裁判所・部 東京地方裁判所・刑事第十部(単独係)
事件番号 平成20年刑(わ)第800号等
事件名 詐欺
被告名 A2、A3、A4
担当判事 野村賢(裁判官)
その他 書記官:継田
検察官:名倉、小林、大原
日付 2008.6.17 内容 追起訴

 405号法廷では、3被告人に対する融資保証金詐欺事件の追起訴審理が行われた。
 A2被告は色黒の青年、A3被告は色白で痩せ型の目つきがやや鋭い青年、A4被告は色白の髪の長い青年。A2被告は黒いシャツで、他2人は白いカッターシャツを着ていた。
 裁判官は眉の太い真面目そうな人、検察官はサーファー風の人と眼鏡をかけた真面目そうな人(守谷勇輝等も担当か)。
 司法修習生が3人在廷していて、傍聴人は少なかったが、被告の関係者らしき茶髪の美容師のような男性や童顔の背の低い女性などがいた。

裁判官「それでは被告人3名は前に立ってください。今日は新たに起訴された事件の審理を行います」

−検察官の起訴状朗読−
○5月21日付け追起訴状にかかる公訴事実
 被告人は「楽天クレジット」なる架空の金融会社を作り、融資を申し込んできた者から融資にかかる費用等名目に金員を詐取しようと企て、
(1)A1芳康と共謀のうえ平成20年2月11日から平成20年2月25日にかけて、ダイレクトメールを見て50万円の融資を申し込んできたa当時45歳に、スカイコート神田から、その都度携帯電話で、真実は融資を実行する意思も能力もないのにこれがあるように装い、「キャンペーン中なので8万4000円の融資保証金を振り込んでいただければ50万円を融資できます。8万4000円は50万円を融資するときに一緒にお返しします」と嘘を言って、熊本県の高道郵便局の被害者の口座から、ゆうちょ銀行名古屋支店に開設されたクリハラスエトシ名義の普通預金口座に8万4000円を振り込み入金させた。
(2)前記スカイコート神田1204号室から、真実は融資を実行する意思も能力もないのにこれがあるように装い、「今聞いたところ、2つローンがあると聞きました。通常3つ目のローンは審査が通らないんですよ。返済能力の確認のため11万円を用意していただければ、50万円を融資することができます。その11万円は50万円を融資するときに一緒にお返しします」と嘘を言って、熊本ファミリー銀行の被害者の口座から、みずほ銀行清瀬支店に開設されたクボカズユキ名義の普通預金口座に11万4000円を振り込み入金させた。
(3)aに対して前記スカイコート神田1204号室から、真実は融資を実行する意思も能力もないのにこれがあるように装い、「過去に返済が遅れた分として22万円を振り込んでください。その分は融資のときに一緒にお返しします」と嘘を言って、熊本第一信用金庫玉名支店の被害者の口座から、みずほ銀行清瀬支店に開設されたクボカズユキ名義の普通預金口座に22万8000円を振り込み入金させた。
もって人を欺いて財物を交付させたものである。
罪名および罰条:詐欺刑法第240条第1項、第60条。

 裁判官は「今検察官が読み上げた事実に間違いはないですか」と確認し、被告人3名は起訴事実を「間違いありません」と認めた。弁護人もこれに異論は唱えなかったので、検察官の立証に入る。

−検察官の冒頭陳述−
 被告人A2はA1を首謀者とする犯罪組織に平成19年2月から加わり、A4とともに騙し役の犯行を重ねていました。被告人A3はA1を首謀者とする犯罪組織の一員となり、同年9月からスカイコート神田1204号室で騙し役の犯行を重ねていました。被告人A4はA3やA2に融申し込みの電話を取り継いだり、融資の取り付けをするなどして、A1を首謀者とする犯罪組織の一員となりました。A4が今回の8万円の融資保証金が必要とする騙し文句を言って、被害者は融資を依頼するか検討すると1回は電話を切りました。結局依頼を要請した被害者はクリハラスエトシ名義の口座に8万4000円を振り込み入金しました。A2は他の借り入れ状況を聞いて、被害者がオリエントコーポレーションと住宅金融公庫に借り入れがあることが分かると、上記の騙し文句で11万4000円をクボカズユキ名義の口座に振り込み入金させました。またA3は過去に返済が遅れたことがないか聞いて、返済能力を確認するためという騙し文句で、22万8000円をクボカズユキ名義の口座に振り込み入金させました。

 冒頭陳述が終わると検察官から証拠請求があり、A2とA3の弁護人は甲乙全て同意したが、A4の弁護人は甲10号証のA1芳康の書面には一部不同意した。
 裁判官はパーマをかけた中年の女性書記官に「どうしましょうかねえ」と声を掛けて、これからも公判は1件3人でやっていくことやA4の不同意部分は即座に結論は出ないので置いておくことを述べて、同意のあった部分だけ要旨の告知を行うことにした。

−要旨の告知−
○甲号証
・被害者であるaの供述調書で被害状況などが記されている
・被害者から再聴取した際の捜査報告書
・11万4000円を振り込まないと融資できないと犯人から言われたこと
・10回ほどの返済の遅れがあると言われ、その遅れ分を合わせると22万8000円になり、それを振り込まないといけないと犯人(A3)から言われ、自分は融資を受ける立場だから相手から22万と言われないと自分のほうから22万円を振り込むことはないとの供述
・現金8万4000円を振り込んだ高道郵便局を特定したもの
・捜査関係事項報告書で、被害者の名簿など
・写真撮影報告書で銀行の名称や所在地を特定したもの(熊本第一信用金庫玉名支店やみずほ銀行清瀬支店)
・捜査関係事項照会書
・捜査報告書(3人が電話で騙し役をしていた居室の所在地)

○乙号証
・A1の話では平成19年1月から振り込め詐欺を行っていたこと
・A2の供述調書で、共同犯行状況などが記されている
・A3の供述調書で、22万8000円の騙し役はA3であったこと
・A4の供述調書で、共同犯行状況などが記されている

 不同意部分は検察官の意見を留保し、今後の予定は6月18日に追起訴(5件分の詐欺)があり、記録の分量が多いと検察官は聞いている、証拠開示はいつ頃できるのかという話が出た。「1〜2週間で入れさせてもらって宜しいでしょうか」と裁判官は言っていた。追起訴はそのあともかなりあり、弁護人は「あと何件ぐらいあるのか」と問うたが、検察官は「分かりません。複数件あると聞いてます」と応じた。
 次回期日は7月9日の15時30分からで、裁判官がその旨を被告人に告げて閉廷となった。

 被告人が手錠を掛けられて押送されていくとき法廷にしばらく残されていたが、それを見つめていると検察官から「あなた3人の誰かと知り合いですか」と声を掛けられてしまった。
 主犯のA1は法廷にいた女性職員の話だと10部には係属していないとのこと。

報告者 insectさん


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