裁判所・部 東京地方裁判所・刑事第五部(合議係)
事件番号 平成19年刑(わ)第1876号等
事件名 A7:詐欺(変更後の訴因:組織的な犯罪の処罰および犯罪収益の規制等に関する法律違反)、組織的な犯罪の処罰および犯罪収益の規制等に関する法律違反、大麻取締法違反
A13、岡本、A14:詐欺(変更後の訴因:組織的な犯罪の処罰および犯罪収益の規制等に関する法律違反)、組織的な犯罪の処罰および犯罪収益の規制等に関する法律違反
被告名 A7、A13、A15、A14
担当判事 山口雅高(裁判長)深野英一(右陪席)國井香里(左陪席)
その他 書記官:畑田
検察官:鯰越敦子
日付 2007.12.27 内容 追起訴

 午後13時10分から、東京地裁で融資保証金名目に保証金を騙し取る振り込め詐欺などで逮捕・起訴された詐欺グループのうちの4被告の第5回公判が531号法廷で開かれた。
 開廷前にA7の弁護人が書記官に尋ねた。
弁護人「A7に関しても、追起訴は終わりなんでしょうか?」
書記官「A7被告人に関しても追起訴は終わりと裁判所は聞いておりますが」
 定刻近くになると、被告人4名が刑務官とともに続々と入廷してくる。
 A7被告・・・丸刈りで角張った顔つきで、顔の輪郭がくっきりしている。眉が濃く、スーツを着用。
 A13被告・・・丸刈りで大人しそうな顔つきで、お坊さんみたいな風貌。白いスポーツウェアを着用。
 岡本被告・・・髪は短めで、天狗のような濃い風貌。黒いジャージを着用。
 A14被告・・・傍聴席から横顔が見える位置に座らされる(弁護人席の前・検事席と向き合う)。伸びた髪に乾燥した肌、眉と眉の間に黒子のある、鬼太郎のような風貌。上はスーツ、下はジーンズ。
 4被告とも痩せ型で、岡本は小柄だが、他の3被告は170cm代の前半ぐらい。
 4被告の弁護人は紳士風の30代から40代くらいのスーツ姿の男性4人で、眼鏡をかけた頬に黒子のあるA14の弁護人がこのなかでのリーダー格なのかなという印象を持った。
 検察官は疲れた営業マン風の男性検事と、清楚な感じの若い女性検事。女性検事が読み上げを担当したが、不慣れな様子でよく噛んでいた。
 裁判長のみA3やA1たちと別人(河本→山口)で、陪席裁判官は同一。右陪席の深野判事は整った顔つきの、前髪が白髪の優秀な人。単独体での事件の証人尋問で「こういう仕事やっているから分かるけど〜」「裏切られて悔しいでしょ」と的確で熱心な指摘をよくしていた。少年(逆送決定)とその母による同居男性刺殺事件を過去に担当(のちに高裁で減刑判決)した。
 左陪席の國井判事はマスクを着用して記録に目を通していた。
 傍聴席には被告の関係者と思しき茶髪がかった若い女性3人や中年女性、スーツの若い男性などが在廷していた。

 審理が始まると追起訴朗読の前に、この分の追起訴を今回の審理に併合するとか、みずほ銀行の支店の営業所の名前を変更する、という話が出た。
裁判長「それでは被告人4名は前に立ってください」
 4被告は証言台の前に並んで立って、検察官が起訴状を読み上げる間、長い間立たされていた。

