裁判所・部 東京地方裁判所・刑事第五部(合議係)
事件番号 平成19年刑(わ)第1876号等
事件名 詐欺(変更後の訴因:組織的な犯罪の処罰および犯罪収益の規制等に関する法律違反)、組織的な犯罪の処罰および犯罪収益の規制等に関する法律違反
被告名 A23、A6、A5
担当判事 山口雅高(裁判長)深野英一(右陪席)國井香里(左陪席)
その他 書記官:畑田
弁護人:大熊裕起、他2名
日付 2007.12.27 内容 追起訴

 A7たちとすれ違い様に、A5たち3人が入廷してきた。
 弁護人は紳士3人で、1人はA3たちの弁護人、1人は法廷が代わった大熊弁護人、最後はA15の弁護人だった。裁判官と検察官は一緒。
 A5とA6は店長クラスで、聞く限り店長クラス以上とA21、A22、A23は全ての犯行に関与していた。ただこんな大掛かりな事件で、誰がどの犯行に関与したかをきちんと特定した(できた)のか、連続強姦事件の被告と同じで、立件されたら認めるといった具合で被告自身も覚えていないのではないかと思った。
 A5被告・・・丸刈りの眼鏡をかけた、色白で童顔の二重の優しそうな顔つきの男性。スーツ。
 A6被告・・・褐色の肌にグリーンの縁の眼鏡をかけた、垂れ目で田舎青年のような風貌の男性。スエット。
 A23被告・・・伸びた髪に、濃くて上向きの眉の眼鏡を掛けた男性。よれよれのベストを着用。
 A5は痩せ型、A6は中肉、A23はずんぐりむっくりしていて、A5とA6は170cm前半、A23は165cm程度でいずれも名門理系大学生のような風貌だった。途中から関係者と思しき若い私服の男性3人組が入ってきた。当然被害者は全国に散らばって、個々の被害金は少額なので、傍聴席に被害者らしき人は見当たらない。

 時間が押していて(次の事件が入っていた)、裁判長が「各被告の役割とかは何度もやっていますので、読み上げなくてもいいです」と言ったので、男性検察官が早口で起訴状を読み上げた。同じ内容の起訴状を読むのなら、最初から分離公判せずに時間を取って丁寧に読み上げればいいのにと思った。
裁判長「それでは被告人3名は前に立ってください」
 3被告は証言台の前に並んで立って、検察官が起訴状を読み上げる間、長い間立たされていた。

−起訴状朗読−
 被告人3名は都内で金融会社を装った店舗を設けて、融資に必要な融資保証金名下に保証金を詐取する、いわゆる振り込め詐欺集団に所属する店舗の構成員として、店長らの指示を受けながら、融資申込者に対し、融資に必要な費用等名下に振り込め詐欺を実行するなどしていた。
 同集団は融資申込者から融資に必要な費用等名下に、金員を詐取して利益を得ることを共同の目的とする、多数の構成員からなる継続的結合体であって、A1の指揮・命令に基づき、あらかじめ被告人らの間で定められた任務分担に従って振り込め詐欺を実行するなどしており、融資に必要な費用等名下に金員を詐取することを一体として反復して行っていた団体であるが、
(第1)被告人3名は融資申込者から融資に必要な費用等名下に金員を詐取しようと企て、A1、A2、A4、A3、A7、A21、A22、A13、A15、A14、A8、A9、A10、A11および氏名不詳者と共謀のうえ、同集団の意思決定に基づく行為であって、詐取した金員を同集団に付属させるものとして、A1の指揮・命令のもと、被告人らの間で定められた任務分担に従い、平成18年2月20日から5月12日までの間、電話で融資申し込みをしてきたc(当時60年)他3名に対し、東京都荒川区西日暮里5丁目の石川第1ビルから、同人らに対し、真実は融資を実行する意思がないのに、これがあるように装い、「手続き費用として1万5千円を振り込んでください」と嘘を言って、同人らをその旨誤信させ、平成18年2月20日から5月15日までの間、前後21回にわたり、同人らをして、和歌山県一条市所在の和歌山銀行紀ノ川支店などから、いずれも被告人らが管理するみずほ銀行に開設されたヨシノシンイチ名義の普通預金口座に合計54万5000円を振り込み入金させた。
(第2)被告人3名は融資申込者から融資に必要な費用等名下に金員を詐取しようと企て、A1、A2、A4、A3、A7、A21、A22、A13、A15、A14、A8、A9、A10、A11と共謀のうえ、同集団の意思決定に基づく行為であって、詐取した金員を同集団に付属させるものとして、A1の指揮・命令のもと、被告人らの間で定められた任務分担に従い、平成18年5月1日から5月8日までの間、電話で融資申し込みをしてきたd(当時26年)に対し(裁判長から審理のなかで被害者の名前が確認されていた)、東京都荒川区西日暮里5丁目の石川第1ビルから、同人に対し、真実は融資を実行する意思がないのに、これがあるように装い、その都度電話で「200万円をご融資するには、まず手数料として5万5000円をこれから言う口座に振り込んでください。きちんとお返ししますから」と嘘を言って、同人をその旨誤信させ、被告人らが管理する大阪市阿倍野区のみずほ銀行に開設されたタカダヤスヒロ名義の普通預金口座に合計5万5000円を振り込み入金させた。

