裁判所・部 東京地方裁判所・刑事第十部(単独係)
事件番号 平成20年刑(わ)第800号等
事件名 詐欺
被告名 A2、A3、A4
担当判事 野村賢(裁判官)
その他 書記官:継田
検察官:名倉俊一、小林、大原
日付 2009.1.29 内容 追起訴

 405号法廷では、3被告人に対する融資保証金詐欺事件の最後の検察官立証(追起訴)が行われた。
 A2被告は大人しそうな青年、A3被告は色白のいかつい高校球児のようなスーツの青年、A4被告は色白のホスト風で腕に刺青の入った青年で、いずれも175cmぐらいの身長。担当検事は頭の切れる額の広い若い男性で、法廷でもよく意見を言うことが多い。

裁判官「それでは被告人3名は前に立ってください。今日は新たに起訴された事件の審理を行います」

−検察官の起訴状朗読−
○追起訴状にかかる公訴事実
 被告人3名は「楽天クレジット」と称する架空の金融会社を作って融資申し込みを募り、ダイレクトメールを見て融資を申し込んできた者から融資にかかる費用等名目に金員を詐取しようと企て、
(1)A1芳康、コウヘイコウと共謀のうえ平成20年1月21日ダイレクトメールを見て300万円の融資を申し込んできたa2当時59歳に、スカイコート神田から、その都度携帯電話で、真実は融資を実行する意思も能力もないのにこれがあるように装い、「融資を受けるには保証人として身内の人が2人必要ですが、提携する保証協会を紹介しますのでそのための1人分9万円を振り込んでください。18万円が必要です。」と嘘を言って、同人をその旨誤信させ、前後2回にわたり、羽島信用金庫の被害者の口座から、みなと銀行に開設されたニノミヤカズヤ名義の普通預金口座に計58万3000円を振り込み入金させた。
(2)前記スカイコート神田1204号室から、真実は融資を実行する意思も能力もないのにこれがあるように装い、前後3回にわたり、前記ダイレクトメールを見て300万円の融資を申し込んできたa3当時47歳に「融資を受けるには保証人として身内の人が2人必要ですが、提携する保証協会を紹介しますのでそのための費用として18万円振り込んでください。今キャンペーン中ですので18万円は全額返ってきますよ」と嘘を言って、同人をその旨誤信させ、3回にわたり宮崎銀行シュウナイ支店の被害者の口座から、肥後銀行に開設されたテラダイツミ名義の普通預金口座ほか2口座に計56万7800円を振り込み入金させた。
(3)A1芳康、コウヘイコウ、シンテツナリと共謀のうえ前記スカイコート神田1204号室から、前記ダイレクトメールを見て250万円の融資を申し込んできたa4に真実は融資を実行する意思も能力もないのにこれがあるように装い、「8万円を振り込んでもらえれば融資ができます」と嘘を言って、同人をその旨誤信させ、前後3回にわたり宮崎銀行河東支店の被害者の口座から、りそな銀行に開設されたキムラユウイチ名義の普通預金口座に計25万7000円を振り込み入金させた。
 もって人を欺いて財物を交付させたものである。
罪名および罰条:詐欺刑法第240条第1項、第60条。

○平成20年12月4日付追起訴状にかかる公訴事実
 被告人3名は「楽天クレジット」と称する架空の金融会社を作って融資申し込みを募り、ダイレクトメールを見て融資を申し込んできた者から融資にかかる費用等名目に金員を詐取しようと企て、A1芳康、A4仁哉、小泉樹也、コウヘイコウと共謀のうえ東神田のスカイコート神田1204号室から、前後5回にわたり、前記ダイレクトメールを見て500万円の融資を申し込んできたa5に真実は融資を実行する意思も能力もないのにこれがあるように装い、「審査が通りました。保証人を2人立てる必要がありますが、できない場合は保証協会に手続き料として20万円納めていただければ融資できます。20万円は融資料に上乗せしてあなたに返ってきます」と嘘を言って、同人をその旨誤信させ、福岡銀行博多駅前支店の被害者の口座から大阪府門真市の三菱UFJ銀行に開設されたワタナベマサヨシの普通預金口座に計91万円を振り込み入金させた。
 もって人を欺いて財物を交付させたものである。
罪名および罰条:詐欺刑法第240条第1項、第60条。

