裁判所・部 東京地方裁判所・刑事第十八部
事件番号 平成19年(わ)第50号(F)
平成19年(わ)第51号(E、D、C、B、A)
事件名 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反
被告名 F、E、D、C、B、A
担当判事 福崎伸一郎(裁判長)
その他 書記官:菊池
日付 2007.11.28 内容 弁論

 主犯のAはロシアの貴族のような黒い服を着た年寄りで、公判中は目を床に落としていたことが多かった。Bはきちんとした身なりの会社の重役のような年配の男性。

 最終弁論に移る前に、D、A、B、Fの弁護人が書証を請求して、証拠採用される運びになり、全員の関係で再開された。ところがDのみどうやら新しい弁護人を選任して弁償も行うらしく、福崎裁判長は
「かなりの弁償ということならば、他の方にも財産犯なので考える余地はある」
「あなたのほうで新たに弁護人を選任されて弁護活動を行うということなので分離します」
と述べた。
 被告人質問も再度行いたい旨を弁護人は伝えたが、一応1月25日の判決期日は変わらないとした。
 その後Dは一人だけ退廷していったが、選任された女性の弁護人は弁護人席→傍聴席に移った。
 Aの関係では会員や社員、仕入れ業者に未払い給料はいくら残っているか明確にしたものや、Bの関係ではAとBの派閥があり対立していたことを明らかにした証人尋問調書、Fの関係では、A会長に次いで報酬があったとされたが、特別ボーナス分が資金繰りの苦しいことから支払いが遅れていたためで、Fは会計帳簿については管理していないことが明らかにされた上申書等が証拠採用された。
 そのうえで裁判長は検察官に意見を問い、検察官は「従前通り」と求刑は変わらないことを示した。

 最終弁論でAたちの弁護人は主に検察官の論告に対する反論と一般情状に分けて、弁論を行った。

 Aの弁護人2名は「詐欺には確定的なものと未必的なものがある。未必的な要素を見逃しているのではないか。杜撰ではあるが現実的に投資をしており、返還の意思が確定ではなかったことでは、未必的な故意が認められるが、検察官の論告では故意の内容に差異がないことになり現実にそぐわない。返還の意思が全くないのが確定的なもの、不確実ながらもあるのが未必的なもの。この2つは犯罪類型が異なり、同列には論じられない。本件の公訴事実自体が未必的な詐欺として起訴されているのではないか。本件は組織的・計画的に敢行されたが、明確な犯意はなかった。Aは配当金を不確実ながらも支払えるとの認識は有していた。本件は身勝手・自己中心的なものというよりかは盲目的・惰性的なものだった。また先行き不透明だがさらに弁償する意思はある。会員との約束を守ろうとして結果が出ないまま終焉を迎えてしまったのであり、利益を持ち逃げしたりしていない。「看板社長」と言われるように実質的な権限はなく、わずかに人事権、仕入れ権があるだけで、本件で知ったのはマルチの旨みではなく、身柄拘禁の苦痛だけで再犯の余地はない。本件被害者に対して元本は還元しようとする気持ちは持っている。故意の犯情としては比較的軽い点は十分考慮してほしい」と弁論した。

 Bの弁護人は「公訴事実については争わないが、同グループは会長であるAのワンマン体制で、Bは同グループの海外投資の事業を知っていたわけではなかった。強い影響力を持っていたわけでなく共同して運営していたわけでもない。Fは事業についてCには報告していたが、Bには売り上げを話す必要がないと言った。AとEのみ預金額や配当額の実態を把握していた。経理部門はF、営業部門はD、海外投資部門はEが統括していたが、同人らはBに実態を報告していなかった。当時BとAは対立状態にあり、資産状態を知らせないままにしていた。資金繰りについて実態を把握していたのはAのみ」と弁論した。

 Eの弁護人は「Eの月収は手取り37万円で、理事会にも出席できず、新参者に過ぎなかった。取締役とは名目的なもので、役員の給料としては極端に少ない。ヨーロピアンプログラムについては抽象的な認識しかなかった。スペシャルゲストデーにはどんな配当があるのかも知らず、意思決定に関わる部分は限られている。投資ファンドの杜撰さには唖然とするほかないが、それはEが関与する前の段階だ。過去にグループが行っていたものとは異なる。Eは証券会社におり、不動産投資についてはある意味素人である。強制捜査のあとも1億円の投資が、Aの判断で進められた。検察官が言うように、海外投資の採算性のなさを最も認識していたとか、本件犯行に不可欠な役割を果たしたとか、湯水のごとく投資に回したというのは、事実に反する。関与の度合いは極端に小さい。一般情状を述べると、Eは勤勉な性格で、平成4年にベーストンの大学を出て、平成9年に山一證券に入った。だが山一證券が潰れて酒類卸売業をしたが、そこも倒産して就職活動をした。妻と2人の子どもがいる。勤勉な性格は特筆に値するものであり、部下の面倒見も良く、社会復帰したら受け入れてくれるところもある。前科・前歴もなく10ヶ月にわたる拘禁生活で、妻子の苦しい生活を知り、自らの不見識を恥じている。結果は重大で刑事責任は軽くないかもしれないが、関与は他の被告人に比べて極端に小さく、求刑の懲役5年は重すぎる」と弁論した。

 Fの弁護人は「検察官はグループの金庫番等と言うが、実際は会員への送金や経費の処理を任されていたに過ぎず、会計帳簿は管理していない」と弁論していた。

 このあと被告人の最終陳述が行われて結審した見通し。

 傍聴席には被告人の関係者が疎らに在廷していた。

事件概要  被告達は、2004年2月−05年6月、健康食品会社「リッチランド」を名乗り、配当金を支払う見込みがないのに「商品販売で得た利益を海外で運用し、多大な利益を上げている」とうその説明をして、29人から合計約2億700万円をだまし取ったとされる。
報告者 insectさん


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