 犯行現場(被告人らのアジト)が石川第1ビル→シルバーピア飛鳥になった。この2つの「事務所」で振り込め詐欺をしていた。また店長クラスはどの犯行も関与していたが、A21とA22とA23を除く末端の構成員は関与している犯行とそうでない犯行があり、起訴まで漕ぎ着けられた犯行は一部に過ぎないだろうが、その辺は曖昧であることを断っておく。なお被告たちは出し子から足がついて、芋蔓で逮捕されたとき、ほぼ全員否認していたという。

(第3)被告人3名は融資申込者から融資に必要な費用等名下に金員を詐取しようと企て、A1、A2、A4、A3、A21、A22、A7、A13、A8、A9と共謀のうえ、同集団の意思決定に基づく行為であって、詐取した金員を同集団に付属させるものとして、A1の指揮・命令のもと、被告人らの間で定められた任務分担に従い、平成18年9月8日から9月20日までの間、電話で融資申し込みをしてきたe(当時40年)らに対し、前記シルバーピア飛鳥から、同人らに対し、真実は融資を実行する意思がないのに、これがあるように装い、「返済できなくなったときの保証金が必要です。2万7400円を振り込んでください」と嘘を言って、同人らをその旨誤信させ、前後6回にわたり、栃木県の足利銀行他3ヶ所から、被告人らが管理する横浜のりそな銀行に開設されたクラサナエ名義の普通預金口座に合計14万2500円を振り込み入金させた。
(第4)被告人3名は融資申込者から融資に必要な費用等名下に金員を詐取しようと企て、A1、A2、A4、A3、A7、A13、A14、A21、A22、A8、A9、A10、A11と共謀のうえ、同集団の意思決定に基づく行為であって、詐取した金員を同集団に付属させるものとして、A1の指揮・命令のもと、被告人らの間で定められた任務分担に従い、電話で融資申し込みをしてきたf(当時31年)らに対し、シルバーピア飛鳥701号室から、同人らに対し、真実は融資を実行する意思がないのに、これがあるように装い、「50万円が最高の融資額なのに、プラス150万円を融資するのですから、その担保金として5万円を用意しください」と嘘を言って、同人らをその旨誤信させ、広島県尾道市のもみじ銀行他から、被告人らが管理する大阪市梅田の十三信用金庫に開設されたヒダカサトル名義の普通預金口座に合計33万3000円を振り込み入金させた。
(第5)被告人3名は、A1、A2、A4、A3、A21、A22、A8、A7らと共謀のうえ、同集団の意思決定に基づく行為であって、詐取した金員を同集団に付属させるものとして、A1の指揮・命令のもと、被告人らの間で定められた任務分担に従い、平成18年11月7日から11月28日までの間、電話で融資申し込みをしてきた名前的におそらく外国人(当時28年)他4名に対し、シルバーピア飛鳥から、同人らに対し、真実は融資を実行する意思がないのに、これがあるように装い、「公正証書が必要です。その費用として3万8000円を振り込んでください」と嘘を言って、同人らをその旨誤信させ、前後17回にわたり、7ヶ所の支店から、被告人らが管理するセブン銀行コスモス支店に開設された普通預金口座他5口座に合計49万2000円を振り込み入金させた。