−起訴状朗読−
 被告人4名は都内で金融会社を装った店舗を設けて、融資に必要な融資保証金名下に保証金を詐取する、いわゆる振り込め詐欺集団に所属する店舗の構成員として、店長らの指示を受けながら、融資申込者に対し、融資に必要な費用等名下に振り込め詐欺を実行するなどしていた。A1は同集団を統括処理するもの、A2はA1を補佐するもの、A5はA1を補佐し、同集団に所属する5つの店舗を統括処理するもの、A4、A3、A6、A7は同集団に所属する店舗の店長として店舗構成員を管理監督するなどするもの、A21、A22、A23、A14、A13、A15、A12、A8、A9、A10、A11および氏名不詳者は同集団に所属する店舗の構成員として、店舗で振り込め詐欺を実行するなどするものである。(※A21のみさいたま地裁第1刑事部で、その他の共犯者はいずれも東京地裁刑事第5部で一審公判中)
 同集団は融資申込者から融資に必要な費用等名下に、金員を詐取して利益を得ることを共同の目的とする、多数の構成員からなる継続的結合体であって、A1の指揮・命令に基づき、あらかじめ被告人らの間で定められた任務分担に従って振り込め詐欺を実行するなどしており、融資に必要な費用等名下に金員を詐取することを一体として反復して行っていた団体であるが、
(第1)被告人4名は融資申込者から融資に必要な費用等名下に金員を詐取しようと企て、A1、A2、A5、A4、A3、A6、A21、A22、A23、A8、A9、A10、A11および氏名不詳者と共謀のうえ、同集団の意思決定に基づく行為であって、詐取した金員を同集団に付属させるものとして、A1の指揮・命令のもと、被告人らの間で定められた任務分担に従い、平成18年2月20日から5月12日までの間、電話で融資申し込みをしてきたc(当時60年)他3名に対し、東京都荒川区西日暮里5丁目の石川第1ビルから、同人らに対し、真実は融資を実行する意思がないのに、これがあるように装い、「手続き費用として1万5千円を振り込んでください」と嘘を言って、同人らをその旨誤信させ、平成18年2月20日から5月15日までの間、前後21回にわたり、同人らをして、和歌山県一条市所在の和歌山銀行紀ノ川支店などから、いずれも被告人らが管理するみずほ銀行に開設されたヨシノシンイチ名義の普通預金口座に合計54万5000円を振り込み入金させた。
(第2)被告人4名は融資申込者から融資に必要な費用等名下に金員を詐取しようと企て、A1、A2、A5、A4、A3、A6、A21、A22、A23、A8、A9、A10、A11と共謀のうえ、同集団の意思決定に基づく行為であって、詐取した金員を同集団に付属させるものとして、A1の指揮・命令のもと、被告人らの間で定められた任務分担に従い、平成18年5月1日から5月8日までの間、電話で融資申し込みをしてきたd(当時26年)に対し(裁判長から審理のなかで被害者の名前が確認されていた)、東京都荒川区西日暮里5丁目の石川第1ビルから、同人に対し、真実は融資を実行する意思がないのに、これがあるように装い、その都度電話で「200万円をご融資するには、まず手数料として5万5000円をこれから言う口座に振り込んでください。きちんとお返ししますから」と嘘を言って、同人をその旨誤信させ、被告人らが管理する大阪市阿倍野区のみずほ銀行に開設されたタカダヤスヒロ名義の普通預金口座に合計5万5000円を振り込み入金させた。

 ここで違う日付の起訴状に移ったのか、検察官が前記の「被告人4名は〜反復して行っていた団体であるが」と復唱した。犯行現場(被告人らのアジト)が石川第1ビル→シルバーピア飛鳥になった。この2つの「事務所」で振り込め詐欺をしていた。また店長クラスはどの犯行も関与していたが、A21と関畑と舟谷を除く末端の構成員は関与している犯行とそうでない犯行があり、起訴まで漕ぎ着けられた犯行は一部に過ぎないだろうが、その辺は曖昧であることを断っておく。

