裁判所・部 東京地方裁判所・刑事第十一部(単独係)
事件番号 平成19年刑(わ)第4272号等
事件名 大麻取締法違反、詐欺
被告名
担当判事 楡井英夫(裁判官)
その他 書記官:恒松
検察官:松村香
日付 2008.5.22 内容 判決

 被告人は丸刈りで上下黒いスエットを着た、どこにでもいるような目の大きい若い男性だった。手錠や腰縄を嵌められている。
 被告人の家族である年配の女性や若いスーツ姿の男性、若い私服の女性の3人が開廷前に傍聴席に続々と入廷した。
 裁判官が入廷して手錠等が解かれ、被告人は証言台の前に立たされて名前を確認され、判決が言い渡された。

−主文−
 被告人を懲役3年6月に処する。未決勾留日数中150日をその刑に算入する。

−理由−
○第一
 被告人は株式会社インフェクションの従業員として稼動し、ダウンジャケットの販売名下に購入代金を詐取しようと企て、分離前の相被告人笹本健太と共謀のうえ、
(1)aに真実は商品を販売する意思も能力もないのに、これがあるように装い、上記インフェクション内で電話でダウンジャケットを販売する旨を伝えて、「本日中にお金を必ず振り込んでください。そうでないと戴いたオーダーは全てキャンセルになります。本日中か10月24日には納品できます」などと後日商品の引渡しを受けられるものと誤信させ、aの口座から目黒区内のみずほ銀行祐天寺支店に開設された株式会社インフェクション名義の普通預金口座に合計100万4220円を振り込み入金させ、もってこれを詐取した。
(2)bに真実は商品を販売する意思も能力もないのに、これがあるように装い、平成18年8月ごろ、電話でインフェクションでダウンジャケットを販売すると嘘を言い、「10月16日から10月17日にかけて輸入されます。10月21日にはそちらに出荷するので、21日までに振り込んでください」と言って、後日確実に商品の受け取りができるものと誤信させて、bの口座から目黒区内のみずほ銀行祐天寺支店に開設された株式会社インフェクション名義の普通預金口座に合計500万円を振り込み入金させ、もってこれを詐取した。
(3)1として衣料販売店を営むcに、インフェクション内で電話でダウンジャケットを販売する旨を伝えて、「10月21日には出荷できます」などと言って購入代金の支払いを要求し、後日山梨県甲府市内のcの口座から、りそな銀行に開設された株式会社インフェクション名義の普通預金口座に合計84万2310円を振り込み入金させ、もってこれを詐取した。また2として追加注文をしてきた榎本に、笹本において「中畑(被告人が使っていた偽名)の代わりに私が受けますので、追加で振り込みをしてください」と言って同様に株式会社インフェクション名義の普通預金口座に合計42万8400円を振り込み入金させ、もってこれを詐取した。

○第二
 被告人はクミタやイノウエとともに、法定の除外理由がないのに、日本ユニフルの倉庫だったところに、大麻草約2130.5gを所持していたものである。

 関係各証拠によって裁判所が認めた以上の事実につき、法令を適用して懲役3年6月という刑を言い渡したわけですが、量刑の理由を説明します。

○量刑の理由
 本件は被告人が共犯者と共謀のうえ、人気のダウンジャケットを販売するという嘘を言って、衣料店経営者などから、合計720万円あまりを騙し取った詐欺、同じく共犯者と共謀のうえ、大麻草約2100gを所持していたものである。
 詐欺の件では、起訴分だけでも被害額は高額で、被害者の処罰感情も厳しい。
 本件は多数の被害者を出す、詐欺活動の一環で、常習性が認められる。
 営業マニュアルやパンフレットも用意するなど、職業的詐欺グループの犯行である。
 被告人は営業役として、実際に被害者を騙す重要な役割を果たしており、分け前も110万円を分配されており利得は少なくない。
 大麻所持の犯行も、警察の捜査を免れるために保管場所を移すつもりで所持したもので大麻密売に加担しており、被告人には違法薬物の親和性も明らかである。
 他方、被告人は素直に事実を認めて反省しており今後は真面目にやっていくと誓っていること、共犯者に誘われて犯行に関与したもので末端に過ぎないこと、それぞれの被害者に20万、60万、20万と計100万円の被害弁償をしていること、大麻所持の件も組織的に関与したものではないこと、将来ビルメンテナンス業での雇用が見込まれること、母親が監督を誓っていることを考慮しても、犯行の重大性や悪質性、安易に加担した刑責の大きさを見過ごすわけにはいかない。それで主文で述べたとおり、懲役3年6月という刑にしました。

裁判官「行ってきたことをよく考えて反省して、まだ若いのでその後充実した人生を送れるように、よく考えておいてください。この判決は有罪判決ですので不服がある場合には控訴できます。控訴する場合は東京高等裁判所宛の控訴申立書を明日から2週間以内にこの裁判所に出してください」

 言い渡しが終わると被告人は退廷、被告人の母親らしき年配の女性は目を赤くしていた。

報告者 insectさん


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