裁判所・部 東京地方裁判所・刑事第十部
事件番号 平成19年刑(わ)第1547号等
事件名 詐欺未遂、詐欺、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反
被告名 A3、A4、A5
担当判事 鈴木秀行(裁判長)奥田洋平(右陪席)西岡慶記(左陪席)
その他 弁護人:大熊裕起、他2名
日付 2007.12.25 内容 追起訴

 A3は、髪が短く、鼻が高い若い男。眉はやや濃い。長身で痩せ気味。モスグリーンの長袖と、黒い長ズボンを着ている。
 A4は、丸坊主で色白、痩せ気味の男。黒い長袖の厚手の服を着ていた。
A5は、髪が短く無精ひげを生やした、痩せているが丸顔の色白の男。髪は短い。長袖の白い服とジーンズを着ている。
 検察官は、眼鏡の中年男性1人と、中年男性2人。
 弁護人は、眼鏡の初老の男性と、中年男性と、大熊弁護人の3人。
 私は、11時20数分に入廷した。

 罪名が組織的な犯罪の処罰および犯罪収益の規制等に関する法律違反にレベルアップされた12月5日付けの検察官が読み上げた起訴状を、被告人3名はいずれも「間違いありません」と答えて、弁護人も「同様です」と述べた。
 裁判官は「では、被告人戻ってください」と、被告人3名を着席させた。

−検察官の冒頭陳述−
 検察官が証拠により証明しようとする事実は以下の通りです。
 第一、犯行に至る経緯や犯行状況等は前回の冒頭陳述で述べましたとおりですが、被告人3名はA1を統括責任者、A2を振り込め詐欺実行行為担当グループの責任者とする、出会い系サイト利用料金等の名目で金員を詐取する、いわゆる振り込め詐欺集団に所属し、同集団の構成員として、電話で犯行を行う実行行為担当者として、同集団の構成員であるA1、A2、A6などと共謀し、A1の指揮・命令のもと役割を分担し、いわゆる振り込め詐欺を繰り返し行っておりました。
 犯行状況は別紙2記載の通りであります。本件被害者に対する電子メールの送信はA6が、電話による詐欺行為は被告人A5が行っていました。
 なお公訴事実の欺き行為が行われた日時でありますが、平成19年4月13日午後0時41分から平成19年4月18日の午後0時15分の間に被告人と被害者の間でなされたもののいずれか1回のものであります。
 被告人らは本件犯行後さらに被害者から金員を詐取しようと企て、被告人A5が被害者に、被害者の母親を介して、定刻どおり振り込み入金した金額が10円違ったので、もう一度正しい金額を入金してほしいなどと嘘を言って、さらに金員を騙し取ろうとしました。
 第二、情状等その他関連事項等、以上の事実を立証するために証拠等関係カード記載の各証拠の取調べを請求します。