(第6)被告人3名は、A1、A2、A4、A3、A21、A22、A8、A7らと共謀のうえ、同集団の意思決定に基づく行為であって、詐取した金員を同集団に付属させるものとして、A1の指揮・命令のもと、被告人らの間で定められた任務分担に従い、平成18年11月7日から12月7日までの間、電話で融資申し込みをしてきたg (当時36年)他数名に対し、シルバーピア飛鳥から、同人らに対し、真実は融資を実行する意思がないのに、これがあるように装い、「返済能力を確認するための資産テストを行いますので、5万円を振り込んでもらえますか」と嘘を言って、同人らをその旨誤信させ、平成18年11月11日から12月7日までの間、前後16回にわたり、静岡県富士宮市所在の静岡銀行他5ヶ所から、被告人らが管理する千葉信用金庫に開設されたマツモト名義の普通預金口座他4口座に合計119万5000円を振り込み入金させた。
(第7)被告人3名は、A1、A2、A4、A3、A21、A22、A8、A7らと共謀のうえ、同集団の意思決定に基づく行為であって、詐取した金員を同集団に付属させるものとして、A1の指揮・命令のもと、被告人らの間で定められた任務分担に従い、平成18年12月22日から12月28日までの間、電話で融資申し込みをしてきたh (当時34年)に対し、シルバーピア飛鳥から、同人に対し、真実は融資を実行する意思がないのに、これがあるように装い、「あなたの生活に返済できるかどうかの余裕があるかテストします」と嘘を言って、同人をその旨誤信させ、前後5回にわたり、みなと銀行魚住支店から、被告人らが管理するセブン銀行カトリア支店に開設されたサトウタケシ名義の普通預金口座に合計16万5000円を振り込み入金させた。
 もって団体の活動として、詐欺の罪に当たる行為を実行するための組織により人を欺き財物を交付させるなどしたものである。罪名および罰条:組織的な犯罪の処罰および犯罪収益の規制等に関する法律違反、刑法第246条第1項。

裁判長「それでは、被告人には黙秘権があることは前回言いました。そのうえで今検察官が読み上げた事実に間違いはありますか」
 順番に認否を尋ねられた被告人3名とその弁護人3名は起訴事実を「間違いないです」と全面的に認めた。検察官の立証に移ると、被告人3名は着席させられた。

−検察官の冒頭陳述−
 検察官が証拠により証明しようとする事実は以下の通りであります。犯行状況等ですが、被告人らは共犯者のA1を頂点とする振り込め詐欺集団で、組織的に同種犯行を繰り返しておりました。公訴事実記載の通りですので、証拠等関係各証拠の取調べを請求いたします。

 証拠等が記載された紙が検察官から裁判官や弁護側に渡される。
 弁護人は甲、乙号証ともに全て同意して、採用される。甲222〜259号証が各被害者の供述調書で、乙77〜84号証が各供述調書である。
 次回の1月29日で追起訴は終了、証人尋問と被告人質問で他に2期日が指定され閉廷した。

 閉廷したあと、被告3人はエレベーター待ちをして法廷から出て行った。
 来春には判決が下る見通し。

事件概要  被告らは共犯と架空の金融会社の社員を装い、融資の手続き費用などの名目で、愛知県知多市や千葉県船橋市等で銀行口座に振り込ませた金を騙し取ったとされる。
報告者 insectさん


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