裁判所・部 東京地方裁判所・刑事第19部(単独係)
事件番号 平成20年刑(わ)第3231号等
事件名 詐欺
被告名 A1、A2、A3
担当判事 角田正紀(裁判官)
その他 書記官:清水
検察官:佐藤美由紀、工藤恭裕、佐野嘉信、前田佳行、早田祐介、加藤栄
日付 2009.1.29 内容 初公判

 押送バスが遅れてA2被告が到着せず、開廷は若干遅れた。傍聴席には被告人の家族らしき集団も在廷していた。検察官は加藤千弥たちも担当していた男性。
 被告人3名は中肉中背の柔らかそうな表情の男性(A1)や小柄な肌が黒い建設作業員風の男性(A2)、拘禁ショックか以前からなのか判然とはしないが髪の毛が抜け落ちたアトピーがかった男性(A3)。
 またグループのリーダー格で月額400万円のノルマを課して高級ホテルで店長に正座を強要させるなどしていた習田顕嗣、高佐秀雄、榎本雄一の3名も検挙、被害額は2億円に上ると見られグループのなかには彼らが怖くてやめられなかったと供述している者もいるという。
 弁護人は男女3名。

裁判官「それでは(手錠を)開錠してください。開廷しますので、被告人3名は証言台の前に並んで立ってください。まず右の方から名前は何と言いますか」
A1被告人・・・昭和54年7月26日生まれ、現住所東京都大田区大森中、職業アルバイト(販売員)
A2被告人・・・昭和54年4月7日生まれ、現住所東京都世田谷区大原、職業無職
A3被告人・・・昭和50年1月25日生まれ、現住所東京都豊島区上池袋、職業ロジスティックスという会社の契約社員でしたが、弁護人経由で退職させていただきました
裁判官「それでは被告人、起訴状は届いておりますね。それを今から読み上げてもらうからね、よく聞いておくように」
検察官「ええと共犯者の名前は、氏名不詳者等で統一させていただきます」
 東京地裁によると本件は11名逮捕全員起訴で、氏名不詳者以外の共犯であるA4、A5、A6、A7、A9、A8、A11、A10の各被告も東京地裁刑事第19部で公判中である。

−起訴状朗読−
1.平成20年11月12日付け起訴状、被告人3名は氏名不詳者等と共謀のうえ、「ショウエイ」と称する架空の金融会社を装い、平成20年8月19日から8月28日までの間、前後9回にわたり電話で融資申し込みをしてきたa1(当時52歳)に対し、東京都渋谷区のセルリアンビル303号室から、その都度携帯電話で同人に対し、真実は融資を実行する意思がないのに、これがあるように装い、「50万円融資するためには取引の実績がほしいので1ヶ月1万5000円として3ヶ月分の4万5000円を取引の実績として振り込んでください。確認したらすぐに融資します」と嘘を言って、同人をその旨誤信させ、前後9回にわたり、兵庫県淡路市の淡路信用金庫のa1の口座から、被告人らが管理する三井住友銀行厚木支店に開設されたサトウエミリ名義の普通預金口座に合計43万5000円を振り込み入金させた。もって人を欺き財物を交付させるなどしたものである。
罪名および罰条:詐欺、刑法第246条第1項。

裁判官「被告人ね、別付表というのが起訴状の謄本についていて送っていると思うんだけど、内容は分かりますね」
被告人「大丈夫です」
 裁判官(司法修習所教官経験者)の指示で書記官によって何枚かある別付表のコピーが1冊証言台の前に置かれ、「被告人は各自見ていいからね」と告げた。傍聴席から見た感じではリストになっていたが、被告人は3人とも直接手には取らなかった。

2.平成20年11月28日付け追起訴状、被告人3名は氏名不詳者等と共謀のうえ、「コウア」と称する架空の金融会社を装い、平成20年8月2日から8月5日までの間、前後4回にわたり電話で融資申し込みをしてきたa2に対し、東京都渋谷区のセルリアンビル303号室から、その都度携帯電話で同人に対し、真実は融資を実行する意思がないのに、これがあるように装い、「30万円の出資枠があるのですが、あなたの過去のデータは水準を下回っています。融資するには当社との3ヶ月の実績が必要です。1ヶ月1万5000円として3ヶ月分の4万5000円を一時的に振り込んでもらえれば1時間後には入金します」と嘘を言って、同人をその旨誤信させ、前後4回にわたり、長崎県の有明郵便局のa2の口座から、被告人らが管理するゆうちょ銀行に開設されたキタジママチヨ名義の普通預金口座に合計18万3000円を振り込み入金させた。もって人を欺き財物を交付させるなどしたものである。
罪名および罰条:詐欺、刑法第246条第1項。

裁判官「それでは今から、被告人と、こういう立場で聞いていくわけだけど、あなたたちがこの法廷で話したことは証拠になるから、覚えておくように。それでは今検察官が読み上げた事実に何か間違っているところとかはありますか」
A1被告人「う〜ん・・・間違いありません」
A2被告人「間違いないです」
A3被告人「・・・(弁護人と顔を見合わせる)、a2さんに対しての事件は間違いありません、a1さんの事件はA4を中心としたグループがやったことで、私に対して・・」
 A3は陳述中声に詰まり、裁判官も一部否認にやや慌てて
裁判官「こういうことかな、つまりあなたの気持ちとしてはやってないと。落ち着いて答えてくれていいからね、共犯者と事前に相談があればあなたの責任も問われるわけだけど」
A3被告人「はい」
 裁判官から「弁護人と相談していいから」と言われて、A3は自分から弁護人に近づいていって、弁護人は軽く耳打ちしたあと、定位置に戻った。
 A3の弁護人もa2さんの事件はA4を中心としたグループの犯行で被告人は関わっていないと援護射撃した。
 意見を求められたA1の弁護人は公訴事実自体は認めるが、犯行日時や被害者についてA1には明確な記憶がないと述べた。

 その後法廷に再度入ると、A1とA2はすでに退廷していて(関係者もいなかった)A3だけが残り、弁護人に頭を下げて退廷していったので、少なくともその日の公判は分離されたと考えられる。

事件概要  被告人らは、出会い系カフェの店員仲間や高校時代の同級生などが集まったうえで架空の金融会社を装い電話で勧誘し、兵庫県淡路市などでデータ修正の手数料などと偽って現金を振り込ませるなどしたとされる。
報告者 insectさん


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