 検察官証拠の採否について意見を求められた弁護人は、「甲、乙号証、全て同意」と応じたので、裁判官は「それでは全て採用しますので、要旨の告知を」と述べた。

−要旨の告知−
○甲号証
・被害者であるaの供述調書で、本件被害に至る経緯、被害状況、処罰感情について冒頭陳述の通りであることが述べられています。被害感情は朗読します。「私は飯島を名乗る男に、アダルトサイトの未納料金があると言って騙され合計135万9460円を騙し取られたことは間違いありません。もしはじめから相手の話が嘘だと分かっていれば、大切なお金を振り込むようなことは絶対しませんでした。今刑事さんから私を騙した犯人は、A3、A4、A5だと聞きましたが、私の全く知らない人です。私は現在女手一つで子どもを育て、祖母と母の4人で生活しています。今回私が騙し取られたお金は、母の大切なお金を借りて飯島から指定された口座に振り込んでいますので、大切なお金を貸してくれた母に大変申し訳なく思っています。私を騙した犯人は真面目に仕事をせず、被害者から騙し取ったお金で贅沢な生活を送っていたと聞きました。このような犯人には2度と今回のような犯罪を繰り返さないよう厳しい処分をしてもらいたいと思います。
・公訴事実記載の別表番号2の犯行は4月13日ではなく、4月16日の可能性が高いということ。
・被害者の母親であるbの供述調書で、お金を準備した状況や振込み金を娘に頼まれて89万7625円を銀行に振込み送金した状況を供述しています。「振り込め詐欺の犯人に騙し取られた合計135万9446円は私が全額準備しました。また2回目に娘が振り込んだ89万7625円は私が娘の名前で、犯人の口座に振り込みました。はじめから娘が犯人に騙されていることが分かっていれば、亡くなった夫の見舞金という大切なお金を娘に貸すこともしませんでしたし、私自身がお金を振り込むようなこともしませんでした。もちろんその前に絶対に振り込まないように、必死に娘を止めています。娘は子どもを育てるため、身を削って朝から晩まで働いています。そんな一生懸命頑張っている娘からお金を騙し取った犯人のことは絶対許すことができません。厳しい処分をしてもらいたいと思います」
・所在確認報告書で、静岡銀行の支店の名称および所在地を特定したもの
・89万円を振り込み送金した日時が公訴事実記載の通りと確認したもの
・現金振り込み先のツチウラヒロシ名義の口座がある横浜銀行の支店の名称および所在地を特定したもの
・捜査関係事項照会書およびその回答で、ツチウラヒロシ名義の口座には平成19年4月12日に合計46万円7625円が振り込み送金があったこと
・所在確認報告書で、ツチウラヒロシ名義の口座から現金が引き出されたりそな銀行の所在地等
・捜査関係事項照会書で、平成19年4月18日にツチウラヒロシの口座から2回に分けて89万円8000円が引き出されていたというものや引き出された状況が明らかにされている
・通話明細報告書(被告人らと被害者の間でなされたメール送信日時や電話通信日時を、資料に基づき分析したもの)
・捜索差押報告書(平成19年4月27日にマンションの一室で本件に関連する名簿や携帯電話機、メモ帳などを押収したことが記されている)
・証拠品複写報告書、押収物件写真撮影報告書および指紋確認結果報告書で、アジトの日神デュオステージ新宿外苑東通り201号室から押収された名簿のなかに本件被害者の携帯電話番号の記載などがなされているもので、その名簿からはA3、A4、A5の指紋と符号されたものが確認された)
・被害者にメールを送信した場所であるA1方を特定したもの
・捜査報告書で、被告人3名の、4月9日、4月12日〜18日にかけての日神デュオステージにおける出入りの状況を明らかにするもの
・被告人A4の住居地で本件に関連する携帯電話機やクリアファイルなどが押収されたことを明らかにするもの
・A4方で押収されたクリアファイルのなかに「18日水曜日K‐89.7」などの記載があったこと
・押収物件写真撮影報告書で、A4方で押収された物品の写真
・A1の検察官の面前における供述調書で、被告人らの所属する犯罪組織の構成員や本件被害者を含む金額がA1のメモに記載されたもの、犯罪組織の概要、共同犯行状況について供述がなされている
・A6の検察官の面前における供述調書(被告人らの所属する犯罪組織の構成員や犯罪組織の概要、組織内でのA6の役割、共同犯行状況など)

○乙号証
・被告人A3の捜査官の面前における供述調書
・被告人らが使用していた名簿やフリーダイヤルシステム、詐取金入金口座の説明などをしたもの
・本件犯行に至る経緯や振り込め詐欺での役割などが具体的に詳述したもの
・被告人A4の捜査官の面前における供述調書で、使用していた名簿や詐取金入金口座、犯罪組織の構成員や共同犯行状況について供述したもの
・被告人A5の捜査官の面前における供述調書で組織の概要や共同犯行状況について供述がなされたもの

裁判官「今の時点では追起訴はこれまでで、検察官の立証は以上ということで」
検察官「はい」

 弁護側の立証予定は、情状証人の尋問や被告人質問だけで、被害弁償もするといい、被害弁償にはある程度の時間を要するとしてやや先の期日が指定された。
 被告人質問は1人30分ぐらいを目安とした。
 情状証人は一人1名はいて、15分程度とされた。
 その後の論告・弁論はそれぞれ別々の期日にしたいと弁護人は言った。
 検察官も20分程度被告人質問をするので、次回は2月25日月曜日の1時45分から午後いっぱいという期日が取られた。その旨を裁判官が被告人に説明していた。

 12時まで予定されていたが、11時44分に閉廷した。
 A3は、大熊弁護人と会釈を交わしあい、退廷した。他の二人は、傍聴席の方を見る事無く、退廷した。
 閉廷後、弁護人たちは、被告人たちの関係者らしい派手な若い女性や、中年男性と、話をしていた。

 なお、複数の詐欺グループを統括し、総額20億円を詐取したとされ、仲間内から「キング」と呼ばれた首領格のA1はこの犯行グループの犯行から関与が発覚し、警視庁と埼玉県警の合同捜査本部に逮捕された。

事件概要  被告らは共犯と出会い系サイト利用料金等の名目で金員を詐取したとされる。
報告者 insectさん


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