裁判所・部 東京地方裁判所・刑事第二部(単独二係)
事件番号 平成21年刑(わ)第602号等
事件名 詐欺
被告名 D、C、B、A
担当判事 田村政喜(裁判官)
その他 書記官:生原
検察官:中澤康夫、岡田和人、吉田利宏
日付 2009.7.10 内容 追起訴

 定刻になり被告人2名は定位置に着席していたが、急遽その法廷で違う事件(CDを無断でコピーしたという著作権法違反)が入り、その2名(DとC)は一回退廷していった。そして前の事件が結審すると仕切り直しで入廷してくる。
 A被告は背の低い丸坊主の猫のような中年男性、B被告は真面目そうな黒い肌の中年男性、C被告は目の小さいスーツの男性、D被告は丸刈りで眼鏡をかけたルックスのいい男性。いずれもヤミ金従業員と聞いて納得するような風貌。検察官はひょろっとした若い男性で、弁護人は初老の眼鏡をかけた紳士1名。
 裁判官は冒頭に弁護人や被告人に「待たせて申し訳ありません」と開廷が遅れたことを詫びた。

裁判官「それではB被告人を除く3人は証言台の前に立ってください。3名については6月23日付けで追起訴があり併せて審理します。それでは検察官、起訴状を朗読してください」

−検察官の起訴状朗読−
○平成21年6月23日付追起訴状
 第一、被告人3名は共謀の上、金融会社を装って融資をすると嘘を言いあたかも融資に必要な諸費用が必要であるかのように装って金員を詐取しようと企て、氏名不詳者と共謀の上、別付表記載の通り、平成21年2月3日から同月6日までの間、前後4回にわたり、埼玉県川口市西川口のパシフィックソフィートZ1号室から、真実は融資を実行する意思も能力もないのにこれがあるように装い、aに対し、融資するには諸費用が必要等の文言欄記載の嘘を言い、同人をその旨誤信させ、前後8回にわたり、広島市ビックカメラ内の広島銀行ベスト銀行出張所のaの口座から銀行に開設されたイズミシンイチ名義の普通預金口座他1口座に計54万6000円振り込み入金させた。もって人を欺いて財物を交付させるなどしたものである。
 第二、被告人3名は共謀の上、金融会社を装って融資をすると嘘を言いあたかも融資に必要な諸費用が必要であるかのように装って金員を詐取しようと企て、別付表記載の通り、平成21年2月10日から、埼玉県川口市西川口のパシフィックソフィートZ2号室から、真実は融資を実行する意思も能力もないのにこれがあるように装い、bに対し、融資するには諸費用が必要等の文言欄記載の嘘を言い、同人をその旨誤信させ、同月12日、新潟県村上市のセブンイレブンに開設されたbの口座から、東京都の大井町の大東京信用金庫に開設されたキムラノリキ名義の口座に3万6000円を振り込み入金させた。もって人を欺いて財物を交付させるなどしたものである。
罪名および罰条:詐欺刑法第240条第1項、第60条。

裁判官「それでは検察官、被告人に別付表を示す形で」
 若手の検事が被告人3名に歩み寄り、冊子を捲って、「文言欄がこれで、振り込み年月日がこれで、振り込み口座がこれで・・」と丁寧に示していく。被告人は頷いていた。
裁判官「被告人には黙秘権があることは前回説明した通りですが、そのうえで今検察官が読み上げた事実に間違いはありますか」
A被告「間違いありません」
C被告「間違いありません」
D被告「間違いありません」
裁判官「弁護人、ご意見は」
弁護人「いずれも被告人と同旨であります」
裁判官「それでは証拠調べに入りますから、被告人は元の席に」

