モニターにて説明)
弁護側は前記侵入者9名についてそれぞれ1〜9の番号を付け、侵入時、及び逃走時にどの様な動きをしたのかを裁判官、及び裁判員用のモニターに再現した。(傍聴人はモニター再現を見られず)

−検察官請求証拠取り調べ−
・12.本件共犯者11名の判決結果について
東京地方裁判所にて11名が判決を受けている

建造物侵入,傷害致死,凶器準備集合に問われた共犯被告について
@ 平成25年10月17日 D・E 両被告 
懲役13年判決(求刑同15年 未決勾留日数の刑期算入 200日)
A 平成25年11月1日 C・F・G・H 4被告 
C 懲役15年判決(求刑同17年 未決勾留日数の刑期算入 210日)
F・G 懲役13年判決(求刑同15年 未決勾留日数の刑期算入 210日)
H 懲役12年判決(求刑同15年 未決勾留日数の刑期算入 210日)

凶器準備集合に問われた共犯被告について
@ 平成25年8月9日 K・L・M・N 4被告
懲役1年6か月 執行猶予4年判決(求刑同 未決勾留日数の刑期算入 110日)
A 平成25年8月9日 O・P 両被告
懲役1年6か月 執行猶予4年判決(求刑同 未決勾留日数の刑期算入 110日)
13:51 休廷

 14:10審理再開 
 事件目撃者男性の証人尋問が実施されたが、傍聴人が再入廷した際には既に証言台に衝立が設置されていて証人の姿は見えず、また氏名非公表であった。
−証人尋問(検察側質問)−
 aさんとは9月1日夜に初めて知り合った。
9月1日夜に友人と西麻布にて食事していて、その後西麻布のバーに行った。
友人とaさんが知り合いであり、バーでaさんと合流した。
 aさんがバーに来たのは9月2日0:30頃と記憶している。
aさんはTシャツにハーフパンツで足を怪我していた様子で、どちらかの足にサポーターをしていた。
 バーにて皆で酒を飲んだ後、友人が「aさんがフラワーに行く」と言うので、一緒に行く事にした。
 aさんが先にフラワーに行き、自分は友人と少し酒を飲んだ後にフラワーに行った。
 フラワーに着いたのは1:30〜2:00頃でフラワーに行くのは初めてだった。
 友人は後から来るとの事だった。

 検察官は法廷内の左右上部にあるモニターにフラワー店内の見取り図を映し、証人に入店してからの動きを示してもらった。

 店内は天井にオレンジ色の白熱灯があり、顔が判らない位に明るくなっていたと思う。
 コの字型の席にaさんとaさんの友人がおり、自分はaさんの顔見知りなのでaさんの隣に座った。
 aさんとは、仕事・将来の夢・aさんの半生について会話した。
 aさんは店を経営していると話していた。
 aさんは将来について「学生の時にアイスホッケーをやっていたのでゆくゆくは自分のアイスホッケーチームを持ち恩返しをしたい」と語っていた。
 aさんは店内では基本的にはずっと座りっぱなしだった。
 aさんの友人は頻繁に移動していた。
 aさんが暴行を受けた当時は店内バーカウンターで立ってタバコを吸っていた。
 ぼんやりタバコを吸いながらaさんの方向を見ていると、ガタンという音がしたので何だろうと思ったら集団で犯人が入ってきた。だいたい7〜8人だったと思う。
 集団の特徴は全体的に黒っぽい服と目出し帽が印象的だった。
 手に金属バットや鉄状の様な物を持ち、金属バットのグリップを下に向けて握りしめていた。金属バットを肩に担いでいた人もいたかも知れないが、はっきりと誰がどの凶器を携帯していたかは判らない。店内に侵入してきた集団は立ち止まる事無くaさんの座る場所に向かっていった。集団は手に持っていた凶器でaさんを殴り始めた。一人ではなく何人もが凶器を頭の横まで振り上げ両手で殴り、また右から左に水平にスイングさせる様に殴った。凶器を使用した暴行には4〜5人が参加していたと思う。回数は判らないが各人が3〜4回殴打し、30秒〜1分位は殴打が途切れる事無く続いた。
 aさんは頭を殴打され、最初は手で庇っていたが徐々に手が下がっていき、最後は手が下にダランと落ち、首を上に向け、脱力している様な状態になった。aさんの体勢が変わっていく最中にも殴打は続いた。aさんが抵抗する事は無く一方的にやられっ放しであった。
 暴行をしている犯人達は手加減している様子は無かった。店内には音楽が流れていたが、「グシャ」という今まで聞いた事が無い音が聞こえた。自分はaさんが暴行を受けている様子を見て、店内に居た黒人のセキュリティー担当者の肩を叩き「止めてくれ」と頼んだが、aさんの方向をライトで照らすだけで犯人達を止めてくれ無かった。
 逃走時、犯人達は纏まって帰っていく様な感じだった。帰り間際に最後に残っていた一人が力一杯に金属バットをaさんの頭に振り抜いてとどめをさしている様に見えたのが印象的だった。
 事件後、警察の目撃状況再現に協力している。
・店内バーカウンターでタバコを吸っている様子
・店内に犯人が侵入してきた様子
・犯人がaさんを囲んで殴打している様子
・犯人が帰っていく様子
(上記の写真は裁判官、及び裁判員用のモニターに映され傍聴人は写真を見られず)
 犯人達が逃走した後、aさんに駆け寄った。aさんの腹部が動いていて息があるように見えたので、同席していたaさんの友人に救急車を呼ぶように依頼した。aさんの顔は血だらけで原型を留めておらず、あまり思い出したく無い。
 もしかしたらまた犯人達が来るかも知れないと思いビルの外に出た。
aさんが暴行を受けた理由が判らなかったので、同席していた自分も標的にされるかも知れないと思った。aさんが心配になりビルに戻ると、セキュリティー担当者が非常口にaさんを移動させていた。その後、救急車・警察車両が来たので大丈夫だろうと考え、現場を離れた。
 aさんが死亡した事は翌日のニュースで知った。少し前まで喋っていた人が殺された映像が頭にこびり付いて離れずPTSDになり専門医のカウンセリングを受けている。事件から一年余り経過したが、当時の事はよく覚えており、記憶は確かである。事件当時は酒を飲んでいたが、自分は酒が強い方であり、泥酔はしていない。
14:46 休廷