裁判官に罪状認否を問われた被告人3名はいずれも「間違いありません」と述べ、起訴事実を認めたあと着席した。

−検察官の冒頭陳述−
 被告人A2はA1を首謀者とする犯罪組織でA4仁哉、富田ダイスケとともに金融会社従業員としての犯行を重ねていました。
 A2は平成17年11月から西村マサキや富田ダイスケと馬喰町のマンションやマンション名スタンドビューレーで騙し役の犯行をしていましたが、平成18年8月にA1の組織に所属し別の詐欺グループで活動していたA4仁哉と中央区日本橋で犯行を行うようになり、平成19年4月に千代田区内のマンションに移り、平成20年2月27日からスカイコート神田で騙し役の犯行を行うようになりました。被告人A3は平成18年2月頃A1の組織に所属し、西村マサキとともにスカイコート神田で騙し役の犯行をしていました。被告人A4は平成18年9月にA1の組織に所属し、A2、A3、A4仁哉が振り込め詐欺をしていたことを認識しており、当初は融資の取り付けなどをしていましたが、A3やA2と騙し役の犯行も行うようになりました。コウヘイコウは平成19年7月に被害者から詐取した現金を振り込ませる口座を調達し、平成19年12月から小泉樹也とシンテツナリにそれを引き出させてA1の口座に入金させていました。
 富川トモコの事件はダイレクトメールを見た富川が500万円の融資を申し込み、A4が受け、保証協会への手続き料との騙し文句はA2が富川に行い、騙し取った現金はコウヘイコウが小泉に引き出させました。さらにA3が電話で事務手数料を振り込んでくださいとの騙し文句で20万8000円を、融資の契約書の書き換え費用との騙し文句で21万6000円を振り込み入金させ、それもコウが小泉に引き出させました。さらにA2とA4仁哉は法人手続移行手数料の残額を振り込むことが必要でそれは返金するとの騙し文句で14万3000円を振り込ませました。
 a2の事件は楽天クレジットのダイレクトメールを見たa2が300万円の融資を申し込み、A3が受け、保証協会の手続き費用として月々の返済額の4ヶ月分振り込んでくださいとの騙し文句で、ニノミヤカズヤ名義の口座に17万9000円を入金させ、返済能力の確認のためという騙し文句で23万3800円等を入金させました。
 a3の事件は、A4が融資申し込みを受け、A2が保証協会への申し込み手続き費用として18万円を振り込み入金させ、コウがシンに引き出させました。さらにA3が返済能力の確認として月々の返済分の6ヶ月分の20万1600円を振り込んでください、18万円と併せて返金しますとの騙し文句でアンドウカズナリ名義の口座に振り込み入金させ、コウがシンに同口座から引き出させました。さらにA2が融資申し込みの手続き費用として18万6200円を振り込み入金させ、コウがシンに同口座から引き出させました。
 a4の事件はダイレクトメールを見たa2が250万円の融資を申し込み、A4が受け、250万円の融資は可能です、250万円の融資を申し込むためには8万円を保証協会に納める必要があります、融資を受ける際に8万円は返金しますとの騙し文句で振り込み入金させて、コウがシンに同口座から7万9000円を引き出させました。さらに新しくカードを作成するお金として8万8000円を振り込み入金させてコウがシンに同口座から引き出させました。さらにA3が最初に申し込んだお金が9000円足りないなどと言い、最初のと併せて8万7000円を返金するからとの騙し文句で振り込み入金させて、コウがシンに同口座から引き出させました。

