裁判所・部 | 東京地方裁判所・刑事第十九部(単独係) | ||
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事件番号 | 平成20年刑(わ)第907号等 | ||
事件名 | 電子計算機使用詐欺 | ||
被告名 | B、A、C、D | ||
担当判事 | 江見健一(裁判官) | ||
その他 | 書記官:横溝 | ||
日付 | 2008.5.22 | 内容 | 初公判 |
傍聴席は裁判所のパンフレットを手にした学生たちと、被告人の職場の関係者らしきダークスーツの男たちや、被告人の家族でほぼ満席に近い状態だった。 入廷してきた被告人は座る位置が決められているらしく、最初入ってきたB被告は横に移動させられていた。 B被告:中背で痩せ型の温和そうな眼鏡をかけた男性。黒髪が散見される金髪で、白いTシャツを着用。 D被告:丸刈りで小柄で色白なやや神経質そうな眼鏡をかけた男性。角ばった顔つきで黒いシャツ。 C被告:ホスト風の長い髪で大柄でガッチリした体躯のくっきりした顔立ちの男性。 A被告:スポーツ刈りで小柄な大人しそうな顔をして下を向いた男性。 開廷されると裁判官が被告人を並ばせて人定質問を行う。 D被告:昭和57年8月16日生まれ。小さい声のうえに本籍地や住所が誤っているらしく裁判官を戸惑わせていた。無職。現住所の杉並区のマンションは犯行のアジトで、A被告も同じ。 C被告:昭和57年11月23日生まれ。所沢市在住。無職。 A被告:昭和59年4月12日生まれ。現住所は犯行のアジトでD被告と同じ。 B被告:昭和62年5月13日生まれ。現住所は東京都葛飾区。 −起訴状朗読− 「医療費を還付するので言う通りにしてください」と偽り、現金自動預払機(ATM)を操作させ、aから65万円を、bから99万円を、口座に振り込ませて詐取した。(専門用語が出てきて録取が難しかった) 参照 起訴状の朗読が終わると、裁判官が被告人4名に黙秘権の説明をしたうえで、丁寧に事件の概要を説明したうえでそれぞれの罪状の認否をしていった。 裁判官「まずはDさんね、aさんにATMを操作させて55万円の振り込み操作をさせて利益を得たことは間違いありませんか」 D被告「ないです(小さい声で)」 裁判官「同じく9万8010円を振り込ませたことは間違いありませんか」 D被告「その通りです」 裁判官「次にbさんにATMを操作させて99万円8904円の振り込み操作をさせて利益を得たことは間違いありませんか」 D被告「その通りです」 裁判官「弁護人の方、ご意見は」 弁護人「被告人と同趣旨です」 他の3被告人も同様にして起訴事実を大筋で認めた。 −検察官の冒頭陳述− まず被告人4名の身上・経歴ですが、いずれも飲食店従業員などの職を転々とし、事件当時は無職でした。 前科・前歴ですが、Dには窃盗による前歴が、CとAは前科・前歴なし、Bには恐喝による前歴があります。 犯行状況ですが、Dはその過程において詐欺グループを形成し、医療費の還付金名下に口座に金を振り込ませる詐欺を行っていましたが、平成19年10月にCがこの医療費還付金詐欺行為に加わり、平成19年12月にDとCの共通の知り合いであるAを誘い、その後Aの飲食店の同僚であるBを誘い、平成19年12月頃からは還付金詐欺という手口で、共謀して犯行を繰り返しておりました。 平成19年12月にはマンションを借りて、そこを犯行のアジトにしました。 Dは詐欺をやって金を振り込ませるための他人名義の口座を用意したり、騙した金を管理して共犯者に分配するなどしていました。 C、A、Bが騙しの実行役で、タウンページを見て3名は手当たり次第電話をかけ、お金を振り込ませていました。例えば起訴状のaに電話したのはA、bに電話したのはBがそれぞれの実行役で、口座からお金を引き出すのがDでした。分け前はCが4万9000円、Aが24万5000円、Bが19万5000円で、残りはDの手元にあり、自分の分け前や経費の支払いに充てていました。その他情状等についても立証していきます。 証拠のファイルが裁判官に渡されて、意見を求められた弁護人は甲号証には同意したものの、乙号証には一部不同意や意見を留保した。D被告の弁護人が言うには全容がまだ把握できていない、トータルで考えたいということだった。 証拠採用が決定したものだけ検察官が要旨の告知を行う。 −要旨の告知− ・被害者であるaの供述調書で、事件に至る経緯や被害感情が述べられている。「平成20年2月15日に自宅におりましたところ、電話がかかってきて男から医療費の還付金があるので返還する手続きをしてください。2つのキャッシュカードを持って男に電話したら、男からの指示で2つの口座に65万2010円を振り込みました。このような犯行は早く見つけて厳しく処罰してください。ATMの操作でボタンを押していたときは訳も分からず振り込み入金していて、後で気づきました」 ・お金を振り込ませる先のタカシナカツミ名義の普通預金口座 ・被害者の久留米支店の口座の照会で、55万4000円の金額が減少している ・特定捜査報告書で、振込み入金をした場所が特定されている(Z1銀行イトーヨーカドー東久留米店出張所) ・Z1銀行のATMの操作で、このシステムについて各銀行に問い合わせたもの ・ホストコンピュータによる送金システムの流れ ・Z2銀行のホストコンピュータは多摩情報センターにあること ・第二の被害者bの電話調書で「電話で医療費の還付金が支払われるとして、99万4000円を振り込みました。詐欺を行うような人は許せないので、厳重に処罰してください」 ・bの口座から99万円が出金されている記録 ・Z1銀行のホストコンピュータの所在地で、下野にある栃木センターに設置されている ・捜査関係事項照会書 要旨の告知が終わると、3者で今後の協議が行われた。 裁判官は 「電話がかかってきました。ATMに行きました。Z2銀行にお金を振り込みました。うーん」 「被害者の行為は間接正犯に当たるかもしれない」 「ただの詐欺で起訴されていたら話は違うんですけど。そこは証拠ないですから」 「罪質の関係で検討してもらえませんか」 「aさんの検事調べはやってないんですか?」 とソフトな口調で言っていた。 検察官はやや頭を抱えてペンを回しながらも「一応検討しておきます」と応じていた。 今後の審理の日程では、追起訴が続く見込みで、いつ終了するかは未定と検察官が言った。D被告の重役風の弁護人はそこが不満なようで、検察官にいつ追起訴が終わるのか尋ねていた。この種事犯を多く扱っているらしきA被告の弁護人はそれを聞いて苦笑いしていた。検察官も起訴検事に確認しておくと応じ、裁判官は「エンドレスにやっていても検察官も、とくに被告人にとって良いことはないわけですから。公判が始まっているというのは捜査側にとって圧力とまではいかないもののメッセージにはなるかも」と言っていた。先が見えないけど、区切って進めていくという。「私も同じような事件で〜」と言っていたA被告の弁護人もそれに同調した。 次回は1件の追起訴で7月10日の10時から。 | |||
事件概要 |
被告人らは共謀して、東京都東久留米市などで医療費の還付を装って65万円を自らの口座に振り込ませたとされる。 この還付金詐欺事犯が警視庁に摘発されるのはこの事件で2件目。 |
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報告者 | insectさん |