15:09 審理再開
−証人尋問(弁護側質問)−
 暴行が行われた際、店内バーカウンターにいたのは自分だけだった。店内にはダンスミュージックがかなりの音量で流れていた。
弁護人「あなたが見た犯人の集団の中に迷彩柄の服を着た男はいましたか?」
証人「いなかったと思う。目出し帽の男が目立って印象的だった」
弁護人「犯人の集団はどのような凶器を携帯していましたか?」
証人「鉄パイプとか金属バットだったと思う。そこまで詳しくは判らない」
弁護人「犯人の集団はaさんの連れの誰かを殴ったりしていましたか?」
証人「そういう場面は見ていない」
弁護人「今と同じような質問を警察の取り調べで聞かれましたか?」
証人「聞かれていない」
弁護人「犯行後にaさん以外の人が現場に倒れていたという事はありましたか?」
証人「無いです」
弁護人「犯人の集団とaさんには何らかのやり取りはありましたか?」
証人「自分の記憶では、集団は入って来ていきなり殴り始めた」
弘中弁護人「犯人達の店内での立ち位置が特定されたのは何回目の取り調べですか?」
証人「何回目かは不明ですが、取り調べでは4〜5回は図を描いている」
弘中弁護人「証人は、aさんが暴行を受けている際はタバコを吸うために店内バーカウンターにいたという事ですが、何故バーカウンターにいたと特定出来るのですか?」
証人「知らない人と話していて疲れていた事もありタバコを吸いたかった。バーカウンターの床に段差があり黒人のセキュリティー担当者がいたので印象的でありよく覚えている」
弘中弁護人「あなたはaさんが暴行を受けている最中どの様な行動を取りましたか?」
証人「あっという間の事で動く間も無く呆然と立ち尽くしていました」
弘中弁護人「タバコの火はいつ消したのですか?」
証人「事件当時タバコは持っていたか灰皿に置いていたと思う。いつ消したか記憶に無い」

15:20〜15:22 裁判官と裁判員が法廷外に移動

−山田明香裁判官より証人へ質問−
山田明香裁判官「犯人の集団は店内に入ってきた時に、集団から離れていた人はいましたか?」
証人「あまり覚えていません」
山田明香裁判官「犯人の集団で凶器を携帯していなかった人はどうしていましたか?」
証人「暴行に目が行ってしまい、判りません」
山田明香裁判官「凶器を携帯していなかった人はどこにいましたか?」
証人「aさんのところには行っていません」
山田明香裁判官「凶器を携帯していた人はどこにいましたか?」
証人「aさんのところに行きました」
山田明香裁判官「7〜8人の犯人集団が店内に入って来て4〜5人が暴行を加えたとの事ですが、残りの集団の人達はどうしていましたか?」
証人「判りません」
鬼澤友直「以上で質問を終わります。本日はお忙しい中で来ていただき有難うございました」

15:25閉廷

報告者 S325さん


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