裁判所・部 東京地方裁判所・刑事第二十部(合議係)
事件番号 C、B、A:平成20年合(わ)第584号
D:平成20年合(わ)第629号
事件名 建造物侵入、強盗致傷
被告名 D、C、B、A’ことA
担当判事 林正彦(裁判長)中島経太(右陪席)浅川啓(左陪席)
その他 書記官:手嶋健、山本典子
検察官:大橋充直、島本恭子
日付 2009.3.12 内容 初公判

 被告の関係者などで傍聴席はそれなりに埋まっていた。

−検察官の起訴状朗読−
 被告人ら4名は共謀のうえ、平成20年5月3日午前5時50分頃、Z4を経営するa(58歳)が管主する東京都台東区のSMテトラビルに侵入し、同店に居合わせたaほか9名に対して、木刀を振りかざし、テーブルを叩いたり、包丁を突きつけ「金を出さないと殺す」と言い、aの大腿部を木刀で殴るなどして反抗を抑圧し、現金293万6000円、腕時計など8点時価合計120万3400円相当を奪った。その結果aに全治6週間の右大腿部打撲の傷害を負わせた。
罪名および罰条:建造物侵入、強盗致傷、刑法第240条、第60条。
 以上につきご審理願います。

 裁判長が黙秘権の告知をしたうえで罪状認否に入る。
木村被告人「えー強盗して怪我を負わせたとありますが、バットで叩いたことになっていますが違います。金額も293万いくらとありますが、それも違うと、こういうことです」
裁判長「強盗致傷は違うということですが、木村被告人は殴ったのですか」
被告人「殴っていません」
裁判長「他の人がやったということは」
被告人「ありません」
裁判長「あと奪ったお金の金額が違うということだけど、具体的にはどのくらい奪ったのですか」
被告人「90万円ちょっとです」
裁判長「また腕時計は8点も取っていないと」
被告人「取っていません」
裁判長「現金だけ受け取ったということですか」
被告人「はい」
裁判長「怪我を負わせたということについては」
被告人「警察官にバットで殴られたと聞いたが、起訴されたら木刀に変わっていた。怪我を負わせた事実もない」
裁判長「その他の事実については」
被告人「その他の事実と言いますと?」
裁判長「Z4で金品を強取する際に持っていた木刀を振りかざして、金を出さないと殺すと言ったこととかはどうですか」
被告人「随分前のことで記憶にない部分もある。自分のやったことに関しては言えるが、監視カメラじゃないので他の被告のことは言えない」
B被告人「自分も同じです。金額が違う、傷害は負わせてない、金品も違う、それ以外は認めます」
裁判長「木村被告人と同じと」
被告人「はい」
C被告人「私も一緒です」
D被告人「自分も一緒です。誰も殴っていません」
裁判長「弁護人の方ご意見は」
弁護人「被告人の認否の通りです。物品に関しては携帯電話を奪ったことは認めます」
木村被告人「僕が携帯電話を持っていったことはありません」
裁判長「では元の席に座っていなさい」

−検察官の冒頭陳述−
 被告人4名の身上経歴ですが、木村昌倫は6代目山口組Z1会Z2一家の構成員として活動し、覚せい剤取締法違反などの前科が3犯あります。平成18年2月27日に覚せい剤取締法違反で懲役1年10月、3月14日に確定、平成19年11月10日にその刑の執行を受け終わったものであります。
 Bは6代目山口組Z1会Z2一家の構成員として活動し、傷害、強盗、詐欺などの前科が2犯あり、電磁的公正証書原本不実記録、詐欺、詐欺未遂などの罪で懲役2年が平成16年に確定し、平成17年にその刑の執行を受け終わったものであります。
 Cは傷害、暴行などの前科が3犯あり、平成17年12月11日に傷害の罪で懲役2年4月、平成20年1月12日にその刑の執行を受け終わったものであります。
 Dは平成11年から稲川会、山口組の構成員として活動し、監禁や恐喝などの前科が4犯あり、懲役1年8月の刑の執行を平成19年10月18日に受け終わり、本件はその累犯になります。
 犯行に至る経緯ですが、縄張りの飲食店からミカジメ料、カスリと称して金銭の支払いを受けていたものでありますが、スミウラヒロトからBに、縄張り内にあるZ4にタイ人が集まり博打をやっている、ムエタイをやっているボディーガードがいるとの情報を受けました。同じく木村やCも縄張り内で無断で賭場を開いている、ボディーガードがいるなどの情報を聞いて、被告人らは賭場にある現金を強奪することを計画しました。
 Bはまず偵察することにし、Cもスミウラの指示で5時30分と決めて加わり、木村は上野にあるZ3小学校前集合ということにしました。またスミウラの指示でDも分け前目当てに加わり、Dと大塚ヒロノブはZ4を下見することにしてムエタイをやっている用心棒がいないか確認したうえで店内にある金品を奪おうとしました。スミウラはDと大塚を指して「こいつらも行かせるから」と加勢させました。ボディーガードもいることから出来るだけ人数がいたほうがいいだろうということで4人で襲撃することに決めました。
 犯行状況ですが、平成20年5月3日、大塚はZ4の前で見張りをすることにして、大塚が客を装ってaがドアの鍵を開けた瞬間、4人が機に乗じて店内に侵入し、同店は定休日であるがなかでトランプゲームをしていたタイ人女性8人などの被害者を制圧し、「お前ら何やってんだ!金を出せ!」と怒鳴りながら雪崩れ込みました。Cはテーブルの上のグラスを払い「ママは誰だ!」と言い、木村はaの右大腿部を殴ったり、顧客の頭を傘で殴ったりしました。また顧客に包丁を突きつけるなどして反抗を抑圧し、被告人らは「金を出せ!」と言って現金293万円や携帯電話5台を奪いました。さらに「お前ロレックスはどうした、ブレスレットかネックレスを出せ」と言ってそれらを奪い逃走し、分け前は分配しました。
 ここで女性検事が分かりやすく箇条書きに争点を述べた。
 本件の争点は
1.木村が被害者の太ももを殴って怪我を負わせた事実はない、
2.顧客を傘で叩いた事実はない、
3.被害金額の内訳や総額が違う、
というものですが、被害者であるaの証人尋問や被告人質問で立証していきたいと思います。
 また情状についても、
1.暴力団特有の犯行であること、
2.極めて犯行態様が粗暴かつ悪質であること、
3.aをはじめ被害者の処罰感情が厳しいこと、
4.被告人らは反省がなく再犯の可能性が極めて高いこと、
などを立証していきます。

※後日、東京地裁はA・C・B各被告に懲役7年、D被告に懲役6年6月を下した。

事件概要  被告人らは強盗目的で東京都台東区の飲食店に押し入り、現金約230万円を強奪して、タイ人の女性経営者に6週間の怪我を負わせたとされる。なお本件では被害者8名が改正暴対法に基づき、実行犯3人のほか服役中の山口組組長に1500万円の損害賠償を求めて提訴した。
報告者 insectさん


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