第二、その他情状等
 以上の事実を立証するために証拠等関係カード記載の証拠の取調べを請求いたします。

 検察官の証拠関係に対する意見を求められた弁護側のうちA2とA3の弁護人は同意したが、A4の中年弁護人は
「何点かの書証は信用性を争う。被告人質問で明らかにしていく」
「全ての書証は同意する」
などと要領の得ない回答をして、やりとりのあと真意を裁判官や検察官から問われると
「信用性を争う部分の特定は無理」
「情状面につきましても後日被告人と打ち合わせをして争う、書証に記された事実を争うということにつきましても被告人質問などで主張・立証していく」
「全て同意ではない。後日書面で明らかにする」
などと歯切れが悪かった。また従前留保分だった書証を全て同意すると述べた。
 同意になった留保分は、A4仁哉の供述調書、所在確認報告書、A1芳康の供述調書、事務所を案内したA2の話、A1・A3・A4の供述調書である。
裁判官「それでは同意のあったものを採用して取調べます」
 その前に甲40号証は所在確認報告書でスタンドビューレー中野坂之上を指すこと、甲41号証の菊池トモコに対するダイレクトメールは立証趣旨の追加拡張を請求しそれが認められた、甲100号証は電話聴取結果報告書というやりとりがあった。

−要旨の告知−
1.甲号証(106号証〜)
・平成20年11月14日付追起訴状の被害者であるa2の供述調書
・犯行場所の所在確認結果報告書で23万円を振り込んだ銀行の名称や所在地を明らかにしたもの
・電話聴取結果報告書
・ニノミヤカズヤ名義の口座
・A1芳康、コウヘイコウ、シンテツナリの供述調書で共同犯行状況などが記されており、ニノミヤの口座から17万円を引き出したこと
・a3の事件で冒頭陳述で述べたとおりの報告書で電話聴取結果報告書、被告人名義の口座などはa2と同じ
・捜査関係事項照会書でニノミヤヨシタカ名義の口座に入金がなされていること
・A1芳康、コウヘイコウ、シンテツナリの供述調書
・a4、a5の事件の証拠も上記と名義人の名前が変わっただけでほとんど一緒だった
・騙し役のA4仁哉の供述調書でおおむね冒頭陳述に沿う内容の供述

2.乙号証(60号証〜)
・A2の供述調書で一連の振り込め詐欺で1500万円ぐらいの報酬を得たこと
・A3の供述調書で一連の振り込め詐欺で2000万円ぐらいの報酬を得たこと
・A2とA3が今回の追起訴の事件についておおむね冒頭陳述で述べた通りの供述をしていること
・A4の供述調書で一連の振り込め詐欺で81万円ぐらいの報酬を得たこと
・A4が今回の追起訴の事件についておおむね冒頭陳述で述べた通りの供述をしていること

検察官「追起訴はこれで終了です」

 今後の進行で弁護人は被告人質問と情状証人の尋問を申請し、極力示談をまとめ領収書を提出するとした。
 A2の関係では被告人質問が15分、父親あるいは母親が5分、A3の関係では情状証人の父親が20分、A4の関係は被告人質問が15分、情状証人が20分を予定していると言ったが、裁判官は被告人質問はより短くならないか、示談の件があっても次回期日をそんなに先延ばしできない、論告弁論は別期日に入れるなどと言っていた。
 検察官はA2について振り込め詐欺に加わった時期は9月中旬ではなく9月上旬なのでその辺を聞いていく、A3も同程度と述べた。

 裁判官が次回期日を指定して閉廷となったが、検察官はA2に近づいて「君が一番反省していると思ってるんでね」などと話していた。
 12時を優に回っていたが検察官と弁護人は廷内で協議し、検察官に話しかけたところ「ここでやっているのは3人だけ。A1とかは別の検事がやってる」「振り込め詐欺は原則実刑ですよ。こんだけ社会問題になっているんだし」「おれおれもまだなくなっていない」と仰っていた。ちなみにキンググループの守谷等はどうやら別人が担当したらしい。

※後日、東京地裁はA2・A4各被告に懲役3年、A3被告に懲役3年4月を下した。

報告者 insectさん


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