(第3)被告人A7、A13らは融資申込者から融資に必要な費用等名下に金員を詐取しようと企て、A1、A2、A5、A4、A3、A6、A21、A22、A23、A8、A9と共謀のうえ、同集団の意思決定に基づく行為であって、詐取した金員を同集団に付属させるものとして、A1の指揮・命令のもと、被告人らの間で定められた任務分担に従い、平成18年9月8日から9月20日までの間、電話で融資申し込みをしてきたe(当時40年)らに対し、前記シルバーピア飛鳥から、同人らに対し、真実は融資を実行する意思がないのに、これがあるように装い、「返済できなくなったときの保証金が必要です。2万7400円を振り込んでください」と嘘を言って、同人らをその旨誤信させ、前後6回にわたり、栃木県の足利銀行他3ヶ所から、被告人らが管理する横浜のりそな銀行に開設されたクラサナエ名義の普通預金口座に合計14万2500円を振り込み入金させた。
(第4)被告人A7、A13、A14は融資申込者から融資に必要な費用等名下に金員を詐取しようと企て、A1、A2、A5、A4、A3、A6、A21、A22、A23、A8、A9、A10、A11と共謀のうえ、同集団の意思決定に基づく行為であって、詐取した金員を同集団に付属させるものとして、A1の指揮・命令のもと、被告人らの間で定められた任務分担に従い、電話で融資申し込みをしてきたf(当時31年)らに対し、シルバーピア飛鳥701号室から、同人らに対し、真実は融資を実行する意思がないのに、これがあるように装い、「50万円が最高の融資額なのに、プラス150万円を融資するのですから、その担保金として5万円を用意しください」と嘘を言って、同人らをその旨誤信させ、広島県尾道市のもみじ銀行他から、被告人らが管理する大阪市梅田の十三信用金庫に開設されたヒダカサトル名義の普通預金口座に合計33万3000円を振り込み入金させた。
(第5)被告人A7らは、A1、A2、A5、A4、A3、A6、A21、A22、A23、A8と共謀のうえ、同集団の意思決定に基づく行為であって、詐取した金員を同集団に付属させるものとして、A1の指揮・命令のもと、被告人らの間で定められた任務分担に従い、平成18年11月7日から11月28日までの間、電話で融資申し込みをしてきた名前的におそらく外国人(当時28年)他4名に対し、シルバーピア飛鳥から、同人らに対し、真実は融資を実行する意思がないのに、これがあるように装い、「公正証書が必要です。その費用として3万8000円を振り込んでください」と嘘を言って、同人らをその旨誤信させ、前後17回にわたり、7ヶ所の支店から、被告人らが管理するセブン銀行コスモス支店に開設された普通預金口座他5口座に合計49万2000円を振り込み入金させた。
(第6)被告人A7らは、A1、A2、A5、A4、A3、A6、A21、A22、A23、A8と共謀のうえ、同集団の意思決定に基づく行為であって、詐取した金員を同集団に付属させるものとして、A1の指揮・命令のもと、被告人らの間で定められた任務分担に従い、平成18年11月7日から12月7日までの間、電話で融資申し込みをしてきたg (当時36年)他数名に対し、シルバーピア飛鳥から、同人らに対し、真実は融資を実行する意思がないのに、これがあるように装い、「返済能力を確認するための資産テストを行いますので、5万円を振り込んでもらえますか」と嘘を言って、同人らをその旨誤信させ、平成18年11月11日から12月7日までの間、前後16回にわたり、静岡県富士宮市所在の静岡銀行他5ヶ所から、被告人らが管理する千葉信用金庫に開設されたマツモト名義の普通預金口座他4口座に合計119万5000円を振り込み入金させた。
(第7)被告人A7らは、A1、A2、A5、A4、A3、A6、A21、A22、A23、A8と共謀のうえ、同集団の意思決定に基づく行為であって、詐取した金員を同集団に付属させるものとして、A1の指揮・命令のもと、被告人らの間で定められた任務分担に従い、平成18年12月22日から12月28日までの間、電話で融資申し込みをしてきたh (当時34年)に対し、シルバーピア飛鳥から、同人に対し、真実は融資を実行する意思がないのに、これがあるように装い、「あなたの生活に返済できるかどうかの余裕があるかテストします」と嘘を言って、同人をその旨誤信させ、前後5回にわたり、みなと銀行魚住支店から、被告人らが管理するセブン銀行カトリア支店に開設されたサトウタケシ名義の普通預金口座に合計16万5000円を振り込み入金させた。
 もって団体の活動として、詐欺の罪に当たる行為を実行するための組織により人を欺き財物を交付させるなどしたものである。罪名および罰条:組織的な犯罪の処罰および犯罪収益の規制等に関する法律違反、刑法第246条第1項。