−検察官の冒頭陳述−
 検察官が証拠により証明しようとする事実は以下の通りです。
 動機などは従前の通りですが、犯行に至る経緯や犯行状況等についてですが、Aは平成20年4月からヤミ金を経営し、6月からは融資保証金詐欺を繰り返しておりました。Bは店長としてAのヤミ金で稼動し、6月からは同様に融資保証金詐欺を繰り返しておりました。Cは7月から加入し、8月から詐欺の実行役として加担していました。Dは11月7日から加入し、同月の中旬から騙し役として加担していました。A、C、Dは平成21年1月中に上からの指示で融資保証金詐欺を止め、ヤミ金として営業していましたが2月頃に上の指示で再度融資保証金詐欺を再開するようになりました。
 詳細な犯行状況は従前の冒頭陳述記載の通りですが、第一の被害者であるaはヤミ金から1万円を借り、被告人らは利子を付けた1万8000円を受領しました。その後融資保証金名下で詐欺を行いました。2月に入ったのちに融資を申し込んできた第二の被害者である片瀬bに融資保証金名下で詐欺を行いました。以上の事実を立証するために証拠等関係カード記載の証拠を請求します。
裁判官「弁護人ご意見は」
弁護人「甲乙全て同意します」
裁判官「それでは要旨の告知を」

−要旨の告知−
 新たに追加されたものです。

◇甲号証
・被害者のaの供述調書で被害状況が述べられている
・融資が来た際にについて繰り返し要求を重ねられ騙し取られてしまったとの供述
・振り込み送金をした場所について、ビックカメラ内の広島銀行ベスト銀行出張所の公訴事実の通りの特定場所の記載
・モバイルバンキングを用いて振り込んだという同人の開設支店場所
・イズミシンイチ名義の口座に振り込みが確認されたこと
・大井町の大東京信用金庫に開設されたキムラ名義の口座の取引状況で入金状況などが確認されている
・詐取日時の特定の関係でアジトであるパシフィックソフィートZ2号室から押収した物品のなかにあった第一、第二事件の受付日時、騙した金額のメモを複写した捜査報告書
・被害者のbの供述調書で被害状況が述べられていて「融資するには保証金が必要として騙されてしまった」という内容
・誤記部分の訂正
・被害者の口座のあるセブンイレブンの所在報告書
・各被害者の振り込み日時を特定した報告書

◇乙号証
・Aの供述調書で犯行に至る経緯などが記されている、すでに冒頭陳述で詳述している内容で、12月末にBが抜けたあとはDとCと3人で営業していたとの内容
・2月に騙した2名については記憶が残っており、犯行は間違いないとの内容
・Cの供述調書でAのヤミ金の受付をやり、2月以降融資保証金詐欺をやった、カンキョウ受付表に残っているので間違いないとの供述
・Dが犯行を認めた供述で、ヤミ金として活動していたが、被告人らが融資保証金詐欺を行ったのは間違いない旨述べている

裁判官「今後の進行としては」
検察官「さらに追起訴を予定しています。調査中ですが、今月20日を目途にあり、8月の同日くらいにもう1件ある」
裁判官「例えばB被告人は詐欺をやめているし、D被告人は入ったのが遅い。今回何もなかったB被告人に関しては終わりとかD被告人は先の部分で追起訴があるとかそういうことはないですか。まあA被告人は長い関与があるようですが」
検察官「次回の追起訴にはBも含まれます。その後の起訴については4名まとまった分があるのか再度詳細を確認します」
裁判官「各被告人は今後少なくとも1件の追起訴があるということですね」
弁護人「2点お願いがあります。1点目分かり次第早く開示してほしいことと、2点目はAは緑内障が進んでいて追起訴が終わるまで待っていられないという事情がある。本人やお医者さんと相談したい。失明でもしたら大変なんで」
裁判官「分かりました。次回までにある程度こうなるというのが分かれば有難いです」
検察官「はい」
裁判官「9月の何日かなら2回目の追起訴も間に合いますね」
検察官「はい」

 9月なら2回目の追起訴分も間に合うということで次回期日は追起訴の続行として9月18日13時30分からに指定された。裁判官はそれを被告人4名に説明して閉廷となった。

 退廷間際弁護人とA被告は「なるべく早くで」と囁きあい、弁護人に礼を言っていた。
 退廷していく被告人の一人(B被告)を年配の女性が見つめていた。

報告者 insectさん


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