裁判所・部 東京地方裁判所・刑事第十八部(単独係)
事件番号 平成21年刑(わ)第620号等
事件名 詐欺
被告名 B、C、D、E、A
担当判事 太田寅彦(裁判官)
その他 書記官:和栗
検察官:佐藤美由紀、小泉敏彦、岩月泰頼、高野澤政志
日付 2009.3.12 内容 初公判

 被告人5名は1人当たり刑務官2名に伴われて続々と入廷してきて、指定された位置に着席し手錠と腰縄を解かれる。
 傍聴席に被告人の交際相手らしき茶髪の女性が最前列に1名と、ほとんど皆無に近い状態。
 九州地方在住の年寄りを標的にした被害額は2億円に上ると見られる。
 弁護人は青木勤被告も担当した天然パーマで角張った顔つきの初老のスーツ姿の男性1人。

 裁判官は開廷を宣言して「それでは被告人5人は証言台の前に立ってください」と言って人定質問を行う。
 A被告とB被告は小柄な体格、他3名はそこそこの身長で痩せ型で
A被告・・・昭和53年2月27日生まれ、住所東京都世田谷区、無職、グレーのジャケットを着た目が大きくて鋭い猫のような丸刈りの青年で疲れたような表情を見せていた
E被告・・・昭和55年10月11日生まれ、住所東京都三軒茶屋、無職、ビルトアップされた体型の眼鏡をかけて色黒の丸刈りの青年
D被告・・・昭和58年2月4日生まれ、住所東京都大田区、無職、彫りの深い顔立ちのスーツ姿の目の細い青年
C被告・・・昭和57年5月17日生まれ、住所東京都大田区、無職、茶髪がかったサーファー風の髪型に目の細いスポーツウェアを着た青年
B被告・・・昭和58年1月21日生まれ、住所東京都大田区、無職、目が大きくて眉の薄いボクサーのような体型のスポーツ刈りの青年

裁判官「今回は本起訴分の審理を行うということで、3月11日付けの本起訴状、3月31日付けの追起訴状はそれぞれ受け取っていますね」
被告人「はい」
裁判官「それでは本起訴状の朗読を検察官、どうぞ」

−検察官の起訴状朗読−
○平成21年3月11日付け公訴事実
 被告人5名は「ライフ」と称する架空の金融会社を作って融資申し込みを募り、送付されたダイレクトメールを見て融資を申し込んできた者から融資にかかる費用等名目に金員を詐取しようと企て、別表記載の通り、平成20年1月21日から前後8回にわたり、ダイレクトメールを見て200万円の融資を申し込んできたa当時71歳に、日本橋ニューシティレジデンス○号室から、その都度携帯電話で、真実は融資を実行する意思も能力もないのにこれがあるように装い、「保証人はいますか。いなければ保証協会に手数料として14万円を3ヶ月分振り込んでください。後で返済します」と嘘を言って、同人をその旨誤信させ、2月2日、前後6回にわたり、佐賀銀行多久支店のaの口座から、駿河銀行に開設されたフジタトシナガ名義の普通預金口座に計119万9060円を振り込み入金させた。
 もって人を欺いて財物を交付させたものである。
罪名および罰条:詐欺刑法第240条第1項、第60条。

○平成21年3月31日付け公訴事実
 被告人5名は「ライフ」と称する架空の金融会社を作って融資申し込みを募り、送付されたダイレクトメールを見て融資を申し込んできた者から融資にかかる費用等名目に金員を詐取しようと企て、別表記載の通り、前後3回にわたり、ダイレクトメールを見て150万円の融資を申し込んできたb当61歳に、ニューシティレジデンス日本橋クエスト○号室から、その都度携帯電話で、真実は融資を実行する意思も能力もないのにこれがあるように装い、「保証人はいますか。保証協会が保証人を請け負うことが可能です。10万5000円を3ヶ月分振り込んでください」と嘘を言って、同人をその旨誤信させ、前後2回にわたり、鹿児島銀行フキノ支店の被害者の口座から、ジャパネット銀行に開設されたカワノシゲル名義の普通預金口座に計16万3200円を振り込み入金させた。
もって人を欺いて財物を交付させたものである。
罪名および罰条:詐欺刑法第240条第1項、第60条

裁判官「審理を始めるにあたって2点注意事項があります。一つは被告人には黙秘権があり話したくないことは話さなくていいですが、この公判廷で話したことは全て証拠になりますのでその点に注意してください。それでは今検察官が読み上げた事実に間違いはありますか」
被告人5名「間違いないです」
弁護人「被告人と同様です。争いはありません」
裁判官「それでは証拠調べに入りますので被告人は席に戻ってください」

−検察官の冒頭陳述−
 被告人の身上経歴等についてですが、Aは高校中退後、金融会社従業員など職を転々とし事件当時は無職でした。交際相手と居住していました。前科前歴はありません。
 Eは高校卒業後、建設作業員など職を転々とし事件当時は無職でした。罰金前科があります。
 Dは高校中退後、金融会社従業員など職を転々とし事件当時は無職でした。交際相手と居住していました。前科1犯、前歴1点があります。
 Cは大学中退後、建設作業員など職を転々とし事件当時は無職でした。前科はありませんが前歴が1点あります。
 Bは中学卒業後、運送会社従業員などをし、父母と同居していました。前科はありませんが前歴が4点あります。
 大田区のマンションを拠点とし、平成20年4月頃Dが、それを介してCとBも加わり以後は5名で同種犯行を繰り返しておりました。役割ですがAは他人名義の携帯電話や口座の手配、Eは経費の処理、Dは出し子の手配やその監督指導、CとBは騙し役をするなどし詐取金は5名で分配していました。第二、その他情状等。以上の事実を立証するために証拠等関係カード記載の各証拠を請求します。
裁判官「弁護人、ご意見は」
弁護人「甲乙全て同意します」

 続く要旨の告知で検察官は被害者のaの供述調書として、「平成21年1月26日に自宅に株式会社ライフからハガキが来た。180万円くらいの借金があり返済で苦しかったので生活が楽になるのではと思い、ライフの久保と名乗る男に200万円の融資の申し込みをした。保証人がいないか聞かれて保証協会に14万払う必要があると言われた。その後保証人は受け付けましたが、口座のロック解除費用、振込金返還手数料、保証費用などとしてお金を取られた。犯人は厳しく処罰してください」といった内容を読み上げた。

 弁護人は初公判終了後「追起訴はあったし今後もある」と仰っていた。

事件概要  被告人らは金融会社を装い、九州地方を中心に送付したダイレクトメールで融資先を募集し、融資をするのに手数料が必要と偽り、佐賀県多久市で約120万円を騙し取ったなどとされる。被害総額は2億円に上ると見られる。
報告者 insectさん


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