裁判所・部 東京地方裁判所・刑事第五部(単独係)
事件番号 平成21年刑(わ)第817号等
事件名 A11:昏睡強盗、詐欺、窃盗、電子計算機使用詐欺、大麻取締法違反、麻薬及び向精神薬取締法違反
A12:昏睡強盗、詐欺、窃盗、電子計算機使用詐欺
被告名 A11、A12
担当判事 A5雅高(裁判官)
その他 書記官:谷口
検察官:守山一郎、和田祥一、竹内大明、溝端寛幸、橋爪紘子
日付 2009.9.16 内容 追起訴

 傍聴席は関係者らしき柄の悪いダークスーツのホスト系の男たちなどでそれなりに埋まっていた。
 A11被告は乾燥した肌の長身で痩せた目の細いやさぐれた中年男性、A12被告は色白でスポーツ刈りのずんぐりした体格の暗い感じのするスーツの青年。

−起訴状朗読−
○7月23日付け公訴事実
 被告人両名はスナック「プラチナム」のオーナーの大山ことA1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10らと共謀のうえ、第一、被害者(当時56歳)を昏睡させたうえで金員を盗取しようと企て、0時50分頃美松でアルコール度の高いウーロン割りを言葉巧みに進め、エンジェルスでウォッカを飲ませて昏睡状態にさせ、同人名義のUCカードやみずほ銀行のキャッシュカード3枚を盗取し、盗取したカードから現金を窃取しようと企て、21日百人町のセブンイレブンの現金自動預け受け払い機にカードを挿入させて作動し、390万円を窃取した。第二、別表2記載の通り、Z1店の現金自動預け受け払い機にカードを挿入させて作動し、残高を表示する電子計算機に対し虚偽の情報を与えさせて300万円を丸の内センタービルディング内の被告人らの管理する口座に振り込み送金させた。
罪名および罰条:昏睡強盗、詐欺、窃盗、電子計算機使用詐欺。

○A11にかかる8月31日付け公訴事実
 被告人はみだりに正当な理由もないのに東京都練馬区のZ2において大麻2.5gや錠剤などを所持していたものである
罪名および罰条:麻薬及び向精神薬取締法違反、大麻取締法違反。

裁判官「それでは被告人両名は今検察官が読み上げた公訴事実に間違いはありませんか」
A12被告「A4やA3との共謀の事実を否認します。窃盗に関してもA5が390万円を引き出したと言われましたが、その件に関しては一切関わっていません。電子計算機使用詐欺については認めます」
弁護人「被告人の同様で、昏睡強盗と窃盗についてA3やA4と共謀した事実はなく、本件については無罪です」
A11被告「はい認めます」
弁護人「被告人と同様です」

−検察官の冒頭陳述−
 被告人の身上経歴等については従前通りです。大山が経営するスナックにはプラチナム、なつ、エンジェルス、美松があり、美松ではA6、A13、A7、A8らがホステスとして、A10らが客引きをしていました。プラチナムには大山高廣ことA1が経営者、A2が経理担当者、A3が従業員としていました。大山の指示でエンジェルスではA4が店長、A11がバーテン及び客引き、A12とA5がATMからの現金引き出し役、A14がホステスとしていました。クリスタルグループでは美松やなつの客をプラチナムに連れこんで酔い潰してキャッシュカードを奪うなどしており、大山の指示で「スピリタス」と称したウォッカで酔い潰させるなどエンジェルスでも同様の行為をしていました。A7とA9が被害者を客引きし、美松で接客しましたが、被害者はお酒をあまり飲みませんでした。そしてA6らのしつこさに気分を害し店を出た被害者を、A7やA9が後を追い、エンジェルスに連れ込むことにして、A4はA2にエンジェルスで酔い潰させることを指示して、被告人らもタタキをやるものと理解しました。その後A13が酔いつぶれた被害者のバッグや財布を抜き取り物色し、キャッシュカードの暗証番号を訊き出して、A4の指示でA5が21回にわたり390万円を引き出し、A4はうち100万円を自分が抜き取りました。またA4はA12に被害者の口座が凍結されるまでの間に300万円振り込み送金させるよう指示し、A12が実行しました。昏睡強盗事件のあとA11は練馬区のマンションに潜伏していましたが、大麻を持っていたのを捜査員に発見されました。
裁判官「弁護人ご意見は」
A12被告弁護人「全部同意します」
A11被告弁護人「いずれも全て同意します」

−要旨の告知−
・被害事実を明らかにしたもの
・被害者の供述調書で、被害者に20歳と60歳くらいのホステスが付き、20歳くらいの子に口にグラスを近づけてこられてますます飲まされた、「乾杯!」などと言って盛り上げられて大量に飲んで記憶が途切れ途切れになり、2万円ぐらいのお金を置いて店を出たというもの
・妻が銀行に行って現金が引き出されていることを言われたこと
・A5が390万円を引き出した状況
・A12が300万円を別口座に振り込ませたローソンの状況
・スナック美松の場所を特定したもの
・A2、A3、A4のそれぞれの供述調書で、A5は呼ばれるまで自宅マンションに待機していたこと、A2春香が被害者の対応をしたこと、A11とA12が被害者を外に連れ出したこと、報酬としてA11は6万円を受け取ったこと、A4が述べた出し子の重要性などが述べられている
・A6の供述調書で、平成20年に大山に言われてクリスタルに客を連れて行くようになった
・A8、A9のそれぞれの供述調書
・捜査報告書
・麻薬の鑑定書

裁判官「立証は以上と聞いていいですね」
検察官「はい」
 被害金は還付されているかという話が出たが、大部分は還付されて残りもその見込みだという。通貨偽造とともに昏睡強盗は法定刑が重く設定されているのでなるべく避けたほうがいい犯罪である。
 なお死者(損保ジャパン部長事件)を出したA6たちはおそらく強盗致死に訴因変更されているはずで公判前整理手続きが続いている。

事件概要  東京・歌舞伎町でデートクラブやスナックが 組織的に客をはしごさせ、泥酔させてカードを奪う昏睡(こんすい)強盗事件を起こしたとされる。被害者はアルコール度数が100近いウオツカを焼酎に混ぜられて昏睡状態になっていた。預金を引き出された後は路上に放置されることもあり、男性が死亡する事件も報告されている。
報告者 insectさん


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