裁判長「それでは、被告人には黙秘権があることは前回言いました。そのうえで今検察官が読み上げた事実に間違いはありますか」
 順番に認否を尋ねられた被告人4名とその弁護人4名は起訴事実を「間違いないです」と全面的に認めた。検察官の立証に移ると、被告人4名は着席させられた。

−検察官の冒頭陳述−
 検察官が証拠により証明しようとする事実は以下の通りであります。
 犯行状況等ですが、被告人らは共犯者のA1を頂点とする振り込め詐欺集団で、組織的に同種犯行を繰り返しておりました。公訴事実記載の通りですので、証拠等関係各証拠の取調べを請求いたします。

 証拠等が記載された紙が検察官から裁判官や弁護側に渡される。
 いきなりアイウエオ順に裁判長から「岡本の関係では」と問われた弁護人は、「えっ岡本は・・」と戸惑ったが、「全て同意します」と答えた。ここでA14の弁護人が「乙号証がない」「誤植ですね」と言い出して、ベテラン風の検察官が「乙93〜94がA14にかかり、95〜96がA13にかかり、97が岡本にかかり、98、99、100がA7にかかります」とピンチヒッターで答えていた。4名の被告人は「甲、乙全て同意します」と答えた。検察官は「甲232〜262号証は各被害者の供述調書で、本件の各犯行状況等を明らかにしています」と言い、一昨日の起訴で4名の追起訴は完了したと述べた。
A14の弁護人「情状立証として、本件犯行グループ全員で被害弁償して示談交渉しようとする話が出ている。私のほうが取りまとめ役として共犯者と、示談に参加するかどうか、どれくらいの金額が用意できるか打診している」
裁判長「すごい人数ですよ」(おそらく共犯者の数のこと)
弁護人「だいたい2月の末までにはある程度示談交渉は進んでいる。それに合わせて期日を入れてもらえれば。情状証人の尋問と被告人質問を考えている。被告人質問は15〜20分程度で終わる」
 3者の打ち合わせで、次回を最後の追起訴の審理で1月29日の13時15分から、その次を被告人質問か情状証人の尋問で2月26日、その次も被告人質問か情状証人の尋問で3月11日と決めた。
 裁判長は「どの日に被告人質問を入れるか証人尋問を入れるかはお任せしますから。裁判所はそれに合わせますから」などと投げやりに話していた。
 たとえ示談交渉がうまく進展しても、5回も追起訴を掛けられ、そのうえ組織犯罪処罰法に訴因変更されて合議体で審理され、担当の深野判事も厳しい人なので、従属的立場を良性情状としても(店長のA7を除く)厳しい判決は不可避というのが率直な感想である。

 閉廷すると4被告は手錠を掛けられ、被告関係者と会釈を交わすなどして退廷、それぞれの弁護人は裁判が終わると、被告関係者と「今日はもう帰っていいです」「あとで」などと話していた。
 ちょうど4被告と入れ違いに、同じグループで詐欺活動に勤しんでいたA5たち3被告が入廷してきた。時間帯がほとんど変わらなかったので、同じ押送バスで来たのだろうか。

事件概要  被告らは共犯と架空の金融会社の社員を装い、融資の手続き費用などの名目で、愛知県知多市や千葉県船橋市等で銀行口座に振り込ませた金を騙し取ったとされる。
報告者 insectさん


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